ハルと猫と魔法使い/悪友の三色団子
...03



恋人では無い。けれど友人でもない。ただの同居人、と言うにもおかしい。
ハルとガイルの関係はなかなか説明しにくい。
しかし実際の所、外から見れば彼らの関係は立派な恋人同士になるのだろう。

玄関先。
訪れた友人は無精髭を撫でながら呆れた視線で出迎えたハルの首元を指さして、溜息を吐いた。

「ハル、今から鏡見て、着替えてこい」
「あ?来るなり何いってんだよ、市郎」

土間の上に居るハルに見下ろされているのは市郎と言うハルの昔からの友人だ。
背丈はハルより少し上。ガイルよりは下と言ったところだろうか。
伸ばしっぱなしの髪を一纏めに縛り、無精髭を生やしたその姿は不思議と良く似合い、道行く女性が振り返る程の物だ。
但し彼は妻帯者で目に入れても痛くない愛娘が居るが。

「いいから鏡見てこい。つーか客が来るのにパジャマ来てんじゃねーって」
「お前が客な訳ないだろーが。ウチの猫に悪さするんじゃねーぞ。ガイル、珈琲入れてくれ」

玄関先で言い合っていたからだろうか。いつの間にか掃除の途中だったガイルが箒片手に来ている。
そのガイルに市郎を押しつけてハルは洗面所に向かう。
確かに一応かろうじての客である市郎の前でパジャマ姿も、と思ったらしい。

ハルが洗面所に行くのを見送りながら、市郎を見つけてガイルが笑みを浮かべる。

「イチローじゃないか。久しいな。今日は何だ?」

ガイルと市郎は既に何度か会っている。
何が会うのかハルには分からないのだが、何故か気が合うらしく遊びに来る市郎をガイルは嬉しそうに迎える。

「おっす。相変わらずイイ男っぷりだな。今日はただの暇潰し。んで、ハルは落とせたのか?」
「まだだ。なかなか難しい」
「お前さんでも苦労してるのか。ま、ハルだしな」
「そうだな。今珈琲を入れるから上がれ。ただし猫に悪さはするなよ」
「ちぇ。分かったって」

市郎はハルの猫達を構うのを非常に楽しみにしている。
何せ3匹揃ってあの見かけだ。

ふかふかの、もこもこ。
弄くらない手は無いとばかりにハルの家に来るたびに猫を纏めて弄くっては嫌がれている。
それでも懲りずに猫達は市郎に近づいては撫でてくれと腹を出す。
その性格は飼い主に似たのか元々なのか。恐らくはその両方なのだろうけれど、市郎にとってハルの家に居る猫達はとっても楽しい玩具なのだ。







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