太陽のカケラ...83



呼吸音が荒くなって、じわりと浮かぶ汗が球になれば瑛麻の息も熱くなる。
元から体格差の大きい瑛麻と司佐だけど、裸になればその差が余計に目立つ。
夜に働く司佐だから色はしろいけど体質と仕事で鍛えられた身体は瑛麻だけじゃなくて誰から見ても魅力的だ。
自然な筋肉とでも言うべきか、バランスが良くて触れればしっとりとしている。
一緒に風呂に入ったり銭湯に行ったりしていた瑛麻だから司佐の裸は見慣れたものだけど、こう言う風に見るのはまだまだ慣れない。

「ん、ぁ・・」

身体を舐められて声が出る。首筋、胸元、下がって腹の辺りから際どい所まで。
唇と舌でゆっくりと触れられて瑛麻の性器が反応する。身体も反応して震えれば覆い被さる司佐が笑んでまた触れられる。
瑛麻も手を伸ばして司佐に触れたいけど、まだ回数を重ねていない行為で身体が思う様に動かない。
細い身体は外に出る事はあっても基本的に白く、まだ少年のものだ。司佐とは全く違う色があって危ういバランスを感じさせる。食が細くても動くのは嫌いではない瑛麻だから薄く筋肉があって、それが余計に危うさを感じさせるのかもしれない。

「イイ反応だ。瑛麻、こっち見ろ」
「ゃ、つか、さ」

行為は2度目。裸になったのも2回目。前回は半月と少し前。傷だらけの瑛麻に怒った司佐のお説教と一緒だったけど、今回は違う。だから、はじめて。

「気持ちイイか?」
「い、いい・・・んっ」

恋人だけど、まさかこんなに進むとは思っていなかった。想像もできなかった。
大好きな司佐はとても近くて遠い人で、まだ子供な瑛麻と付き合ってくれるのは言葉だけの関係だと思っていた。
でも、今思えば司佐はちゃんと恋人だったかもしれない。瑛麻が押し気味だったけど抱きしめてくれていたし、キスもくれた。行為は先に進まなかったけどそれは瑛麻は子供過ぎただけかもしれない。
高校生になって、まだ最後まではしてくれなさそうだけど今はこのままでも良いのかも知れない。
性器に触れられて、喘いで達して。瑛麻も起き上がって司佐の性器に触れ、少し舐めて怒られても頑張って押し倒してみて。

「ぬるぬるになってきたな。声、出していいぞ、離れだし」
「俺、ばっか・・・んぁっ、あ、あ・・・つ、司佐っ」
「大丈夫だって。俺のも一緒に、イイ、な、これ」
「や、あ・・・っ」

司佐の性器と一緒に扱かれて、言葉通りぬるぬるだから気持ち良さばかり感じてしまう。
司佐の上に乗って不安定な体勢で弄られて、慌てて抱きつけば口付けされる。経験値ゼロの瑛麻だからなすがままだ。
苦しいから息を吐こうとしてもうまくできずに喘いで、弄られるまま達せば司佐がまだだと、瑛麻の手も巻き込まれて太いそれを扱く。
粘着質な音と瑛麻の息と声、司佐の少しだけ乱れた声が部屋に響く。
襖だけで仕切られた部屋から声は全体に響いて隠し様もない。離れだから誰にも聞こえないだろうけど。


「風呂もでけえし、至れり尽くせりだよなあ」
「ホントだよな。お湯、熱くないか?」
「そうか?少しぬるくするか」

ぐちゃぐちゃになって終わった後、室内風呂でまったりの一時だ。
身体は少しだるいけど嬉しさと、司佐に触れられる嬉しさで瑛麻はかなり良い。司佐も楽しそうで、一緒に湯船に浸かりながら何となく接触が多い。
風呂は岩風呂の温泉だった。洗い場も広くて湯船も大きい。硫黄の匂いには慣れないけど全身を洗ってすっきりさっぱりだ。

