feeling heart to you |
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何時まで続くんだろう、この穏やかな時間は。 僕がこの温泉街に来てもう随分経ってる。 テレビも新聞も見ないから日付けの感覚なんて分からなくなってるけど、それでももう結構な時間が経っているはず。 それなのに誰も何も言ってこない。 父さんも母さんも社長もマネージャーも。 僕は本当にここに捨てられたのかな。 これから一人なのかな。 今は一留が居るけど、何時までもこのままで居られる訳が無い。 そんな事ぐらいは分かってる。 分かってるけど、僕は、僕は一留から離れたくなんてない。 ずっとこのままで居たいよ。 ずっと、ずっと。 ずっとずうっと、一留と一緒にいたいんだよ。 「ぅと・・・しょ」 僕は小さく小さく呟いて、手に持っていた絵馬に願いを込めた。 ここは神社。 温泉街の外れにある小さな神社で街の人が言うには縁結びの神様が居るらしい。 そう聞いた一留は僕の返事も待たずに驚くほど強引に僕の手を引いて神社に来たんだ。 神社はやっぱりそれらしい建物で、人が居なかった。 一応お札やお守りを売っている所には神主さんらしきおじさんが居たんだけど、それ以外に人気のない寂しい神社。 でも誰もいないからとても静かでちょっと高台にある神社の境内からは海が良く見えるんだ。 僕を引っ張ってきた一留はおじさんを見つけると開口一番に縁結びはどうすればいいんだ?って詰め寄っておじさんに笑われてた。 どうやら僕と一留の話はおじさんにまで聞こえていたみたいで随分と仲の良い兄弟だって噂だったのに縁結びが必要なのかっておじさんはけらけらと笑ってた。 でもひとしきり笑ったおじさんは笑いを止める事無く僕と一留に小さなお守りがくっついたストラップと絵馬をくれたんだ。 「仲良き事は良き事かなってな。お代はいらないよ。おじさんからのプレゼントだ」 そう言って僕の頭を撫でてくれた。 そうして一留といっしょに絵馬をくくりつけた。 願いを込めて。 絵馬にもずっと一緒に居られます様にって書いて。 そうしたら一留が僕の絵馬を覗き込んで、「錬、それは願い事じゃなくってもう叶ってる事じゃないのか?」って、とても優しい顔で微笑みながら僕の肩を引き寄せた。 高台にあるこの神社は少し風が強い。 一留とぴったりくっついてると、暖かい。 「いちる、は・・に、かいた、の?」 一留の絵馬も覗いてみたんだけど黒いマジックで書かれた文字はどう見ても日本語じゃなくて僕には全然読めなかったんだ。 「俺の願いはひーみーつ。でも錬と同じ様な事だよ」 「おなじ?」 僕と同じ願い事? ずっと一留と一緒に居たい。 一留も同じ事をお願いしたの? 「ちょっとだけ違う意味だけど、俺も同じだよ。一緒に居るってのはもう叶ってるけど、これからも、一緒に居られる様にってな」 微笑みながら僕の頭を撫でてくれる一留に僕も笑みを返す。 一留も一緒のお願い事をしてくれたんだって分かって嬉しくて、僕の肩にある一留の手にちょっとだけ擦り寄ったら一留が嬉しそうに笑いながら僕の額にキスをした。 ずっとずっと。一緒に居られます様に。 願いを込めて、何度か神社を振り返りながら僕と一留は海に向かった。 毎日の日課になってる海に向かう僕と一留。 からんころんと下駄の音をさせながら海の風に煽られて白い浴衣がばたばたと捲れる。 僕も随分下駄の音をさせるのが旨くなっていて、一留みたいに綺麗な音では無いけれど、最初みたいに引きずる様な音じゃなくなったし、沢山歩いても足を痛める事も無くなってた。 手を繋いで海に向かう道。 小さな街だから僕と一留が歩くたんびにあちこちから声がかかって一留が手を振ったり僕がお辞儀したりしてゆっくりと海に向かう。 からん。ころん。 やがて海に降りる階段が見えてきて一留が僕の手をぎゅっと握りしめ直した。 何にも言わずに微笑んでくれる一留に僕も微笑みを返しながら一留の手をぎゅって握り直す。 二人でふふって微笑みあって、ちょっとだけ立ち止まった足を進めようと前を向いた時、僕は居るハズの無い人を見つけてしまって進みかけた足を止めてしまった。 「錬?」 突然動かなくなった僕に一留が首を傾げて僕を見下ろしてくる。 けれど、僕は一留の視線も忘れて、ただ呆然と前に立っている人を眺めてしまった。 それは。 「み、ね・・・かわ、さ・・」 峯川さん。 僕のマネージャーである人がこの温泉街には全く似合わない黒いスーツにいつも見ていたオールバックにトレードマークである縁無しの眼鏡と言う姿で、やっぱり僕を見て驚いて目を見開いていたんだ。 |
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