無数に煌めく星が群れをなして流れる。
それが流星群だと教えてくれたのは翔雅で、いろいろと説明をしてくれたのがリュティカだ。
その後に珊瑚と天丸の補足説明がつき、一緒に今夜から3日間を船で過ごす事も教えられた。てっきり夜だけ船で星を見るものだと思っていた翔愛は驚いたが、驚かせたかったのだと翔雅に微笑まれれば頬を染めて。
「わあ、すごく大きな船です」
「国で一番多きな船だ。小さな街くらいの人数だったら余裕で収容できるし設備も整っているぞ」
ほんわりと幸せな気持のままで港に到着した。
大港は船で溢れていて、その中で一番大きな船に乗り込む。海に出て流星群を見物しようとする人は多いらしく、夕暮れになった今は普段であれば人が減るのだが今は増える一方で警備が忙しそうだ。
「今回の流星群見物は同行の人数も多いからこの船だ。まずは船内を見学して仮眠だな。流星群は深夜になる」
「人が沢山です。お城みたいです」
「メンバーは一緒だからな」
ざわつく船内を翔雅と翔愛が歩けば皆が礼をしながらとても嬉しそうに動き回っている。それだけ流星群が珍しくもあり、皆の楽しみでもあるのだろう。
船は全員が乗り込んだ事を確認して沖に出て、そう離れない距離で停泊する事になっている。
説明を受けながら船内をうろついて、部屋に通されたのは出港して間もなく。大きな船は出港しても揺れる事はなく、部屋にある窓でようやく海に出た事を知った翔愛は驚いたまま窓に張り付いた。
「動いています・・・すごいです」
「ああ、綺麗な海だ」
翔雅は羽胤国で生まれ育ったから海が好きだ。翔愛は好き嫌いで言えば翔雅の影響で好きに傾くが未だ海の事はよく分からない。
今分かるのは窓に張り付いてみる海が夕焼けの色を映して綺麗だと言う事と、背中から翔雅に抱きしめられて嬉しいと言う事だけだ。
「夕暮れになったな。どれ、風呂に入って宴だ」
「はい。楽しみです」
人数が多い事もあって、夕暮れから甲板で宴が催される事になっている。
そのまま深夜まで騒いでいても良いし、仮眠を取るのも自由だ。
人数は多くとも気心の知れた者の集まりだから、この船にいる間は元々ないに等しい身分の差はさらになくなり奥まったこの部屋にいても既にざわめいた空気が伝わってくる。
翔愛に手を差し出せば当然の様に小さな手が乗せられて2人一緒に浴室に向かう。
この部屋は王の部屋でもあり、船の中で一番大きな部屋だ。もちろん一番大きな浴室が設置されている。
城よりは狭いが立派なもので、海上であるのに真水をたっぷり張った浴槽は床を切り抜いてあるものではなく、バスタブだ。
「はじめてです。身体を洗うのも中なのですね」
「ああ。石の上でも良いが普通はバスタブの中だな。しかしいつも思うんだがこの飾りはすごいな。ほら、動かない」
「あわが沢山で滑ります。翔雅さまの飾りも取りたいです」
「翔愛が終わってからな。あまり動くと、ほら、滑った」
2人で入ってもまだ余裕のあるバスタブは翔雅であれば何なく座っていられるが翔愛には大きい。
入浴する前にバスタブの半分に湯が張られ、その中に入浴剤として泡の出るものが混ぜられているから余計に翔愛は動いてしまう。
長い髪に編み込んだ飾りを翔雅が器用に外していく間にも翔愛の身体は落ち着きがなく、一度滑って沈んでしまって頭から泡だらけだ。
「俺に掴まれ。いや、上に乗った方が早いな」
「・・・ぬるぬるです」
「泡はそう言うものだ。髪と身体を洗ったら湯に切り替えるから少し待て」
翔愛にしては珍しく不快な表情で眉間に皺を寄せている。その表情が可愛らしくもおかしくて翔雅が笑う。
長い髪に編み込まれた飾りは取るのに時間がかかるが、この手間を含んで翔雅は楽しんでいる。
あらかた取り終えれば翔愛の手が伸びて翔雅の髪飾りを外そうとするが、こちらはなかなか上手くいかない。
結局、翔雅自ら外した方が早くて、引き続き翔愛の眉間には皺が寄ったままで髪と身体をバスタブの中で洗う。
翔愛の身体を洗うのも翔雅の手で、自分の身体は泡で流すだけで終わらせて細い身体に手を滑らせる。
あちこち触れば当然の様に白い身体が染まって、なのに泡の感覚が不快で翔愛が焦れた様に翔雅を見上げて唇をとがらせる。
不快を素直に表せる様になった翔愛にやはり翔雅は微笑んで、けれど早めに終わらせてやろうと泡を流して湯を切り替えた。