ハルと猫と魔法使い/日本情緒...04






そうして、猫を近所の知り合いに家の鍵ごと預けてハルとガイルが辿り着いたのは日本海側の少々寂れ気味の温泉街。
海と山、これが直ぐ側に配置される地域は食事が旨いのだと言っていたのは誰だっただろうか、そんな事を思いながらガイルを伴って電車から降りたハルは酷く上機嫌に隣に立つガイルを見上げた。

「海の匂いがするな。どうだ?」
「ああ・・・この匂いがそうなのか。海を見るのは始めてだ」

いや、海だけが始めてでは無い。
ガイルにとっては電車も始めてだし駅弁も始めてだし、もちろん旅行と言うのも始めてだ。
うっすらと目を細めて潮の香りに鼻を向けるガイルにハルはにっこりと微笑んでガイルの腕を取る。

「さ、旅館行こうぜ。奮発したからすごいぜ」

始めてづくし。まさしく言葉通りのガイルにハルは面白くて仕方がないと言う表情だ。
別にガイルをからかおうとか笑ってやろうとか、そんな気持ちは全く無いけれど、一緒に行動して楽しいのは事実。逞しい腕を引っ張りながらハルはこれからの楽しい事を予想しつつどうにも緩む顔を押さえきれなかった。

さて。うきうきと旅館までの道を楽しむハルとガイルだが、季節は初夏。丁度行楽シーズンともあってか以外と街を歩く人々は多い。
駅からハルの予約した旅館までは歩いて20分ほど。街の中心をてくてくと荷物片手にガイル片手に歩くハルは酷くご機嫌で、ガイルも何時にないハルのご機嫌な雰囲気と始めて感じる潮の匂いにご機嫌だ。

が、この2人。自覚は全く無いものの普通に街を歩いただけで街行く人々の注目を一心に集める。何せ目立つ。全てが目立つのだ。

金色の髪に紫の混じった青い瞳。綺麗と言われる顔立ちにすらりとした長身。
銀色の長い髪に灰色の瞳。男らしく整った顔立ちに鍛え抜いた逞しい身体。
それがぴたりと寄り添って(と言う風に見えてしまう)楽し気に街を歩くのだから思わず携帯カメラを向けたくもなると言う所だろう。
不思議なざわめきを周りに起こしつつもハルトガイルは全く無自覚に非情に仲良く街を歩いて旅館にたどり着いた。







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