ハルと猫と魔法使い/悪あがき
05


夕暮れまでたっぷり身体を動かしたハルはご機嫌のまま道場を後にした。
こっそりハルの写真を見せてもらう約束をしたガイルもご機嫌で、久々にハルを鑑賞出来たツカサもご機嫌で、皆ご機嫌な一日だった。

「あー汗かいたな。ガイルは見学ばっかで良かったのか?」

家に戻って餌の催促をするチャを抱き上げながらハルが台所へ裸足のままぺたぺたと歩いていく。その後ろを付いていきながらガイルの手にも器用にシロとクロがいる。

「見学しろと言ったのはハルだぞ?それに、動くハルを見るのも楽しかった」
「変なヤツ。ま、いいけどさ」
「今日は動いて疲れただろう。猫の食事は用意しておくから先に風呂に入ってくると良い。暖まっているはずだ」
「そうさせてもらうか。サンキュ」

抱いたチャを下に落として振り返りながら笑顔のハルがガイルの頬にキスをする。軽いキスだけれども、ハルからのキスは全て嬉しい事だ。嬉しそうに微笑んだガイルも猫を下に下ろした。



中々に有意義な一日だった。
流石に一日動いたくらいで身体は鍛えられないが続ければ筋肉だって付くはずだし、ガイルにだって対抗できるかもしれない。
むん、と気合いを入れたハルはばさばさと服を脱ぐと風呂に入って。

「ガイルー!てめー!暖かいって言っただろーがー!」

確認しなかった自分が悪い、なんてハルの頭にはない。足を入れたら真水だった風呂に身体が竦んでしまったではないか。
素っ裸のまま怒鳴るハルに足音なく風呂場に入ってきたガイルはもちろん、笑顔だ。

「私の力で直ぐに暖まるぞ」
「じゃなくて、暖かいって言っただろうがよ!」
「そんな事を言ったか?」

さも不思議そうに首を傾げるガイルに、この時点になってもハルは気付かない。
素っ裸の美味しそうなハルを頂きたいが為に嘘をついたなんて。
何度もこのパターンで美味しく頂かれているのだから、そろそろ気付いた方が、なんて事はもちろん言わない。

「大丈夫、すぐ熱くなる」

上着をばさりと脱ぎ捨てたガイルにようやくハルが気付く。
が、後の祭りだ。

「くそー、最初からかよ」
「気付かないハルがとても可愛いぞ」
「やかましい!」

こうなったらもう抵抗するだけ無駄だ。まだ身体を鍛えて一日目だし、どうにもならない。しかし、朝も頂かれたのに、夕も食うつもりなのかガイルは。
むーっとガイルを睨めば何故か嬉しそうに微笑まれて、逞しい腕がハルに伸ばされる。

「動くハルに惹かれてしまったのだ」
「言い訳にもならねぇな」

大人しく抱き寄せられながら感じるのはやっぱり適いそうにないと言う事で。

「そう無理はせん。安心しろ」
「できるかバカ!」

わんわんとハルの怒鳴り声だけが空しく風呂場に響いた。








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