ハルと猫と魔法使い/サクラと酒
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おおむね平和な毎日だ。 快晴の空、暖かい空気を一心に浴びてガイルは無理矢理洗った洗濯物を干す。 この暖かく澄んだ空気は春と言う季節なのだと同じ名前のハルに教わった。 他にも3つの季節があって、ハルは春が一番好きだと言っていたからガイルも春が好きだ。ハルも好きだが。 ぱんぱんとシーツを伸ばして干して、足下に転がる、いつの間にか増えた猫を構って笑みを浮かべた。 今までの生活では比べようもない、平和な毎日。 争いに次ぐ争いで麻痺した心を抱えながら騙されて追われてもう死んでしまおうと思った過去とは雲泥の差。 素性の知れぬ者を信頼し、笑みを浮かべてくれるハル。 何もかも諦めていたガイルに何気ない態度で人の優しさ楽しさと愛おしさを教えてくれたハル。 綺麗な顔をしながら尊大な態度を取る癖に可愛いハル。 あっという間にハルが溢れて魅了されて。 「に!」 うっとりと物思いに浸っていたガイルを足下のシロとチャが声をあげる。 どうやら自分達を忘れるなと言っているらしい感じにガイルは気を取り直してしゃがみ込んで2匹を抱き上げた。 「すまんすまん。お前達の事も好きだぞ?今日もふかふかしていて可愛いぞ」 笑い声を上げて猫を弄くりながらガイルは思う。 出来るだけ長く、此処に、この家に、ハルの側に居られる様にと。 この世界に落ちた原因は全く分からない。 追いつめられて崖から身を投げたと同時にハルの家の庭先に落ちたのだから。 訳も分からず警戒心だけで起きあがったガイルに、ガイルの落ちた音に驚いて出てきたハルと3匹の猫。 忘れる事など出来ない、ハルとの出会い。 「そう言えばお前達の方が先に私に触れたのだったな」 驚くばかりのハルを置いてふんふんと鼻先をガイルに向けて寄ってきた3匹の猫。 愛らしい外見とふわふわの毛とぷにゃぷにゃの肉球。 「にゃ!」 「にゃにゃ!」 ガイルの腕の中で可愛らしく無く2匹。 喉を鳴らしながらすりすりとガイルに身を擦って甘えてくる猫にガイルは微笑みながら空を見上げた。 落ちてきた理由は分からないけれど、どうか一秒でも長くこの場所に。 知らず願いながら流れる雲を見続けた。 |
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