太陽のカケラ...17



「はい、院乃都君。自己紹介よろしく♪」
「はぁ!?」
「最初に言っちゃった方が後で個別に自己紹介しなくて楽でしょ?」

こてん、と首を傾げる高塚が可愛い。
分かっていてもこれはぐらっとくる!ではなくて、メガホンを手渡されてしまった瑛麻が眉間に皺を寄せるけど、見惚れた身ではもう文句を言っても遅い。
周りも瑛麻の言葉を待っている様で、興味津々な視線がざくざくと突き刺さって痛い。
仕方がない。腹を括ってメガホンをかまえる。

「あー。院乃都瑛麻だ。って言っても親が離婚して院乃都になってまだ一ヶ月経ってないから俺を呼ぶなら瑛麻でよろしく。こんなんで良いか?」

自己紹介と言われても困る瑛麻だ。
名前だけを告げればロビーが名前にざわつき、内容にざわつくが特に目立って騒ぐヤツはいない。

「もう、そんな普通な自己紹介じゃつまらないじゃん!」

高塚はぷくーっと頬を膨らませているが自己紹介なんてこんなものだろう。
しらっとメガホンを高塚に渡そうとすれば反対側から奪われた。
驚いて隣を見れば会長がにやっと笑みを浮かべて隣に立っている。いつの間に。

「一応俺からも。寮長じゃないが学園生活全般は生徒会、もしくは風紀会に要相談な。一応説明するが、生徒会は白に金ラインの腕章、風紀会は学園警備が黒、案内が黄色、規則規定違反巡回が赤。纏める風紀幹部が白に黒ライン。面倒だからってパジャマで寮から出たらオシオキ。校庭10週と一ヶ月間の掃除だ。楽しみにしていてくれ」

また歓声が上がる。流石人気者、喋りも旨いしユーモアもある。何より度量の広さを感じさせる何かがあってこれじゃあ歓声も仕方がないなと思う。
近くて見上げれば凄みのある美形でもあるし、非の打ち所のない人だ。

「かいちょー、どこからどこまでがパジャマ判定ですかー!」
「俺らがパジャマだと思ったらパジャマだ。オシオキがイヤならその場で説得して私服だと認めさせろ。着ぐるみは5年前に私服扱いになってるからパジャマじゃないが浴衣は論議中。水着はパジャマ扱いになるからな」
「ネグリジェはー?」
「野郎がそんなん着てたら即刻ペナルティだ。可愛い子だったら考えるが、スケスケだったらパジャマだからな」

どんな基準だ。
机の上とロビーで楽しそうなのは何よりだが、会話の内容がイヤだ。
げんなりしていれば高塚が会長からメガホンを奪って、ようやく机の上から降りられた。
瑛麻はそのまま降りたけど、会長は高塚に蹴り落とされている。

「それじゃあこれで挨拶終了!聞いてくれてありがとね!後は好きにして良いよー」

終了と同時にばらばらとロビーから人が消えて、本来の姿が見えてきた。
高等部のほぼ全員を収容するロビーはやっぱり広くて、しかも高級ホテルみたいな立派な造りだ。
それぞれ自分の座った椅子やテーブルをある程度片付けていく様はなかなか躾が行き届いている。

「毎年賑やかだねえ。院乃都君、じゃなくて、瑛麻君の方が良いかな?こっちへどうぞ、今お茶を入れようね」
「苗字だと変わったばっかなんで。あ、手伝いますよ」
「ふふ、私の前でそんな畏まらなくても良いよ。みんな普通に接してくれるしね」

人が少なくなったロビーは閑散としていて、こっちの方が瑛麻としては落ち着ける。
原口さんに案内されたのはソファ席の一つで、テーブルと高級そうなソファ、それにお茶を入れに行く原口さん。
何か落ち着く。

いそいそと原口さんに付いていってカウンターの奧からお茶セットと茶菓子を持って来たのだが。

「何でお前らが待ってんだよ」

座る予定のソファ席にはちゃっかり待ちかまえている奴らがいる。



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