太陽のカケラ...29



朝食を終えて登校してみればやっぱりカオスだった。

私服の幅が広すぎるのだ。
運動部の衣装に理系、文系の衣装。要するに白衣やエプロン。
プラス今月中は人口の増えている着ぐるみ達。瑛麻の様な私服は少数らしい。

寮の出口でサチとナオ、2人と待ち合わせもなく合流してのんびりと桜並木を歩きながら、学生らしい雰囲気が少なすぎると少々呆れ気味の瑛麻だ。
一緒に歩くメンバーで普通の私服なのは瑛麻と和麻、それに友秋だけだ。いったいどうなっているんだろうここは。

「ボクも私服だってば!」
「お前のそれは着ぐるみと見分けがつかん。何だ、昨日はうさ耳パジャマで今日はねこ耳パーカーか?」
「可愛いでしょ~♪」
「はいはい、可愛い可愛い」

今日のサチも可愛い。確かに可愛い。
全体的にピンク色でねこ耳パーカーを頭から被っている上に半ズボン。狙っているのだろうか(何を)。
しかしナニはでかいクセにすね毛がない。剃っている様子でもないので体質なのか。恐ろしい事だ。

「僕も私服だからね。そんな変な物を見る目で見ないでよ」

ナオも確かに私服だが、ナオの場合は制服より私服の方がきっちりとして見えるので私服扱いにするのもあれだろう。
マオカラーのシャツにスラックス、プラス眼鏡。高校一年生と言うのが嘘の様だ。

「それじゃ兄ちゃん、僕は向こうだから行くね」
「おう、気張ってこい」

途中で和麻と別れ、高等部の校舎に着けば入り口の方からダッシュで2人が駆けてきた。
カオルと遊佐だ。

「おっはよー!やっぱ私服が落ち着くよな。瑛麻、寮はどうだった?」
「おっす。瑛麻は普通の私服だな。サチ、ねこ耳なら黒の方が可愛いぜ」

一気に賑やかさが増した。
カオルの私服は瑛麻と同じ様なもので、Tシャツにジーンズ。髪をピンで止めていてピアスを見えやすい様にしている。
遊佐はまだ4月だと言うのに半袖にジーンズ、サンダル。元気過ぎる。

「寮は、あれだ、異世界だったぜ。お前らの私服は普通なんだな」

ちょっとほっとする瑛麻に2人が声を上げて笑って、友秋と篤斗を見て首を傾げる。

「あっれ、トモじゃん。一緒なの珍しいな」
「友秋は俺の同室。お前らも知り合いなのな」
「そりゃー知らない生徒の方が少ないって話し。そっか、良かったな、瑛麻も友秋も」

にこにこと笑うカオルに遊佐も頷いている。
朝一番でこの輝く笑顔。やはり何かが違うと思わせる2人だ。

結局、カオルと遊佐も加わって大人数で教室まで歩いていればやっぱり視線を集めている。
サチ、カオル、遊佐が多く、ナオや篤斗にも注目が集まっている。そして。

「今度は違う人に取り入るのかな?」
「あんな地味な子、どうしているんだろうね」

友秋に向けられる嫌な視線とひそひそ声。
男子校なんだからもうちょっと野太く喋れと思う瑛麻はちょっとずれているかもしれないが、篤斗が無言で威嚇している。

「篤斗、それ逆効果だから。守るならもちっと分かり易く、盛大にな」
「そうそう。あんな細っこいのなんか吹っ飛ばせば一回で終わるぜ」

そんな篤斗に何気に酷い事を言っているのがカオルと遊佐だ。
意外と武闘派なのかもしれない。はっきりと不機嫌だと顔に出す2人に陰口も止む。

「ごめんね。カオル君、遊佐君」

分かり易い態度にすっきりしたのは瑛麻で、友秋は申し訳なさそうにしている。
非はないのに気の毒な事で、確かに篤斗では状況を悪化させるだけで抑止力にはならなそうだ。

「しょうがねえなあ。ナオ、クラス一緒なんだろ。良いか?」
「瑛麻君、僕を見くびらないでほしいね。トモ君、行くよ。駄犬は指銜えて大人しくしててね」

どうしても駄犬扱いか。
さらっと酷い事を吐いたナオが友秋の手を引っ張って自分のクラスに向かっていく。
SSクラスは一番端。逆の端がS1で篤斗のクラスになる。瑛麻達は真ん中だ。

「ほら、さっさと教室に行くの。指銜えてたってしょうがないでしょ。悔しかったらSSになれる様に努力する事。ね、駄犬♪」

サチにトドメを刺された。
流石に気の毒だが瑛麻が口を出せる雰囲気でもないし、カオルと遊佐も口を出さないが同意見だと頷いている。
ひょっとして、このメンバーだと篤斗の方が嫌われているのだろうか。

「だって守るって大口叩いて守れてねえし。サチ達に駄犬扱いされるだけの単純っぷりだし。自業自得だよな。トモも気の毒に」
「俺らと一緒にいる分には被害はないんだが遠慮しちまってな。それに篤斗も良い顔をしないんで悪循環。だからサチに殴られるんだぜ」

嫌われていると言うより著しく評価が低い、と言うべきか。
しかし極端な事だ。こっちでは篤斗が苛められて、あっちでは友秋が苛められて、とは。

「何だかなあ。面倒だから片っ端からぶっ飛ばせば良いんじゃねえの?」
「それはサチの専売特許。性格的にトモじゃ無理っしょ」

それもそうだ。妙に納得すればサチに背中を叩かれつつ(痛い)教室へ入ったのだが。



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