星降る庭で...24



天丸の言葉通り、テーブルに並べられているのは翔雅の好物が主なメニューになっている様だ。
しかし豪勢な食事の隅には明らかに翔雅の好まない甘い物々も添えられている所を見るとそれらはどうやら翔愛の好物なのだろう。何となくそう思いながらちまちまと小さなスプーンを小さな口に運ぶ翔愛を横目で見てから腰を下ろそうとすれば天丸の無言の言葉により翔愛の横に腰を下ろす事になった。
テーブルの足も低いがソファの足も低い。今は翔愛の寝床になっているソファは王の使う物らしく酷く柔らかく立派な物だ。身体の半分を沈めながら料理を手に取れば正面に居る天丸が維持の悪そうな笑みを見せる。

「ちなみに翔愛様はもうデザートまで進んでますからね」

言外にいつまでも大人気無い態度を止めたらどうだと言っているのだろう。翔愛を見る視線は柔らかいくせに翔雅には睨みを付けてくる。良い度胸だとばかりに翔雅がにらみ返せばそのまま返されて面白くない。

「別に構わんだろうが。お前ももう食ったのか?」
「私が陛下より先に食事を取る訳が無いでしょう?」

とことん嫌みだ。しかも半分以上は面白がっているのだろう、明らかに目が笑っている。普段から柔和な表情を見せる天丸だが案外目の奥は笑っていない事が多い。しかし今はその反対だ。むかつくったらありゃしない。翔雅はむすっとしたまま眉間皺を寄せたのだが、以外にも天丸の言葉に反応したのは隣に座る小さな子供だった。

「翔雅さまより・・・早く、食べてはいけなかったのですか?」

小さく、たどたどしい声。天丸の嫌みをそのまま受け取ったのだろう、持っていたスプーンを慌ててテーブルに置いて翔雅を見上げてくる。おどおどとしているくせに大きな瞳は真っ直ぐに翔雅を見つめてくる。吸い込まれそうな森の色にしかめっ面の翔雅が映る。今にも泣き出しそうな表情は先に食べてしまった事を悔やんでいるからなのだろう。何も知らない子供の様な澄み切った光に何故か苛つく事は無く、心の何処かが小さく疼いた。

「ンな訳あるか。俺より早く食うわけ無いって言うのはコイツの嫌みだ。気にせず食え」

無意識に翔雅の大きな手が翔愛の小さな頭に置かれる。子供にする様にぽんぽんと撫でる仕草に一番驚いたのは天丸よりも翔愛だった。びくりと肩を震わせて大きな瞳をさらに大きく見開く翔愛に翔雅は苦笑する。

「さっさと食っちまえ」

何だか人見知りの子供を相手にしている様だ。一応報告で成人は過ぎているとは聞いているが目の前にするとどう見ても子供にしか思えない。そんな子供に何を苛ついていたのか。何かだ急に何もかも馬鹿らしくなってしまった。





back...next