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ハルと猫と魔法使い/ガイルの印(しるし)
03 |
「そうだな、私の身はこの世界には異質だ。しかし、ハルの側に居たいと思うのは私の中で一番強い想いだ。愛している、ハル」 「お、俺は・・・ガイルがガイルの好きな様にしろとしか言えねぇし、でも、ガイルがウチに住む様になって、一人だったから嬉しいってのもあるし・・・でも、ガイルは違うトコの奴だから」 ぎゅっと抱きしめる身体は最後の一言でぶるりと震えた。何時に無くしおらしい様子にガイルの腕にも力が籠もる。 今更、手放せる訳が無いのに、何を言われてもこの愛おしい存在から離れるつもりは無いのに。 「どうしたのだ?今日は随分弱気だな」 「俺だって、ちょっとは考えるんだ」 薄い肩に顎を乗せて囁けば返ってくるのはやはり何処か気弱な返答で。 抱きしめる力を強めながら唇でハルの耳元にキスを落とせば珍しく何の抗いも無く少々気抜けしてしまう。 それでも、手放すつもりは無いのだ。言葉では言い表せない、ガイルの全てを変えてくれた愛おしい人を、手放せる訳が無いのに。 だから、ガイルはキスを落とした耳元に低く甘い声で囁く。 「安心しろ。例え帰るとしても私はハルを手放すつもりは無い。離れたくないのであろう?だったら喜んで連れて行くまでだ」 そう。答えは以外と簡単だ。 離れたくないのなら、手放せないのなら連れて行くまで。決して離れられない様にするまで。 少しの笑いを含んだ声にハルの肩がびくりと震える。 「ちょっと待て、俺に付いてこいって言うのかよ」 「そうだ。これで安心だろう?」 「出来るか!阿呆!」 何やら雲行きが怪しくなって来たと分かったらしい。ハルがもぞもぞとガイルから離れようとするが、ガイルの力にハルが叶う訳も無く、抱きしめる力は強まるばかりでハルはガイルの腕の中でもがくだけ。 甘い言葉を囁くのは何時もガイルの役目。けれど、態度で行動でガイルを甘やかしてくれるのはガイルよりハルの役目。今更剣と杖が見つかったくらいでどうするも無いのに。 「つれないな、ハルは。ああ、そうだ。折角ハルが離れたくないと言ってくれたのだから一つ贈り物をしようではないか」 「いらねぇよ!つか、離れたくないなんて一言も言って無ぇって!」 「照れるな。顔を赤くしても可愛いだけだぞ、ハル」 愛おしい。生まれて初めて心の奥底から沸き上がる純粋な気持ち。 ばたばた暴れるハルをぎゅうぎゅうに抱きしめてガイルは強引にハルの口に深い深い口づけをする。 「んっ・・・・んんっ、ぅん」 慣れた行為だ。直ぐにハルの身体からくったりと力が抜けてくる。 抱きしめる力は少し弱くして背中をさすりながら片手は手触りの良い髪を梳いて、絡め取る舌を十分に堪能しつつもガイルは喉の奥で長い呪文を唱える。 離れたくない。離したくない。 これからも、何処に居ても離れる事の無い様に。 長い長い口づけをしながら、やがてハルの力が抜けきった頃、ようやく呪文は終わりを告げガイルは満足そうに笑みを浮かべてハルの服を脱がしにかかった。 荒い息を吐きながらぼんやりとガイルを見上げるのは涙に濡れた綺麗な青紫の瞳。 何度か瞬きをしながらもガイルの手に逆らう様子は無い。シャツのボタンを外して上着をはだけさせれば長い長い呪文の成果、発動した力が、くっきりとハルの胸元に現れていた。 「綺麗だ」 うっとりと呟いて白い肌に唇を落とす。 その感触にぴくりと肌を震わせたハルが、ガイルに釣られて自らの胸元に視線を落として。 「な、何だよ、これ・・・」 声を震わせた。 ぼやけた視界に移る見慣れたはずの自分の肌。なのに、ガイルがそっと指と唇を這わせた所には見たこともない、漆黒の模様が描かれているでは無いか。 それは、今にも動き出しそうなドラゴンの印(しるし)。 どんなに間違いかと思って瞬きしても消えるばかりか、反対に、しっかりと見えてしまう。 例えるのならば刺青のドラゴン。 「私の印だ。これで、例え私が帰る事になってもハルも自動的に一緒に来られるぞ」 ぱくぱくと唇を開いて閉じて、目を見開くハルにガイルはうっとりと微笑んでちゅ、と落ち着きの無い唇にキスをした。 「ハルの肌に栄えて綺麗だ」 「・・・・・ンの、馬鹿野郎!俺に勝手に入れ墨こさえるなー!」 嬉しそうにうっすらと頬まで染めて微笑むガイルに、ようやくガイルに何をされたのか理解出来たのか、ハルの叫びが狭い物置に響く。 けれど、ハルの叫びもガイルには何のダメージも無い。むしろさらに嬉しそうにハルの胸元に指を這わせるだけだ。 「入れ墨ではない。私の印だ」 「同じだろう!どうすんだよ銭湯にも行けねぇし温泉にも行けねぇだろが!」 一番最初で出てくる言葉が非常にハルらしい。ガイルはくつくつと笑いながら顔を真っ赤に染めているハルにキスをする。舌を絡めてくちゅりと音をさせれば、ますますハルの顔が赤くなる。 「大丈夫。私の意志で消す事も出来る。まあ、見た目だけだがな」 「ああ?何で俺の意志じゃ消えねぇんだよ!」 「そう怒るな。まだ昼間なのに煽られてしまうだろう?」 いや、実際はもう煽られて引き返せない所まで来ているのだが、それは中途半端に肌を弄られたハルも同じだろう。 にやりと意地の悪い笑みを浮かべるガイルに沸騰しそうな程に顔を染めたハルは少しの間ぱくぱくと口を開いては閉じてを繰り返し。 「っ・・・・こ、この、この、この、この、馬鹿野郎!一発ぶん殴ぐらせろ!」 力の限りで叫んだ。 まあ、ハルの叫びくらいでガイルの手が止まる訳は無い。 いい加減学習して欲しいものだと、ハルの抵抗を余裕で抑えたガイルは暴れる細身をいそいそと抱えて寝室へと移動した。 |
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