next will smile...君の小さな頃には02
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澤里さん宅は5人兄弟だ。 見事に最初から最後まで男の子で末っ子が生まれた時にはちょっとばかしがっくりきてしまったと言う話は子供達が大きくなるまで秘密だ。 で、そんな兄弟はとても仲良しさんだったりするけれど、さすがにいつも5人一緒では無くて、大抵ペアになって行動していたりする。 長男、和久(かずひさ)、次男、駿(しゅん)。 三男と四男の海と青。 そして末っ子の颯也。 末っ子だけが人数があまってオミソなのだけれども、末っ子にはお隣さんのお友達がいつでもどこでも一緒に居るからこれもペアで考えられる。 だから、いつも一緒の2人が一緒に居ないのはとても珍しい事で、とても不安になる事なのだ。 「かずにいちゃ、どこ?」 「しゅんにいちゃ、どこ?」 ぐずる弟の小さな手を引きながら海と青は大きなお庭を突っ切って母屋に辿り着く。 古めかしい母屋にはちびっ子達が昇るには少々大きな縁側がある。 けれど、踏み台が置かれているから、最初に海が昇って青の手を引いて、それから2人で手を出して半泣きの颯也を引き上げてあげる。 この時間だったらお兄ちゃんズは家の中に居るはず。 小さな脳味噌で一生懸命考えた海と青はとたとたと小走りに母屋の中でも、一番居る確率が高いであろう居間に飛び込んだ。 母屋の居間は畳の匂いも古いと感じさせる年代物の造りで、畳の上にふかふかの絨毯、その上に皮張りの大きなソファと重いテーブル、それに銜えて各種調度品が置かれている。 そして、そんな大きなソファに埋もれながら探していたお兄ちゃんズ、和久と駿がのんびりと本を読んでいた。 「かずにーちゃっ」 「しゅんにいー」 それぞれお兄ちゃんを呼びながら海と青は颯也の手を引っ張って、小さな身体を一番上のおにいちゃん、和久に差し出した。 途端にくにゃりと崩れた颯也はまたしてもめそめそと泣きながら和久に抱えられる。 一番上のお兄ちゃんはすでに小学校の高学年。颯也を抱える力もしっかりとしていて強い。 その次のお兄ちゃんも同じく小学生だから海と青より思考はしっかりしている。 そして、2人とも既に神童との噂も出ている程のしっかりさんだ。 「颯也?どうしたの?」 和久の首っぷちにしっかりとしがみついている颯也は言葉も無くえぐえぐとしている。 それに困った表情を浮かべると海と青が駿の膝に乗りながら顔を出してきた。 「あのね、あーちゃん居ないんだって」 「ずっとさがしてるけどいないんだって」 同じ口調で話し出しながら身を乗り出す双子に駿が両手で海と青を支えてあげる。 いつも2人で行動しているけど、可愛い弟が膝に乗っているのだから可愛くない訳が無い。 ばたばたと暴れる双子を抱えながら駿も心配そうに和久に抱きついて泣いている颯也を見遣っている。 「綾宏、どうしたの?何処にいるか分からないの?」 手際よく駿に手渡されたティッシュでもって濡れている上に汚れている颯也の顔を拭いてあげながら和久が首を傾げれば余計に颯也がしゃくり上げてしまう。 「わか、な…っうぇ…あーちゃ…いな……の…」 両手でごしごしと目元を覆いながら泣きじゃくる末っ子に和久も駿も困った顔をお互いに見合わせてしまった。 可愛い弟に泣かれてしまうのはとても困ってしまう事。 けれどいつも一緒の小さな綾宏が居ないのはどうしてだろうとしゃくりあげる颯也をあやしながら考えた和久と、2人一度に抱えるには少々大きな弟2人を抱えつつ、やっぱりいつも一緒に居るハズの綾宏の可愛い笑顔を思い出して和久と同じ様に考えはじめた駿と、その駿のあまり大きくは無い膝の上でお兄ちゃんにしがみつきながら困った顔を突き合わせていた海と青の元に小さな小さな足音が聞こえたのは丁度その時だった。 |
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