feeling heart to you
28




魘されてる一留。
気づかれない様にそっとお布団から出て、苦しんでる一留の額にそっと手を乗せた。

ごめんね。僕の所為だよね。
こんなに熱が出て、全然休む暇もなかったよね。

何だかそう思い始めたら何もかも、今までも何もかもが一留の邪魔だったんじゃないかって思えて仕方なくて、もう一留の顔を見る事も出来なくなった。

それでも、それでもね。

「いち、る・・・・・す、き・・」

僕は一留の事が好き。誰よりも、好きだよ。
この温泉に来て、宿に来て、一留にあえて、嬉しかった。
本当に、一留に出会わなかったら・・・・僕はきっと生きては居なかった。
それだけ、あの時の僕はどうしようもないくらいに馬鹿で馬鹿で、何も無かった。

「いち、る・・・すき。・・・・・ずっと、すき」

ずっとずっと一留が好き。
誰よりも何よりも一留が好きだよ。

お父さんよりもお母さんよりも社長よりも峯川さんよりも、好きだよ。
なんて、比べるのが好きじゃ無い人達ばっかりでごめんね。
僕なんかが好きになちゃって、ごめんね。

熟睡してるけど、魘されてる一留。
今日は一杯いろんな事があったから余計に疲れてるんだと思う。

「ごめ・・・、ね」

掠れた僕の声。
出しづらい声と一緒に、一留の額においた僕の手の平にぽたりと涙が落ちた。

「すき・・・。すき、だよ。いち、る・・・」

でも、でも、もう僕は居なくなるから。
これ以上一留に迷惑なんてかけられないから。

ごめんね。きっと怒るだろうね。
一留は優しいから、きっと僕が居なくなったら怒るよね。
悲しんでくれるよね。
それをちょっと嬉しいって思う自分が嫌だけど。
でもね、僕も哀しいんだよ。こんなのただの言い訳だけど。
お願い、一留。僕の事なんかすぐに忘れて。

お願い、忘れて。
僕は忘れられないけど、でも、一留は忘れてね。
お願い。

「ごめ、んね・・・」

ああ、だめだ。
これ以上一留の側にいたら一留の目が覚めちゃう。
こんなに泣いてたら一留が心配して起きちゃう。

離れたくない。ずっと側に居たい。
ずっと、ずっと、側に居たかったよ。

ずっと、ずうっと。

でも、もう僕は一留の側に居られないから。
これ以上一留に迷惑かけたく無いから。
ごめんね。ごめんね。
もう行かなきゃ。

ごめんね。勝手に居なくなって。
お願いだから、僕の事、すぐに忘れてね。






...back...next