feeling heart to you |
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一留に手を引かれて僕は宿に戻った。 おじさんもおばさんも僕がいなくなったことに気付いているのか、気付いていないのか分からないけれど、一留の部屋に入るまで誰にも会わなかった。 僕は一留の部屋につれられて、中に入って、ようやく息ができた。 だって、苦しかったんだ。 一留から離れなくっちゃって思って離れたくせに、とても苦しくて息ができなかったんだ。 「錬、おいで」 安心して息を吐き出した僕に、いつの間にか手を離した一留はお布団の傍で僕を呼ぶ。 その表情は笑顔なくせに、どこか真剣で、ちょっとだけ、恐い。 「いち、る?」 なんでそんな顔をするんだろう。 やっぱり僕が黙って出ていったことをおこってるのかなってびくびくしながら、それでも一留に近付いたらぎゅって抱きしめられて、そのままお布団に転がった。 ばふん、て大きな音を立てて僕は一留の下敷きになった。 「ど、した・・・の?」 僕を抱きしめながら至近距離で見つめてくる一留はとても真剣な表情で。 やっぱり怒ってるんだって思った僕は思わずごめんなさいって言おうとしたんだけど、それを言う前に僕は一留に唇を塞がれた。 それも、いつもしてもらってる柔らかいキスなんかじゃなくて、息もできない様な、激しいキス。 「・・・んっ、・・ふ、ぁ・・・ぁ」 一留の舌が僕の舌を絡めて、僕は息が出来なくて苦しくなってしまうのに、それでも一留は離してくれない。 「んんっ、んっ、・・・・ぅん」 苦しくて。 やっぱり一留怒ってるのかなって思って、僕は抗う事も出来ずに一留に抱きしめられるままになってる。 息が苦しい。抱きしめられた身体が痛い。 だんだん意識がもうろうとしてくる。 何回か息継ぎはしてるけど、僕は全然息を吸えなくて、抱きしめてる一留にあんまり力の出ない手で捕まった。 そうしたら一留がようやく離れてくれて、それでも怖い目で僕を睨む。 「離さない」 一留の青い瞳は今は真っ黒に見えて、その瞳を細めた一留は僕の頬を両手で包み込んで囁いた。 冷たいと感じる声なのに、どうしてだか一留の短い言葉は熱を含んでいる様に聞こえて僕は一留を見上げながら何も言えずにいる。 「もう、何があっても離さない」 離さないと言ってくれる一留。 勝手に離れた僕に怒ってるけど、囁く声は不思議と暖かく、熱く聞こえて僕は今更ながらに勝手に離れた事を後悔し直してしまう。 「ご、ごめ・・・な、さい・・・」 でも、僕が一留の側に居たら迷惑になるんじゃないか。 そうとしか思えなくて。 でも結局僕は離れられなくて。 一留が駅に来なくても僕はきっと泣きながら一留の所に帰ってた。 涙が溢れ出て止まらない。 一留は親指で僕の涙を拭ってくれながら、やっと、微笑んでくれた。 「謝らなくていいよ。錬が悪いわけじゃないって分かってる。ちゃんと分かってる。でも、もう、俺は錬を離さないよ、絶対に」 低い声で囁きながら笑みを浮かべる一留の顔は本当に綺麗で、格好良くて。 こんな状況なのに見とれてしまった僕は、一留が僕に、これから何をしようとしてるのかなんて全く分からなかった。 |
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