ハルと猫と魔法使い/悪友の三色団子
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「市郎はどうなのだ?」 「俺はあんまり好きじゃねーけど、ウチの社長がすっごく好きだ。それもわざわざ旨い店って聞いて買ってきたんだぜ」 市郎はグラフィックデザイナーだ。彼の勤める社の社長が大の甘い物好きなのだ。 ちなみに、市郎の名字は高木と言う。そして、彼の勤める社の社長とハルは何度か面識がある。と言うより大学が一緒だったのだ。 「・・・シャチョウとは何だ?名前か?」 しかしガイルは社長と言う言葉に首を傾げる。 それはそうだろうとハルは思うが市郎には面白い反応だったらしい。 にやにやと笑いながら明らかに嘘を教えようとしている市郎にハルはテーブルに貼り付いていたチャを市郎に軽く投げる。 「だから猫を投げるなって!お前、猫可愛くないのかよ」 今度はちゃんと受け止めた市郎が吠えるがハルはふんと鼻で笑って同じくテーブルに貼り付いていたシロを抱き上げる。 「可愛いに決まってんだろ?チャを抱けて嬉しいだろ?」 何だったらクロも投げてやろうかと微笑むハルの表情は綺麗だからこそ、怖い。 「ハル、何度も言うが猫を投げたら可哀想だろう?」 そんなハルにガイルがいつの間にか膝に昇っていたクロをハルに渡すと席を立った。 既に三色団子の一本を食べ終えている。 「ガイル?」 どうしたんだと問うハルにガイルは身を屈めて頬にキスを落とすと苦笑した。 「食べた後が甘いのだな。茶を入れてくる」 その、あまりにも日本人らしい答えに市郎が腹を抱えて笑ったのは言うまでもない。 |
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