ふわりと銀の鈴をつけた薄衣を舞わせて、早足に控え室に入る翔愛を笑顔の翔雅が迎えて、隣に座る。
謁見にもいろいろなランクがあって、今回の客人は大きな客室で軽食を取りながらの会談になる。そんな時は翔雅と2人で部屋に向かい、後ろに親衛隊を連れて行く事になっている。
「茶を一杯頼む。少し休んでから行こう。客人もまだ到着していないからな」
控え室であっても書類を広げる翔雅は相変わらずの忙しさだが翔愛の到着で一度手を止める。それに合わせて周りで待機していた文官が書類を引き上げ、入れ替えに天丸自ら茶を入れて、自分も一緒に席に着く。
羽胤国は王であっても同伴に許可や位は必要ではない。誰もが王に意見を述べる事ができ、同じ位置に存在ができる。これは建国当初からの事で羽胤国では常識だ。他国と比べれば有り得ない事でもあるが、王であろうとも一人の人間であり誰の意見であろうと聞くべきであり学ぶべきだとする姿勢は元が商人である事からかもしれない。
三人でテーブルを囲み、柔らかいソファは重さの関係で自然と翔愛が翔雅の方に傾く。片手を翔愛の腰に当てた翔雅がじっと見上げてくる小さな額に軽く唇を落とすと嬉しそうに微笑まれて、天丸からは呆れた溜め息が落ちる。
「やれやれ、慌ただしい事ですね。今夜から少しのんびりできれば良いのですが」
「お前に言われても嘘臭いだけだ。翔愛、その花は食用ではあるが苦いぞ」
「はい、苦いです。舌がぴりぴりします」
冷たい茶には小さな花がいくつか浮かんでいてどれもが食用だ。
一年を通して花が咲き続ける国だから飾り用の花も多いが食用も多い。但し、元々食材ではないものを改良しているからどうしても味は良くないものが多い。
見た目で涼しさと華やかさを演出するのだが大抵は砂糖の味しかしなく、翔愛が口に含んだ花は砂糖漬けであっても苦みが多いものだ。
少し舌を出して困惑の顔になる翔愛に翔雅が笑って自分の茶を一口で飲み干す。
天丸が新しい茶と、舌が苦くなっている翔愛の飲みかけの茶に砂糖を大さじ一杯入れた。
「これで甘くなりますよ。溶けにくいのでそのまま食べても良しです」
「ありがとうございます。お砂糖がお茶の味です」
「・・・まあ良いんだが。それ、飲み終えたら行くとするか」
どう見ても小さな器に大さじ一杯の砂糖は入れすぎで、それをかき混ぜて茶の味がついた砂糖を嬉しそうに食べる翔愛はかなりの甘党だ。量は多く食べられないものの、甘い物はかなり好き。反対に翔雅は苦手で見ているだけでうんざりする。
嬉しそうだから良しとして眉間に寄りそうな皺を我慢するのだが微妙に嫌そうな表情なのは仕方がない。