ハルと猫と魔法使い/悪友の三色団子
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結局、ハルとガイルと猫達を構うだけ構ってすっきりしたらしい市郎は夕暮れ前にさっさと帰ってしまった。これから家に帰って愛妻の手料理を食べる、との事だった。

「ったく。アイツはいったい何しにきたんだ」
「そう言うな。アレでなかなか良い男だぞ」
「・・・ガイルがそう言うのも何だかなぁ」

嵐が来た様だったと溜息を吐くハルはぐったりとソファに沈んでいる。
仰向けで三人がけのソファに寝転がって、その上にはチャが乗っかっている。
シロとクロは向かい側のソファで仲良く寝ている。

ガイルは別段疲れを感じていないので市郎の分のカップを片づけてハルと自分の珈琲を入れ直した。
テーブルにカップを置いてぐったりしているハルに覆い被さって軽いキスをする。
柔らかく唇を啄んで白い頬を撫でて、起き上がる。

「あの男もおもしろい男だな」
「そうかぁ?」

先ほどまで居た市郎の、ころころと良く変わる男臭いのに整った顔を思い出してガイルはうっすらと笑みを浮かべる。
ハルも市郎も、見るからに怪しいガイルを全く気にせず有りのまま受け入れてくるのだ。それがとても変わっていると思う。
けれど、それ以上にありがたい。
男であるガイルがハルを好きだと言うのに何の拒絶もせずに笑いながらハルを落とすのは大変だぞと言ってくれた、この世界で始めて出来た友人。
元からそう言った事に偏見は無いと言い切っていろいろとガイルにハルの事を教えてくれる。とても、とてもありがたい友人。

「そう言えば、土産をもう一つ貰ったのだが」

その友人はハルとガイルの仲を応援してくれているのだろう。
ハルが居ない隙にと悪い笑みを浮かべてガイルにもう一つの土産を渡してくれたのだ。

「何だ?団子以外にもあったのか?」
「ああ、とても良い物を貰ったのだぞ」

手の平に収まる薄紅色のそれはハルにとってはあまり嬉しくない物だろうけれど、ガイルにはとても嬉しい物だった。
それを手の平で遊んでからガイルはおもむろにハルに見せる。
途端にハルの顔色が変わる。
「げっ、そ、それはっ・・・」







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