花咲く海で...26





翔雅に借りた本は冒険小説だった。
一人の旅人が世界を旅して、いろいろな不思議を発見する、そんな話だと言う。
翔雅の読む本だから難しい物だと思っていたけれど、冒険小説も中々面白そうだ。
翔雅も何処から取り出したのか違う本を読み始めて、翔愛も冒険小説を読み始める。政治の本が面白いと子由に言ったら子由も変な顔をしていたけれど、面白いのであればまた後でお返ししますと言ってくれた。



結局本を読むだけで一日が終わってしまった。
思いの外翔雅に借りた冒険小説は面白くて、すぐ本の中に引き寄せられてしまった。昼食もお座なりにするくらい面白くて、夕暮れ前には読み終えてしまった。ずっと集中していたから目が痛い。

「そんなに急がなくても良かったのに」

翔雅はそう言って笑うけれど、止められなかっただけだ。
目を擦りながら夕食を終えて、部屋に戻ったら何だかとても疲れてしまった。身体は動かしていないのに頭がぼうっとする。

「風呂に入ればすっきりするだろう。ほら、行くぞ」

翔雅に背を押されながら脱衣所に入って、のろのろと服を脱ぐ。
どうにもぼうっとしてしまって動きが遅い。そんな翔愛に翔雅は笑いながら脱ぎかけの翔愛の服を剥がして浴室へ持って行く。そう、文字通り持って行く、だ。
まだまだ翔愛は軽いらしく片腕でひょいと運ばれて洗い場に下ろされる。ぺたりと座ればタイルの冷たさに少し靄のかかった頭がすっきりした。
そうして、ぼんやりと思い出した。今夜は何かあった様な気がする。でも、何だかハッキリしない。
ぼうっとしたまま思い出そうとしていたら翔雅に頭からお湯を流されて驚いた。

驚いて、ちゃんと思い出した。そうだ、昨日の夜に約束したのだ。

「今夜は・・・」

頭からびしょ濡れになって呟けば背中から優しい声が落ちてきた。

「思い出したみたいだな」

笑いながら翔雅の手が泡を作って翔愛の頭に乗せた。そのままわしゃわしゃと洗われる。いつもは翔愛も背中に垂らす髪を自分で洗うけれど、手が止まる。約束の内容を思い出して、何をするのかも思い出してしまったからだ。
そうだ、今夜翔愛は翔雅に抱かれるのだ。

「どうした?」

翔愛の頭を泡だらけにした翔雅の声が浴室に響く。

「思い出して、いました」
「ん?何をだ?」
「昨日の、夜のことを・・・」

真剣に話し合って、泣いて笑った夜の事を。昨日の事なのに、何故か遠い。
けれど、思い出せば翔雅の温もりがじわりと翔愛の心に浮かぶ。少し俯きながら頬を染める翔愛に翔雅は苦笑して、泡だらけの手を翔愛の肩に滑らせた。

「あまり思い出すな。少し照れる」

翔雅の声が照れている。昨日も同じ事を言われたけれど、翔愛には良く分からない気持ちだ。照れると言うよりも、胸が温かい。じんわりとして、何かが身体の奧から沸いてくる様な感じ。翔雅の手は優しく翔愛の肩をさすってくれていて、その動きの所為かもしれない。上を向けば微笑んだ翔雅に口付けされた。
でも、泡も一緒になってしまって、

「にがいです」
「俺も苦い。ちゃんと流してからだな」
「翔雅さまも洗ってから、です」
「そうか。じゃ、背中を洗ってくれ」
「はい」

そうして、身体を洗い終わって風呂を出たら優しい夜の時間になっていた。
寝間着に着替えて庭で涼みながら自然と2人の距離が近づく。ぴたりと貼り付いて、翔愛が翔雅にもたれ掛かれば大きな手が翔愛を抱き寄せてくれる。
会話は無くても、くっついているだけで安心できる。
風呂で暖まった身体のまま果実水を舐めて、身体が冷えた頃に翔雅が翔愛を抱き上げた。翔雅の膝の上に乗る形で向かい合っているからとても距離が近い。

「翔愛、抱いても良いか?」

低い声で囁かれる。真剣な表情の翔雅に、けれど翔愛はふわりと微笑んで、こっくりと首を縦に振る。それから、翔愛からそっと口付けした。触れるだけの口付けだけれども、触れた先からじわりと熱くなって、翔雅に抱き付いたら今度は抱き上げられた。
そのまま寝室に運ばれて、そっと寝台に下ろされる。仰向けて寝台に転がった翔愛に翔雅が覆い被さる。灯りを灯していないから寝室は月の光だけだ。
暗くて翔雅の表情が良く分からないけれど、どうしてだか微笑んでいるのが分かる。

「翔愛・・・」

掠れた翔雅の声。低くて、甘くて、何だか熱を感じる声だ。
囁かれて、口付けられた。唇を啄む様に、そのまま舐められて、舌を入れられる。口を開いて翔雅の舌を迎え入れればくちゅ、と舌を絡められた。そのまま口内を翔雅に探られて、だんだんぼうっとしてくる。
息は苦しくない。身体の底に翔愛をぼうっとさせる熱が沸いてくる。何度も何度も口付けを交わしている間に、翔愛の知らない間に寝間着がはだけられていた。
でも、寒くない。むしろ暑い程で汗をかきそうだ。

「しゅうが、さま・・・ぁ」

少し苦しくなった頃に唇が離れた。はぁ、と息を吐けば翔雅が笑って、鼻先に口付けを落とされた。そのまま、大きな手が翔愛の肌を触っていく。
しっとりと汗が浮かびそうな肌は翔雅の手をとても良く感じてしまう。胸元を弄られれば身体が勝手に跳ねてしまうし、足を触られてるとむず痒い。いつの間にか翔愛に覆い被さった翔雅が移動していて、あちこちに口付けられている。首の辺りに、胸元に、一緒に唇で胸の飾りを挟まれてまた身体が跳ねる。そのまま翔雅の唇はどんどん下に進んで、とうとう翔愛の性器に口づけられてしまった。

「は、ん・・・ぁ、あぅ・・・んっ」

熱くて、苦しくなる。なのに身体の奧がじわじわと不思議な感じになって、翔愛の身体はじっとしていられなくなる。翔雅に何をされているのかは分かっている。でも、分からない。熱くて、苦しくて、でも、それだけじゃなくて。不思議な感覚が翔愛を襲って、どんどん身体がおかしくなる。







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