太陽のカケラ...33



ホームルームも終わり、カオルと遊佐に笑われながらサチにも笑われつつ微妙な気持の瑛麻だ。

「ったく、馬鹿みたいに笑いやがって。んで、何で農業実習なんだよ」

そもそも普通高校だろうがと言う瑛麻に周りはにやにやするだけだ。

「この学園、野郎ばっかで体力余ってるだろ。んで、発散する場所もないしで結構昔からやってるんだよ。体力使わせて大人しくさせようって訳。んで、地元組が目立つのはこの実習のお陰なんだよ」
「あ?話しが繋がらねえぞ」

何がどうしてそうなるんだ。
サチに背中からのしかかれつつ椅子の背に顎を乗せればすっかりサチに懐かれたとまた笑われて。

「ふふーん、瑛麻。この学園に美味しくて新鮮な食事を納入しているのはどこの誰だと思うかな?都市部からも納入はあるけど、村の米野菜肉に敵う食材ってなかなかないんだよねー」
「・・・そりゃナニか、自分で食う分の飯は自分で確保しろって事か?」
「高校生にそんな無体な事言いません。だた俺らの家が実習で使われるってのと、じーさま達が最強だってのと、万が一地元組が学園で苛められたら絶食だって事くらい?」
「何だそりゃ」

いろいろとよく分からない話だ。
一人で理解できない瑛麻にサチが頭の後ろから教えてくれる。固いのに、ついさっき暴れたのに、ふわんと甘い匂いがして微妙な気持だ。

「恐怖を忘れた頃にあるんだって。地元組の人がトモちゃんみたいな事になっちゃってね。それで、怒った村の人達が学園の食料ぜーんぶ搬入してくれなくなっちゃって。ホントなら権力とかでどうこうできたんだろうけど、あの人達変な人脈があって、本当に一ヶ月間も食料がなくなっちゃったの。大変だったみたいだよ」

それは何とも恐ろしい事だ。と言うか、それを実行できる力が恐ろしい。

「あんま聞きたくないんだけどよ、それ、結局どうなったんだ?」

返事はなく、サチの顔色が悪くなった!ど、どんなんだったんだ。そう思えば瑛麻の顔だって青くなる。
カオルと遊佐はにやにやしているだけで答えてくれそうにはない。

「結局、虐めた生徒全員が退学、もしくは転校だったって話だよ。しかも一学年分くらいの人数がね。で、前は7年前だって。全く、地元組だけじゃなくて普通の生徒にも適応してくれればスッキリするのにね」

こんな時に頼りになるのは説明の上手なナオだ。
休み時間で移動してきたのか、隣に友秋を連れてクラスに入ってきた。
ナオと友秋の登場に若干クラスがざわめくが、他にもあまり見ない様にしていた運動部のユニフォームやら白衣やらがうろちょろしているのでざわめきも大きくない。
ナオはカオル席の机の上に、友秋は瑛麻の隣に申し訳なさそうに立った。

「ナオ、サンキュ。確かに地元組だけじゃなくて一般適用されりゃ話は早いのにな。友秋、教室は大丈夫そうか?」

居心地の悪そうな友秋にカオルが自分の椅子を譲って、遊佐の机の上に乗っかっている。
勧められるまま、と言うよりは無理矢理椅子に座らされた友秋は申し訳なさそうに、でも嬉しそうににこっと瑛麻に笑いかける。

「そんな心配しなくても大丈夫だよ。人が多い所は怖いけど、クラスは平気だよ。ありがとうね、瑛麻君」

ふんわりと微笑む友秋は篤斗じゃなくても可愛いと思う。
うんうんと満足そうに頷けば背中にのしかかったままのサチがにやにやと笑う。

「瑛麻君、トモちゃんの彼氏みたいだね」

おまけにぎゅうっと首に抱き付かれて大変痛い。
見かけは美少女でも中身は狂犬で、絶対腕力その他、瑛麻よりも力強い。
ナオとカオルは机の上に座ってやっぱりにやついていて、遊佐も以下同文。
そんな周りをぐるりと見て思うのはとても正直な気持ちだ。

「この中で間違いなく友秋が一番良いヤツじゃねえか」
「うわ、言い切ったよ。反論できないのがまた悔しいぜ」
「カオル、そこは何としても反論しようよね、サチも唸らないの」
「だって反対できないもん」

さらりと瑛麻が言い切れば一斉に項垂れる周りに気分よくからからと笑う。
引き続き申し訳なさそうな友秋も照れた風に少しだけ笑って、結局は笑いの絶えない休み時間のまま肝心の校外学習の中身を聞きそびれた瑛麻だった。



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