ハルと猫と魔法使い
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快晴の空。
広い敷地に立てられた古い洋館と、広い、雑草だらけのジャングルの様な庭。

その庭先に家の中から出てきたハルはううんと大きくのびをして、銜え煙草のままサンダルを引っかけると凝り固まった背中をほぐす為に腕をぐるぐると回しながら眩しすぎる日の光を一心に浴びた。

何処からか桜の花びらが飛んできそうな、そんな季節。
流れる風は心地よく、色素の薄いハルの色をより一層薄く見せる様に照らす光も、冬の光に比べて何処か柔らかく感じる。

伸ばした手は身長の高さにしてみれば細く感じ、けれど引き締まった身体と重なってひ弱と言う印象は無い。細めた瞳は紫がかった青い瞳で、ハルの中に異国の血が流れている事を示している。

着っぱなしの白いパジャマ姿でカラカラと木のサンダルの音をさせながらハルは庭先で戯れる愛しい家族を見つけて少し荒れた、かさかさの唇を持ち上げた。

「おー。お前ら、腹減ったか?」

庭先の雑草の中で戯れていたのは3匹の猫。
いずれも長毛種の雑種で、その毛色からセンスの無いハルによってシロ、クロ、チャ、と名付けられてしまった愛くるしい猫達だ。

その名の通り、シロは白い長毛、クロは黒の長毛、チャは茶色の長毛。

雑種の癖に見事に長毛揃いの猫達はそれぞれに小さな声でハルに向かって返事をすると3匹そろって古ぼけたサンダル足下に向かってきた。
それを嬉しそうに眺めたハルは銜えていた煙草を側にある、もう手入れをした時期を忘れてしまった池の中に投げ捨てて一番先に駆け寄ってきた白い猫、シロを抱き上げて、少しだけ遅れてきたクロとチャと片足でぐりぐりと弄くる。
指先にあたるふかふかの毛と温度が気持ち良い。
どうやら猫と言う生き物の、長毛種は喉が弱いらしく、ハルの家の猫達も小さな声しか出ない。けれど、小さな声ながらに愛くるしさが一層増して、猫好きのハルをさらにめろめろにさせるのだ。

「今日はイイ天気だな。お前らきっちり日干しされてこいよ」

基本的に古くて大きなこの家に鍵は掛けておらず、猫の通る扉くらいなら、と開けっ放しにしているから猫達は家と庭の間を自由に出入りしてはその長い毛を汚してハルに怒鳴られる。

ごろごろと喉を鳴らしながらハルにじゃれつく3匹を撫でて、遅い朝食にするためにハルは足下に転がっているクロとチャも持ち上げて家の中に入った。







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