ハルと猫と魔法使い
...02



3匹の猫はそれぞれ各3kgずつ。
流石に3匹一緒に持つのは少々重たいけれど、腕にあるふかふかの手触りが猫好きにはたまらないのだ。

「さぁって。今日の朝メシは何にするか」

一応、一人暮らしのハルはどうしても独り言が多くなってしまう。

「お前ら何食う?」

しかも猫に話しかけるのを当然だと思ってしまう。
それを寂しい、だなんて欠片も思わないのがハルと言う男だ。

人呼んで、サバンナでもジャングルでも砂漠でもマイペースを貫く最強の女王様。

それがハルの知らないところで呼ばれているハルを指す言葉。
その通り名にしては少々長いあだ名の様な物は言葉のままの意味で、ハルを知る人々にとっては全く否定できない言葉だったりする。

そう、ハルと言う男は非情に、マイペースな女王様。
要するに自分のペースを崩す事無く相手の話を聞き入れずそのくせやたら態度が大きくて、綺麗。
そのくせ不思議と尊大とも言える態度に腹が立つと言った事は無く、何処か可愛らしさを感じてしまう、そんな男なのだ。

だからハルの知人友人達はハルの不思議な魅力に捕まって離れられない。
離れられないからこぞって要らぬ世話をしてしまう。
それによって有頂天になったりしないのもまたハルの魅力の一つだが、一生その性格は改善されないだろうと古くからの知人友人はこぞってウットリとハルの魅力を漏らしては溜息を落とすのだ。

さて。古いキッチンは家の広さを見ても分かる通り、広い。
しかし無精者のハルはキッチンの極々一部しか使わない。
素足でぺたぺたとキッチンをうろついて、猫達を下ろしたハルは猫缶とドライフードをざらざらと猫達専用の食器に入れて猫に出す。
動き回った所為ですっかりお腹を減らした猫達は一目散に食器に顔を突っ込んで盛大に食べ散らかしている。その姿を目を細めて眺めたハルは古めかしいコンロに鍋を置いて自分用の朝食と、居候用の朝食を作り始めた。
さて今日は何にするかと鼻歌交じりで冷蔵庫の残り物を思い浮かべたハルの背後。
何時の間にやらにょきっと生えた大きく太い腕がハルの細い腰にまわされた。







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