next will smile...君の小さな頃には01
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颯也と綾宏の実家は都内某所のお隣様だ。 そして、彼等2人の出会いは生まれたその日からになる。 颯也の家である澤里家と綾宏の家である鈴野原家。 お隣様だと言うのに、実は颯也と綾宏が生まれるまで何のお付き合いも無かった。 じゃぁ何処でお付き合いが始まったのかと言えば、産婦人科のロビーだったりする。 澤里さん家のまママさんは颯也を生む前にすでに4人も出産している大ベテランさんだった。 鈴野原さん家のママさんは綾宏が初めてで、何もかも分からない新米さんだった。 そんな2人はロビーでぺこりと頭を下げるだけでしばらく何の会話もなかったのだけれども、何の拍子か、家が隣同士だと言う事になって会話がはずみ仲良くなって、そのうち旦那様も巻き込んで子育て云々の話で盛り上がり、仲の良さが増して増して家族ぐるみの付き合いになり、気の会う所為か、大きなお腹の赤ん坊は一ヶ月程予定日が違かったのに生まれてみればほんの数日の差になり、そのままお付き合いが続行して。 「あーちゃん、あーちゃん、どこいったの?あーちゃん?」 とてとてと小さな身体で一生懸命広いお庭を心細そうに走っているのは白い肌に小さな身体、ふわふわの髪の毛も初々しく、不安そうな表情のお顔も小さく今にも泣き出してしまいそうな瞳がきらきらと光っていて、そんじょそこらのお子様では太刀打ち出来ない程の、とてもとても可愛らしいと評判の末っ子、颯也だ。 ひょこひょこと大きな自宅のお庭を駆けながらひっきりなしに呼んでいるのは上に4人もいる兄では無く、数日違いで生まれた大切な大切なお友達。 いつも一緒なのに今日に限って朝起きても見つからなくて、お友達の代用品のお兄ちゃんじゃ安心出来なくてずっとずっと半べそのまま呼びながらあちこちを探しているのだ。 「あーちゃん、あーちゃ・・・」 ぐす。 すでに時間はお昼。 ずっとずっと探しているのに見つからないお友達に颯也は大きなお庭の真ん中で立ち止まってしまう。 「そーや、何してるの?」 「何で泣いてるの?」 そんな颯也の所に心配そうに駆け寄るのは、すぐ上のお兄ちゃんズ。 海(うみ)と青(あお)。颯也よりも2つ上の双子ちゃん。 仲良く手を繋ぎながらお庭で遊んでいたらしく、顔や身体のあちこちに泥をつけているその姿は大変元気そうだ。 けれど、一番下の大切な大切な可愛い弟の泣きべそを聞き付けて心配しているのだろう、泥にまみれた手で真っ白な颯也の顔にぺたりと触って来る。 「あーちゃんがいないの」 ぐすぐす。 半べそのままでお兄ちゃんの服にぎゅっと捕まればお兄ちゃんは可愛い弟の髪の毛をくしゃりと撫でて、もう片方のお兄ちゃんは小さな肩をぎゅっと抱き寄せてあげる。 「あーちゃん、いないの?」 「どこにいったの?」 「わかんない」 小さな身体を擦り寄せてお庭の真ん中に固まっている姿は大変可愛らしい。 けれど、本人達はとても真剣でお兄ちゃんである海と青は弟と良く似た可愛らしい顔でお互いの顔を見合わせて首を傾げた。 「あお、しってる?」 「ううん、しらないよ。うみは?」 「しらないよ」 ぐすぐすとお兄ちゃんにひっつきながらベソをかいている弟を宥めながら2人はさらに首を傾げてしまう。 何でいつも一緒なのに居ないんだろうと頑張って考えるけれど、小さな脳味噌でちゃんとした答えなんて出て来るハズもなく。 「おにーちゃんなら知ってるかな」 「そうだよ、おにーちゃんなら知ってるよ」 「そーや、にいちゃに聞きにいこう?」 「にいちゃなら分かるよ」 出てきた答えはもっと上のお兄ちゃんなら分かるハズ、と言う、何とも明確な答えで。 ぐすぐすと小さく震える可愛い弟を元気付けながら海と青、そして颯也は3人になって大きなお庭を走り出した。 |
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