太陽のカケラ...34



さて、改めて言うが私服で通学可、授業もそのままとなればそれはもう沢山の衣装がうろちょろする事になる。
クラス内で一番多いのは瑛麻の様な私服だろうか。うん、ほっとした。

それから各運動部のユニフォームに胴着、エプロンに白衣。
よく見なくてもクラスに着ぐるみが2人もいてがっくりしてみたり、ふりふりのエプロンが3人もいて呆れてみたり、衣装を見ているだけで忙しい。
クラスから出ればさらにその人数は増え、聞きたくもない説明によると演劇部の、ファンタジーな衣装の一団も見てしまった。
コスプレかっての。

「しっかし白衣やエプロンは良いとして、胴着の連中、何でずーっと胴着なんだ?めんどくさくないのか、あれ」
「ああ、あれは朝練から直接来てるからだよ。他の人達は面倒だからそのまま、もう皮膚になってるんじゃないかって馴染みっぷりだけどね」

午前中の授業を終えて昼休みの食堂。
うんざりを辺りを眺める瑛麻にナオが丁寧に説明してくれる。それで納得した。

「ナオの白衣も皮膚か」
「そう。慣れちゃってるからね」

さらっと返答されたら瑛麻の方がリアクションに困るじゃないか。
何とも言えない顔で箸で抓んだままのサバの味噌煮を止めれば隣から和麻があーん、と焼き肉を口に突っ込んでくれる。
無意識に味付けの濃い焼き肉を頬張れば周りから生暖かい笑顔で見られた。

今日も、もう既にいつもの、と言えるメンバーだ。
同じクラスのカオル、遊佐、サチに白衣姿のナオと、連れられてきた友秋に勝手にくっついてきた篤斗。
和麻は当然の様に瑛麻の隣でいないのは会長くらいか。

「ちなみに、ナオは化学部でボクは空手と柔道、カオルと遊佐は料理しないのに味見だけで調理部で兄さんが弓道部だよ。トモちゃんは帰宅部で篤斗はもう知ってるよね」

細い身体に大盛りカツ丼と大盛り焼き肉丼をさらっと食べたサチがデザートの大盛りアイスを前に説明してくれる。
しかしサチの説明だと掛け持ちができるのか。そして調理部とはなかなか美味しそうじゃないか。
そんな瑛麻の表情をしっかりと感じ取ったのか、今度はカオルが遊佐と一緒に巨大な特盛り杏仁豆腐を突きながら瑛麻にも一口勧めてくる。

「勉強、スポーツ、要するに特待になってる理由を損ねなきゃ掛け持ちオッケーだぜ。何せ山の中で娯楽なんかないしな。んで、俺と遊佐は旨いモンが食いたいから調理部な。瑛麻もどうだ?それと、部活動は中高一緒だから和麻も一緒にできるぜ」

杏仁豆腐を食べながらそうかと頷いて、最後の言葉に瑛麻と和麻の顔がぱあっと輝く。
そうか、部活は中高一緒なのか。プラス旨いモン食い放題!

「食い放題に和麻と一緒かあ」
「部活、一緒だったらもっと一緒にいられるよねえ」

兄弟揃ってぱあっとお花が出そうな笑顔だ。和麻と視線を合わせてふにゃりと笑んで頷き合えばどうしても弟が可愛くて抱きしめたくなるじゃないか。
ぎゅうっと和麻に抱き付けば同じ力で抱きしめられて沸いたお花がお花畑になる。

「一応な、食べ放題じゃないからな?それと食堂でお花畑を作らないでくれると嬉しいんだけど、なあ、瑛麻、和麻、聞いてる?」
「無理だよカオル。完全に二人だけの世界に入ってるもん。ほんっとラブラブだよねえ、瑛麻君兄弟は」

カオルとサチが呆れながら何か言っているが瑛麻には聞こえない。
いいじゃないかラブラブだって。こんなに可愛い弟を抱きしめなければ兄じゃない!

「全く。いっそ清々しいな、ラブラブ過ぎて」

和麻と抱き合って食堂の視線を独り占めしていたら知ってる声が頭上から降ってきた。

「兄さんだ♪」
「こらサチ、抱き付くフリしてシメにかかるんじゃない」

会長だ。どうりで周りが騒がしいなあとは一応思っていた。
瑛麻達のマネをしようと会長に抱き付いたサチが、どうやらフリで会長をシメようとしてどかされている。
こっちの兄弟も殺気立っているがある意味仲良しだ。
そして、会長の隣にもう一人。



back...next