爽やかな朝。
だと思いたいけど、思えない。
早めに寝たはずなのに、どうも疲れが取れないまま目が覚めてしまった瑛麻は大欠伸をしながらごろんとベッドの中で転がった。
眠い。疲れた。眠い。起きたくない!
「いや、起きようよ、兄ちゃん。遅刻しちゃうよ?」
幻聴まで聞こえてきた。何で和麻がいるんだ。
いや、昨日の全部が夢で、ここはアパートか。だったらどんなに嬉しい事か・・・。いや違う。
「・・・何で和麻がいるんだ?」
しょうがないので目を開けた。
ぱちっと目を覚ました瑛麻に和麻が床に座って、ベッドに肘をついてのんびりと兄を見つめてにこにこしている。
「迎えに来たんだよ。どうせ起きないだろうと思って」
「そうか・・・じゃあ起きるか」
「うん。おはよう、兄ちゃん」
「おはよう、和麻」
弟に起こされては仕方がない。うーんと伸びて、寝る前に脱いだパーカーを羽織りながら部屋を出ればもう友秋は起きていて準備も終わっている様だ。
そして、部屋の主っぽくソファを陣取る篤斗もいる。剣道着なのは部活だからだろうか。
「良かった、起きたんだね。おはよう瑛麻君」
「おっす。弟のがデカイのな」
「おはよ、二人とも。篤斗うっさいよ。てか、剣道着で行くのか?」
「部活で着る服は私服扱いだ」
「・・・そうか」
嫌な予感しかしない。
げんなりしながら洗面所に向かえば友秋が自炊で朝食を用意してくれると言う。
何だろう、可愛いお嫁さんを貰った気分だ。
「半分は和麻君が手伝ってくれたんだよ。僕より上手なんだもん、びっくりしたよ」
そりゃ兄弟2人で生きてきたからだ。
実は和麻より瑛麻の方が上手だったりするのだが、今は言わなくても良いだろう。
にしても、料理を手伝っていたと言う事は和麻は何時に来たのやら。
「そういや中等部から来ても良いのか?」
基本的に出入り禁止だったはずだ。
何でも高等部、主に会長達等の目立つ奴らを追っかける中等部の生徒も多いとの事で禁止されたのだとナオに教えてもらったのだが。
「兄弟のいる人は良いんだって。お泊まりは駄目だけど」
「そっか、残念。じゃあ俺が中等部の寮に行っても良いのか」
「そう言う事になるね。実際兄弟で出入りしてる人は多いよ。何だかんだで兄弟揃って入学する人も多いから」
すっかり忘れていたがここは超エリート校だったはずだ。
そりゃ兄弟揃っても多いだろうし、良家の子息も多いとは聞いていたのだが、生憎と昨日のカオスっぷりを見ている瑛麻としてはイマイチ頷けない。
歯ブラシを口に突っ込みながらテレビを見つつ用意をして、着替えが終わった頃に丁度朝食もできあがっていた。
今日も昨日と同じ様な格好だ。
いろいろアレな学園だけど、私服で良いと言う所は素晴らしい。
「さんきゅ、友秋、和麻。んで、篤斗は料理できねえの?」
「のんびり寝ぼけてたお前に言われる筋合いはない。が、俺は不器用なんだよ。朝から血まみれの俺を見たいのか?」
胸を張って言う事でもないのだが、友秋を見れば本当らしい。
テーブルを囲んで4人。ソファに座るとテーブルとの差が大きいので床に直接座っていただきます。
食事は和食が中心。最初に口をつけるのは味噌汁。そう決めている瑛麻がずずっとほうれん草とあげの味噌汁を啜ってにっこりと、とても幸せそうな笑みを浮かべる。
「味噌汁旨い。和麻、腕上げたな」
「・・・聞きもしないのに和麻君作って分かるのが怖いよ、瑛麻君」