「あ、夕日見えるんだ。すげー、都内じゃないよなここ」
「確かに。景色も全然違うしな」

何となく司佐に寄りかかりつつ外を眺めてみたり、触れてみたり。
この1ヶ月、離れていたのと話題の多さから話は尽きず、湯あたり寸前までたっぷり温泉を堪能すれば夕食の時間だ。

夕食は和室のテーブルに用意される。
襖を閉めて窓を全開にしておいてよかったと思うのはきっと2人ともで、配膳のおばさんが笑顔で世話を焼いてくれる。
料理の説明と食べ始めまでお世話してくれるらしく、少し進めばデザートの時間まで退出してくれる。

「豪華な飯だなあ・・・」
「すげえ純和食。名前知ってるのって白米とみそ汁だけだ」
「普段、洋食だもんな。俺ら」
「一応和食も食うけど、ここまで本格的ってないもんなあ」

これでもか!とテーブルに用意された食事に感心するより前に呆れて、笑ってしまった。
だって司佐の家は喫茶店。そして洋食と言うか昔ながらの喫茶店メニューのみ。
和食を知らない訳ではないが、旅館での本格的な料理となれば話は別。お互いにひとしきり笑ってから携帯電話で写真を撮ってしまうのは当然の事だと思う。

「どれ、食うか。んー・・・」
「イタダキマス・・・・刺身、苦手」
「冷てえの、変わった味すんな。瑛麻、無理すんな」
「司佐こそ、それ苦手だろ」

恐る恐る箸を付けて囓って、美味しいものは美味しいけど、そうじゃないのも若干、いや、結構ある。食べ慣れないのだ。
特に瑛麻は生ものが苦手で、和麻も同じ。
司佐は好き嫌いなないものの食べ慣れない味に微妙な顔をする。
綺麗で美味しそうな料理だとは思うのだけれども、普段の食生活って大切だ。
きっと、これが学園の友人達だったら平気なのだろうと思う。アイツ等お坊ちゃんみたいだし。

「こう言う時は冷えたビールに限る。結構種類置いてあるな。地酒もいいし、地ビールか。よし、飲むか」

瑛麻は一応奮闘しているのものの、司佐は早々に諦めたらしい。酒に逃げるのが諦めた証拠だ。
バーで働く司佐はかなりの酒好きで強い。酔う事が滅多にないらしく瑛麻から見れば手当たり次第に酒の注文に走った。
大人はいいよなあ、酒でごまかせるんだから。なんて気持ちで司佐を見ていたら刺身を引き取ってくれたので引き下がっておく。それと。

「少しだけだからな。和麻にはナイショな」

運ばれてきた酒を少し分けてくれた。未成年だから当然ながら駄目だけど一口だけ。と、司佐のグラスを渡されて舐める様に味わってみる。飲んだ事がないとは言わないけど、こう言う酒ははじめてだ。

「うーん、俺にはよく分かんねえ。甘い、のか?」
「甘い、が分かるんだからイイ方だぜ」

そんなものなのか。まだ瑛麻には早い世界だ。
特に興味もないので司佐が機嫌良く飲むのを眺めつつ、見知らぬ料理達と格闘しつつ、一口だからと全種類の酒を舐めてみたりして。


気づけばとても気持ち良くなっていた。

「アイスうまい。冷たい」

ほんのりと目尻と頬を染めた瑛麻がデザートであるアイスを食べつつ満面の笑みを浮かべる。
心の底から楽しそうな表情にデザートを運んできてくれたおばさんも微笑ましく笑って、手早く食器を片付けつつ司佐と世間話をする。おばさんは食器を片付ければ朝食まで部屋にはこない。

「俺のも食っていいぞ」
「いいのか?ありがと、司佐」

デザートの器はそのままでも良く、気になるのならばここで食べて片付けてもらうか、外に出して連絡すれば取りに来てくれるとの事だ。
この状態の瑛麻をあまり他人様の前に出しておくのも忍びないと思ったのか、デザートの器はそのままにしておくことになって。

「イイ顔してんなー・・・今、すげー気分良いだろ、お前」
「ん、なんか気持ちイイ。暖かい感じ?」
「だろうな」

にこにこしながら何となく幼くなった瑛麻を前に司佐が苦笑する。飲ませた訳ではないけど、全種類だからそれなりに酔ったのだろう。
瑛麻もはじめての酔っ払い気分だけど、司佐から見てもはじめての瑛麻だ。

