feeling heart to you
12




そうして。
思いきりお風呂で遊んだ僕は、今、新しい枕を持って固まっている。

僕が居るのは一留の部屋。
一留はぽふぽふってお布団を叩いてにこにこしてる。

「ほーら。今さら何を恥ずかしがる。こっち来いって」

お風呂から上がって少し涼んで、後はもう寝るだけになって。
でも僕は自分の部屋には帰して貰えなくて、新しい枕をおばちゃんからもらって、一留の部屋の隅っこで固まってる。

そりゃぁ確かにここに来てから自分の部屋で寝たのは最初の一回だけだけど、昼間も一緒に寝たけど、何もそんなに嬉しそうに僕の事を呼ばなくても、って思っちゃうんだ。

「れーん?ほら、おいで」

だって、恥ずかしい。
一留の側に行けなくて、部屋の隅っこで枕を抱えて固まってる僕に一留はにこにこしながらおいでおいでってしてる。
一留と一緒に寝るのは全然嫌じゃないんだけど、でも、自分から行くのが何だか恥ずかしくて僕はどうしようって困ってる。
昼間みたいにだまし討ちって言ったら言葉が悪いけど、そうしてくれればいいのに、って思っちゃう。

でも、このままだと一留も寝れないし、僕も眠れない。

恥ずかしいなんて思ってるくせに、僕は自分の部屋に帰る気なんてないんだ。
だって、一人は淋しいし、冷たい。

「錬、こっちにおいで」

一留は優しくてあったかい。
にっこり微笑まれておいでおいでってされて、恥ずかしいけど、僕は何時までも固まっている訳にもいかないから、そろそろと枕を持ったまま一留のお布団に近付いた。

「よーし。来たな。ほら、寝るぞ」

そうすると、一留は本当に嬉しそうに僕に手を伸ばして、そのままお布団の中に連れ込むんだ。
慌てて持っていた枕をちゃんと置こうとするんだけど、一留は僕の枕を取って部屋の隅っこに投げてしまった。

何するの?枕は?って一留を見上げたら一留はさっさと僕を抱きしめて。
僕の頭は一留の腕に乗っかったんだ。

・・・これって、腕枕って奴?

新しい枕をもらったのに、腕枕になるなんてって、慌ててばたばたしようとしたんだけど、一留には傷があるのをハッと思い出してしまった僕はあんまり動けないで、結局もぞもぞするだけだった。

「明日も旨いモン食いに行くぞ。あ、あと海にも行こうな」

一留に抱きしめられて、僕は恥ずかしくてどきどきしてるのに、一留はまるで抱き枕みたいに僕を抱きしめて気持ちよさそうにしてる。

何か、不公平。
そう思うんだけど、一留に抱きしめられるのは嫌じゃないから、やっぱり僕は何も出来なくて一留の腕の中で目を閉じた。

「おやすみ。良い夢見ろよ」

僕の背中をさすってくれる一留。
僕もまねして一留の背中に手を回して、そっと一留の背中を撫でたら一留はありがとなって囁いて、僕の頬にちゅって唇を落とした。

やっぱり、何回キスされても慣れる事は無くて、恥ずかしいんだけど、でも、何回もキスしてくれる事が嫌じゃなくて、嬉しいって、ただ単純にそう思った。

僕に触ってくれる。撫でてくれる。
手を繋いでくれる。抱きしめてくれる。
キスしてくれる。

それが、嬉しい事なんだって、僕は一留の腕の中でとても安心しながら眠りについた。






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