feeling heart to you
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それから。
何の変化もなく僕と一留の生活は穏やかに過ぎていった。

相変わらず一留はとても優しくて、暖かくて、そして、毎日の様に僕の手を取って温泉街の中を歩いてる。

旅館の浴衣に旅館の下駄。
からんころんと音をさせて町中歩いてる。

足湯や甘味屋、お土産屋さんに岩牡蛎のお店。
でも岩牡蛎のお店は一留が生物が苦手だからあんまり行かない。
けれど、海には毎日の様に行ってるんだ。

誰もいない海。

たまに、運が良ければ地元のおじちゃんおばちゃんが居て僕と一留に貝や海藻、小さな魚なんかをくれる事もある。

海はとても静かで綺麗。
風が冷たいけど、いつだって一留は僕の事を湯たんぽ変わりだなんて言いながら抱きしめてくれるし、誰もいないところでは何回もキスをされる。

僕も嫌じゃないから、ううん、恥ずかしけど、一留が僕のことを好きだって言ってくれるのがうれしいから、当然キスされるのも嫌じゃなくて、僕と一留は何回も何回もキスをする。

宿に帰れば一緒にお風呂に入ってご飯を食べて。
一緒のお布団で眠る。

一留の腕の中は暖かくて、でもたまに熱いこともある。
きっと熱を出しているんだと思うんだけど、一留は僕に何も言わないし、僕が心配するととても気にしてしまうから僕は心配だけど、なるべく心配だって顔に出さないで、ただ一留の背中をこっそり摩る事しか出来ない。

一留と一緒に過ごす様になってから僕は声を失ってしまった事をとても後悔してる。

声を失った時にはもう一生声なんていらないって思ったのに、今は声が出ればいいなって思ってしまう。

声が出て、一留とおしゃべりできたらなって思っる。
一留の為に、何か、歌えればなと思っちゃうんだ。

いつだって一留は僕の声を気にかけていてくれて、僕があまり長い返事をしないようにって会話を選んでくれているから。

でもね、短い返事よりも、僕はとても一留に言いたい事がある。
自分で声を無くした癖に、自分の声で言いたい事がある。

僕も、一留の事が好きだよって。その言葉を自分の声で伝えたいんだ。






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