太陽のカケラ...18



会長兄弟にナオ、いつの間にやらカオルと遊佐までいる。

「原口サンのお茶美味しいし」
「お菓子目当てだもん♪」「デザートを頂きに」
「休憩がてらに」
「まだ何の説明もしてないじゃない」

カオル、サチと遊佐、会長、ナオの順でにっこりと瑛麻を見上げてくる。
それぞれ違う整い方をしてるから揃えば妙な迫力までついてくる。しかし瑛麻の為を思って座っているのがナオ一人と言うのがまた悲しい。

「まあまあ、皆の分もあるからゆっくりしていってね」

目尻の皺をきゅっとさせて微笑む原口さんがとても良い大人だ。
緑茶をとぽとぽと注いで、瑛麻も座ればようやっと一息つけた。日本人はやっぱり緑茶だろう。

「はい、瑛麻君。これがIDカード。食堂や購買で使うから管理には気をつけてね。クレジットになっていて、使った分は翌月保護者の方に請求書が行くからね。それで、これが部屋の鍵。カードキーになっているからIDカードと一緒にしておくと良いね。教科書は明日、美里先生の所で受け取る様にとの伝言だよ」

はーっと一息吐けば原口さんがカードを取り出してテーブルに並べる。
白いカードがIDカードで瑛麻の名前が入っている。カードキーは緑色で、2枚一緒に入れる首から提げるカードケースも一緒だ。

「だいたい皆これ使ってるよ。無くさないのが一番だし。万が一紛失したら反省文とお金がかかっちゃうからね」

ナオが隣から説明してくれるのを聞きながらカードケースに入れて首から下げてみた。
そう言えば皆何かしら首から下げていると思ったらこれだったのか。

「部屋はさっきも言った通り312号室だね。誰か後で案内してあげてね。それから、これが寮生活案内の冊子だよ。大まかな規則と言うよりは使い方だね。共用施設は一階の大浴場に娯楽室に購買と会議室がいくつか、それと屋上があるね」

今度は分厚い冊子を取り出した。どこから取り出したんだろう。不思議だ。

「風呂はおっきい方が良いからな。俺らも良く行くし」
「お風呂は部屋にもあるけどね。娯楽室は小さい図書館と机。後は大きいモニタが1台。みんなで騒ぐ部屋だね。購買は寮のコンビニみたいなものかな。何でも揃ってるから便利だよ。寮の他にも学校にあるよ」
「屋上は洗濯干し場だ。広いから気持良いぞ。だからって野球、サッカー、バスケ、バレーにテニス、弓道は禁止だからな」

皆で口を出してくれる。そんなに難しい説明ではない様で、これなら直ぐに覚えられそうだ。
その他にも、部屋は2人部屋が基本でまれに人数の関係で1人になる部屋があり、生活に必用な設備は概ね整っている。自炊も出来るとの事だ。

「はー。何かすげえないろいろと」

今まで小さくはないが、広くもないアパート暮らしだった瑛麻にとってはいろいろと異世界だ。いっそファンタジーだ。
分厚い冊子の1枚目だけをぺらっと捲って直ぐに戻す。

「全部読まなくても大丈夫だよ。みんな説明してくれるし、実践で覚えればいいし。ボクも教えてあげる」
「お前は規則破りの常習犯だろ、サチ。頼むから1年の時くらい大人しくしていてくれ」
「えー」

お菓子を食べ終えたらしいサチが後ろからのしかかってきて、会長に結構強く頭をべしっと叩かれている。
視線でサチを追えばお菓子がきれいさっぱりなくっていた。どれだけ食うんだ、この小さいのは。

「サチ、茶菓子全部食うなよー!結構あったぞ」
「だって成長期だもん♪それに食べたのボクより遊佐の方が多いし」
「うえ!?サチも結構食ってたろ!」

呆れて眺めていれば食べ損ねたカオルが騒いで、遊佐まで巻き込まれている。
そんな3人に原口さんがゆっくりと立ち上がってポットを持ち上げた。

「まあまあ、追加してあげるから。私からの説明はこんな感じかな。もうお友達もいる様だし、分からない事は彼らに聞けば大丈夫だし、その辺の人でも案内の人でも大丈夫だよ。さて、お茶とお菓子を追加しようか」
「ありがとうございます。いっつもこんな感じ?」
「男の子は賑やかで楽しいねえ」

いつもこんな感じか。



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