大きな窓のある謁見の間は城の中でも特に景色の良い部屋だ。
到着は客人が先で花の浮かぶ茶と景色で一段落した後に翔雅達が入る。
先に入っていた客人は窓のそばに椅子を置いてくつろいでいた様で、翔雅達が内に入ると立ち上がって軽い礼をする。
世界で最も『魔法』の発達した『カレオン・汰夢(たむ)』の客人であり世界最高の大魔導師である人。
癖のある明るい茶色の髪を瞳の色と同じ紫の宝石で飾り、衣装は羽胤国の気候に合わせてある軽装だ。白の裾が長い下位に虹色に染められた美しい薄布を軽く羽織っている。
柔らかい印象を与える笑みに翔愛より少し高い身長で男性であるのに華奢な、いや、子供の様に見えるが手に持つ杖は大魔導師の証であるものだ。
「久しぶり〜。いやあ、相変わらず綺麗だしお茶も美味しいし、良い国だけどこのサンダルと言うものは慣れないね。あ、綺麗な人がいる!可愛いな〜。綺麗だな〜。翔雅のお嫁さん?」
礼を終えたと同時にすたすたと翔愛の側に来ると遠慮なく翔愛を観察して、随分と軽い挨拶をしている間は翔雅の方は全く見ていなかった。
突然の事に戸惑う翔愛を翔雅が背中に隠して大きく溜め息を落とす。
「久々だな、リュティカ。紹介するからまずは座ってくれ。翔愛、驚かせてしまったがこう言うヤツで悪気はないはずだ。たぶん」
「酷いよ翔雅。だって気になるじゃない」
「まずは座ってからだ。何もはじまらん」
翔愛にとってはまたはじめて出会うタイプの人だ。驚いたものの嫌な感じはなく、図書館から借りた辞書にこの人、リュティカをあらわす言葉があったと思い出す。
「天真爛漫・・・?」
翔雅の背中に隠れる様にしながら移動して言葉が漏れた。小さな呟きは翔雅だけに聞こえて頭上で吹き出す声がした。
「良く言い当てたな。翔愛の言う通りだ」
楽しそうに笑う翔雅を見上げて首を傾げるのは言葉の意味は分かっていても、経験がないからだ。言葉は出ても不思議そうにしている翔愛に翔雅が時期に分かると呟いて席についた。
足の低いソファに同じ高さのテーブル。ゆったりとくつろげる席は窓辺で景色が一望できる場所だ。テーブルを挟んで3人掛けのソファが対面で並び、リュティカは一人で座る。その後ろには羽胤国の軽装になった護衛の騎士らしき者達が並び、翔雅と翔愛が並んで座るソファには誰もつかず部屋の入り口付近に天丸と親衛隊が並ぶ。
「では改めて。わたしは南の大陸カレオン・汰夢の大魔導師、リュティカ。世界に散る魔導師を束ねる者としてこの杖を所持している。この度は我が国の品、『星の石』の搬入を快く受けていただいて助かった」
席について茶を入れ直した後、正式にリュティカが挨拶をはじめて、その仕草の美しさに翔愛が見惚れていれば最後にパチン、とウインクをされて頬を染めた。表情の一つ一つが柔らかくて惹かれる人だ。
正式な挨拶でも決まり事は特にないがそれなりに重要で、儀式でもある。
リュティカの挨拶が終われば翔雅の番で、受け入れる国王としての挨拶を終えれば堅苦しい儀式も終了となり整列していたそれぞれの護衛が部屋から出た。