司佐の家、と言っても瑛麻の住んでいた家と全く同じ造りで離れていたのも一週間と少しだけ。なのに家に入ったらほっと気持が緩んで少しだけ泣きたい気持になった。
司佐に運ばれたままリビングのソファに下ろされて隣に司佐が座る。
「おかえり、瑛麻」
「ん。ただいま」
そのまま抱き寄せられて司佐に寄りかかる。おかえり。と言ってくれて本格的に気持が緩んでうっかり涙目になってしまった。そんな瑛麻の気持ちなんて全て司佐にはお見通しなのだろう。慰める様に背中をさすられるからぎゅっと抱きつく。司佐の匂いがして落ち着けるのと同時にじんわりと熱も上がる。
「まあ帰ってきたしな。瑛麻、顔上げろ」
「ん?」
素直に顔を上げれば頬を司佐の手で包まれて、キスされた。そう言えば車の中でごねたのは瑛麻だ。唇に触れる感触に嬉しくなって両手を司佐の首に回してキスを続ければぐるりと口内を探られて身体が震える。けれど直ぐにキスは終わって司佐が離れようとするから今度は瑛麻から。
「もっと・・・」
自然と声に色がついて司佐がくすりと笑んでキスを続けてくれた。
何度も、とはいかないけれど、ソファに押し倒されて続けられるキスに瑛麻はちょっぴり期待する。あまりこの手の事には積極的じゃない司佐に押し倒されたのだ。ひょっとしたらこのまま。と思ったら本当に進んだ!
キスされながら司佐の手が瑛麻の服にかかって、前あきのパーカーをするりと脱がされる。
「ん、司佐・・・」
これはひょっとしたら続けてくれるのかもしれない。司佐の気持ちは分からないけど、期待しても良いのだろうか。
驚きながらも司佐の唇が離れてそのまま首筋を舐められて、するりとパーカーの下に着ていたTシャツを捲り上げられ。
「さて、説明してもらおうか、この有様を。なあ瑛麻?」
とても怖い声がしたと同時に司佐の手が瑛麻の腹辺りに貼られている絆創膏を突く。そうだ。今の瑛麻は昨日の乱闘で割りとボロボロであちこちに打撲の痣とか絆創膏とかがあって。
「つ、司佐・・・?」
「随分とひでぇじゃねえかこれ。なんだこの絆創膏は、切り傷か?いったい何があったんだ」
瑛麻の身体を見るのが目的だったのか。ソファに押し倒されて、上には司佐が乗っかっているから逃げられず、なのにキスで高揚した身体は司佐に突かれるだけで反応しそうで・・・酷い。
「ずりぃよ司佐。キスの続きは?」
「俺だって久々の瑛麻とのキスだから、ちょっと進んでもなんて思っちまったけどなあ、お前、まだ身体辛いだろうがこれじゃ」
「辛くないしかすり傷だから、続き!」
上から睨み下ろされて、瑛麻も下から睨み上げつつ両手を出せばちゃんと握ってくれるけど司佐の表情は冴えない。
恋人だと、そう言ってくれても行為はキスから進んでくれなくていっつもここで終わりだ。これじゃ生殺しじゃないか。
「そうだな。ここで終わるってのも俺も辛いし、入学祝いか?」
何だそれは。首を傾げれば司佐はにやあ、と。
とてもよろしくない笑みを浮かべた。怖い。
「つ、司佐・・・?」
「言ったよな、瑛麻。心配したって。そんで、お前はいっつも俺の心配をぶっちぎってボロになってきやがって」
おおおお怒ってる!
ようやく気づいた、と言うか忘れてた。司佐は怒ってて、珍しくすごーく怒ってて、瑛麻は絶体絶命で。
「最後まではまだやらんが、良い機会だ。ちっとは泣いて反省しろや」
「!!!」
それからはもう、司佐の独擅場だった。
何の経験値もない瑛麻が、そもそも全てにおいて司佐に負けている瑛麻が勝てる訳なんかない。文字通り、泣いて謝って反省する他なくて。
「ほらどうした、声が出てねえぞ、瑛麻」
「も、喉痛い・・・」
リビングから場所を移して司佐の部屋。ベッドの上でそれはもう散々な目にあった。
ぺろっと服を剥がれて弄られて、なのに焦らされて何度泣いただろうか。
今だってベッドに転がって散々イかされた身体は動かず、なのに司佐は涼しい顔で瑛麻のものを握って意地悪をする。
最後まではやらないと言った言葉通り、弄られたのは前だけで瑛麻ばかりが反応してしまう。司佐のは一度だけ瑛麻の手でイっただけで、この差は何なんだと泣きたい。
ああもう、恥も外聞もなく泣き叫びたい。こんなの酷すぎると。
なのに身体は正直で、司佐に触れられれば反応するし、もっと触れてほしいと思ってしまう。酷い扱いだと思うのにやっと触れてもらえて嬉しくて止まらなくて。
「じゃあもう一回で終わりだな。瑛麻、そんな顔すんな」
「だって・・・」
汗ばんだ髪を司佐の手がかき上げてくれる。仕草は優しいのに愛を囁く言葉はなく、やっぱり瑛麻の一方的な想いだと思ってしまう。
泣きすぎて頭は痛いし散々喘いで声を出す事を強要されて喉も痛いし実はあちこち痛いままの身体だって悲鳴を上げているのに、終わりたくない。
じっと司佐を見つめればキスされた。そのまま司佐の手が瑛麻を弄って、散々弄られてもう痛いのに身体は素直に反応してびくびくと震える。
口を塞がれたままだから苦しくてもがくのに、それすら司佐にはつたない抵抗なのだろう。
まあ、本気での抵抗なんて考えもしない瑛麻の動きだから仕方がないけれど、追い詰められて吐き出すものもないままにイかされて、また泣いた。