「司佐は、イイ気分?」
「そうだなあ。イイ気分だぜ」
「へへ、嬉しいな」

アイスを食べ終えた瑛麻が嬉しい気持ちで素直に笑んで、司佐の方にじりじりと膝で近寄る。割と気持ちは普通で、ただただ楽しいだけ。
司佐も笑みを浮かべているから同じ気持ちなのだろうと、普段の瑛麻じゃ絶対に有り得ない思考回路で抱きつく。

「身体もあったけえのな。こら、囓るんじゃねえよ」
「囓ってねえ。キスしてる」
「あのなあ、キスってのは・・・」

形の良い頭を抱きしめて口付けしたつもりの瑛麻を軽く睨んだ司佐が少し考える仕草をする。それから指先で瑛麻の唇に触れる。

「酔っ払い、このままヤって後で泣くなよ」

酔っ払っている瑛麻を心配してくれたみたいだ。
気分はとても良い、この状態が酔っ払いなのだろうかと司佐の言葉でやっと自覚の出た瑛麻だけど当然ながら断らない。
何のための遠出でデートだと思ってるんだ。目の前に司佐がいて触れられるなら、しても良いのならば止めるはずがない。

「しない。もっと司佐に触りたい」
「あっと言う間に正気に戻ったな。だったらベッドだ」

夢みたいだ。しっかりした台詞を吐いた瑛麻が思う事じゃないかもしれないけど、今までの関係を思えば思う程、夢の中にいるみたいだ。
立ち上がった司佐に手を引かれて、寝室に入って暗い中で浴衣を脱いで。最初から全裸になると思ったら今度は帯を外す前に止められて座る様に促される。
さっきぐちゃぐちゃにして軽く片付けただけのベッドに座れば背に寄りかかる様に位置を直される。

「夜は長いし、さっきもヤったし、今度は違う感じで、な」
「違う感じ?」

にんまりと笑んだ司佐がベッドサイドの灯りをつけた。眩しくはないけど、暖かい色の証明は司佐を怪しく、普段よりさらに恰好良く見せる。
胸元がはだけた浴衣だけでもドキドキするのに目の毒で。ではなくて、さっきヤったけど、違うって何だろうか。期待と少しの不安に司佐から目を離せないでいたら浴衣の裾を捲られて、足に触られた。
細い足を持ち上げられて体勢がぐらつくが背中は固定しているから倒れる事もない。

「そう、扱くのもイイけど、これもイイと思うぜ」

持ち上げた瑛麻の足の、ふくらはぎに口付けられて甘噛みされる。足なのに、なんて思って動こうとすれば止められて舐められる。
ねっとりと、瑛麻から視線を逸らさずに舐められる所をしっかりと見てしまって、足なのに心がざわつく。

「ちょ、つ、つか、さ・・・?」

はだけた浴衣を気にするより司佐の行動が気になって目が離せない。そうこうしている内に足はベッドに降ろされて、口付けはそのまま太股に上がってくる。跡は残らないけど感触ははっきりと、弱い所ばかりを狙ってしているみたいだ。
性感帯は意外な所にもあると、経験のない瑛麻が思い知るのは太股の内側を甘噛みされた時。思わず声が出て両手で押さえれば起き上がった司佐に止められる。

「驚いたか?」

既に荒くなってきている息を隠せずに視線を逸らせば首筋に口付けされて身体が反応する。いや、足への口付けで既に反応していたから今更だけど。

「誰にも聞こえねえから我慢すんなよ」

視線を逸らしたままの瑛麻を特に指摘せずに今度は上からじわりと攻められる。
耳朶を、そのまま下がって鎖骨のあたりから胸元、乳首を丹念に弄られて性器の周りを手で触れられる。

「っふ、んんっ・・・・や、やぁ」

与えられるのは間違いなく気持ち良さ。でも刺激が弱くてじわじわと犯される。





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