feeling heart to you |
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「・・・錬を俺のモノにする。俺の印を付けて俺を刻み込む」 優しい微笑みで、優しい声を落とした一留は表情はそのままなのに、豹変した。 笑みを浮かべていたのに、あっという間に僕をお布団の上に押し倒して一留は僕の上着を剥ぐ。 荒々しいと言っても良い程に僕の上着は脱がされて、その上に一留が覆い被さってくる。 「い・・ち、る?・・・ぁっ、や、な・・・なにっ」 次々に僕の身体に触れてくる一留の指先と唇。 何が何だか分からない僕に一留は荒い息で僕の動きを封じて、僕の服を脱がせてく。 久しぶりに来た洋服。 浴衣に比べれば沢山着てるのに、一留の手は素早くて、あっという間に全ての服を剥ぎ取られて僕は何もかも分からずにただただ震える事しか出来ない。 どうして? そんな言葉だけが思い浮かぶ中で、けれどあまりにも一留が荒々しくて・・・怖い。 震えてるのに、それなのに一留は無言で僕に覆い被さったままで。 あちこちに触れる一留の手。一留の唇。何が何だか分からなくて混乱する僕に、一留は全く容赦無くて。 「うっ・・・ぇっ・・」 何で?どうして? 何も言ってくれない一留。 いつだって優しくて、暖かくて、どんくさい僕の遅すぎる行動につきあってくれてた一留。 なのに・・・。 「・・・ひっく・・・ぅ・・」 素肌に触れる一留がとても怖くて。 泣きっぱなしの僕の涙腺は完全に壊れて後から後から溢れてくる涙に声も抑えられなくて。 「・・・錬、錬?」 ぺちぺちと一留が僕の頬を優しく叩く。 その感触にぎゅっと目を閉じていた僕は恐る恐る目を開けて、暗い一留の瞳を見つけてしまう。 でも、瞳の色は同じでも、一留はもう怖くは無かった。 困った表情で、僕を至近距離から見下ろして、震える僕に一留は優しいキスをしてくれた。 「ごめん。怖かったな」 ゆっくりと僕の頬を撫でてくれる。 震えていた僕は少しずつ震えが収まって、じっと一留を見てたんだけど、どうして一留がこんな事をするのか全然分からなくて何も言えない。 そんな僕に一留は苦笑して僕の髪の毛を梳いてくれる。 「抱いても、いいか?」 そうして、震える声が落とされた。 「いち・・・る?」 僕を抱く? 意味が分からなくて首を傾げる僕は、それでも一留の熱の籠もった視線と、何よりもさっきまでの行動を思い出して、顔を、ううん、顔だけじゃなく、きっと全身を真っ赤に染めた。 「錬に俺の印を付けたい。錬と一緒になりたい。熱を分けて、一つになりたい」 真剣な、一留の熱くて、低い声が僕の耳元に落とされて、僕は訳もなく熱くなってしまう。 一留の言っている意味が良く分かっていないのに、それでも一留が僕に何を求めているのかは分かっているから、余計に恥ずかしくて・・・熱い。 「一留が・・・ぼく、を?」 どうして僕なんだろう。 だって一留も僕も、僕はそうは見えないかもしれないけれども一応ちゃんとした男で、しかも僕はこんなに小さくて細そっこくて。 きっと、そういう意味での相手にはあまりふさわしくないんじゃないかって、こんな時なのに僕は冷静に考えてしまう。 何回もキスはしてるけど、けれど。 「錬がいいんだよ。俺は。錬と一緒になりたいんだ。もう、この手の中に錬が居ないのは嫌なんだ」 だんだんせっぱ詰まってくる様な感じで一留は僕に何度もキスをしてくる。 僕はまだ返事をしていないけれど、でも、本当に僕なんかで良いのならば、僕には断る理由が一つもない。 だって、一留は何時だって優しくて、暖かくて。 僕に沢山、たくさん、何もかも教えてくれて。 何回も手を繋いで、抱きしめてくれて、キスをして。 僕の小さな心には一留の事が好きって言う確かな想いがあって。 ずっと、ずっと一緒に居たいって言う大きな気持ちがあって。 一留からされる事の全てを、僕は断る事なんて出来ない。 「一留・・・好き・・・」 だから僕は両手を伸ばして一留の首に手をまわす。 そうすると、一留は少し驚いたみたいに身体を動かしたけれど、すぐに僕を抱きしめ返してくれて、痛いくらいにぎゅうって、一留の腕の中に仕舞い込まれた。 「錬・・・愛してる」 耳元で囁かれる一留の低くて、けれど甘い声に僕は頷く事しか出来なかったけど、一留の言葉が、温もりが、とても嬉しかった。 |
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