ハルと猫と魔法使い/サクラと酒
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満開、とまではいかないが八分咲き、と言う所だろうか。 縁側から見える桜の木はなかなかに大きな木で花を咲かせたその姿は非常に立派でもある。 花見花見と鼻歌を歌いながら縁側に次々と酒と肴を並べていって、最後に座布団と猫を添えれば完璧。ハルはふふふと笑いながら腰を下ろすと肴を作る手伝いをしていたガイルを手招いて隣の座布団に腰を下ろさせた。 時は夕暮れ。暮れかかった空に生える桜。 時折強い風の吹く中でガイルの持った漆塗りの杯にとくとくと酒を注ぐ。 「日本酒は始めてだよな」 深紅の杯に透明な酒。揺れるそれを促してガイルを見上げれば一口で飲み干したガイルはふうと小さく息を吐いてハルに向かって微笑む。 「なかなか旨い。始めて飲む味だな」 倉に有った秘蔵の酒と言う名のただ飲むのを忘れていただけの日本酒。 それでも銘柄の善し悪しには変わりなくハルの杯にもガイルが注いでくれて独特に匂いと味に舌鼓を打ってにんまりと笑う。 「だろ?日本人は日本酒!これがまた旨いんだ」 とくとくとガイルの杯に酒を足してまた飲んで。ついでに縁側に並べられた肴も摘んでとってもご機嫌なハルだ。 肴はたいした物を作った訳じゃないけれど、こうして外の風を感じながら、桜を見ながら飲み食いするのはまた格別で。 何時の間にやら胡座で座るハルの膝上にシロが、ガイルには同じくクロとチャが冷たい風を避けてぬくぬくとしながら偶に肴をねだってふかふかの手を出してきている。 「うーん。気持ち良いー」 ハルはあまり酒に強くない。程々に杯を空ければふわふわとした酔っぱらいに変身する。 ガイルはどうやらザルらしい。いくら杯を空けてもまったく顔色の変わる様子が無い。 「ハル、どうして座っているのにふらつくのだ。危ないからこっちに来い」 「んー」 ゆらゆらと上半身を揺らしながらご機嫌で笑っているハルにガイルが手を伸ばして引き寄せる。座布団ごとずりずりとハルを手の中に引きずり込んで、ついでに膝の上に居るシロも一緒に引きずってくればはたと気を取り戻したハルがガイルにひっついてくる。 |
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