ハルと猫と魔法使い
...08



この家に落ちてきた当初は何も出来なかったガイルも今や立派な家政婦だ。
料理はまだ無理だがその他の細々した事なら大抵出来る様になっていて、ハルはとても助かっている。
これからだってハルはさっさと風呂に向かうがガイルには掃除がある。
どうやら掃除機が嫌らしく、何処から探し出してきたのか、昔ながらの箒とちり取り、雑巾でもって家中を掃除するガイルはなかなかに働き者だ。
広すぎる家の普段使う所だけとはいえ、広い事には変わりないのにガイルは文句の一つも言わずに黙々と掃除をする。
大きな風呂に浸かりながらハルはガイルを思い浮かべて変わったヤツだと一人笑みをこぼした。

「にゃー」

すると、風呂の扉、磨りガラスの向こうから猫の声が聞こえる。
3匹そろって同じ声だから声だけでその差は分からないけれど、微かに見える磨りガラスの向こうはクロだ。

「どしたー。一緒に入るかー」

カリカリと扉に手を出すクロに声を掛ければ何故かすんなりと扉が開いて。

「一緒に入るぞ」

どうしてだか全裸のガイルが入ってくる。
何処も隠していないガイルの身体は鍛えられているのだと、素人でも分かる程にすざましい筋肉と、微かに見える傷跡が鍛えられた筋肉が実戦用だと伝えてくる。

しかし、それすらも慣れたと言わんばかりに眉間に皺を寄せたハルは湯船の湯を一掬い、ガイルにかけた。

「いい加減猫をだしにして許可を得るな」

そうなのだ。
ハルが一緒に入るかと声を掛けるのは何時だって猫なのに入ってくるのはガイルなのだ。
猫好きにとって、猫が風呂の向こうに居れば一緒に入るかと言うのは当然の事。だからハルもついつい凝りもせずに猫に向かって声を掛けてはガイルに侵入されてしまう。

「いいではないか。掃除は終わったぞ?」

浴室も広く湯船も広いから余裕でハルとガイルの大きな男2人が入れてしまう。
しかしガイルは余裕があると言うのにハルに手を出してさっさと抱き寄せてくる。







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