太陽のカケラ...15



全校生徒、男ばっかり約1000人。
それが一同に集まる食堂は人が多いと言うよりカオスと言った方が似合いそうだ。

何せ入学式が終わった瞬間に私服になる生徒が多い学園で、その上既に部活動も開始されているのだろう、あっちこっちユニフォームのヤツらがいるかと思えば、それはパンツ一丁じゃないのか、なヤツらもいる。ちらほら着ぐるみパジャマまで見えて、服装に関しても自由度が高そうだ。

「見れば見る程変な学校だよな。俺らがマジメに見えるぞ」
「兄ちゃん、金髪とかにしてみれば?綺麗だよ、きっと」
「後が面倒だからやらん。和麻こそピアスでも開けてみたらどうだ?」
「痛いからイヤ」

注目されつつ(未だに手は繋いだままだ。何か文句あんのか!)注目しつつ、注文の列に並びながら瑛麻は和食セット、和麻はトンカツ定食にする。
正直イヤな思いしかなかった学園生活だが、こうなるとちょっと楽しそうでわくわくする。面白いヤツらがいればいる程楽しくなるものだ。

「兄ちゃん、顔が輝いてるよ。楽しそうで良かった」
「そう言う和麻はどうなんだ?」
「頑張る」

人見知り、と言う訳ではないが今まではずっと兄にひっついていた弟だ。
離れて暮らすのもはじめてで、戸惑いも多いのだろう。
眉尻を情けなく下げる姿は甘ったれの可愛い弟だが意外と逞しくもあり腹黒いからその内何とかなるだろうとは思うけれど。

「和麻だ!おーい!今から飯か?」
「一緒に食べようよ!って、あれ?一緒に誰かいるよ」
「お兄さんじゃない?そっくりだもん。邪魔しちゃ悪いよ」

受け取ったトレイを持って歩いていたら中学生に囲まれた。
やたら縦にも横にも大きいのと小さいのが2人。小さい方は同じ顔が2つで、双子だろうか。
申し訳ないが、大きいのはどうみてもおっさんで、小さいのは小学生で、こりゃまた随分両極端で微笑ましい。

「兄ちゃん、同室のクマと隣の部屋の双子で、髪が白いのがリク、赤いのがクウだよ。こっちはボクの兄ちゃん。一緒にご飯食べるから、後で良い?」
「俺は瑛麻。高校1年だ。よろしくな」

友達らしい。しかしまた随分と目立つ、と言うか面白いメンツだ。
感心する瑛麻が挨拶すれば揃ってぴょこんと頭を下げてくるから可愛らしい。
けど、双子がこそこそと兄ちゃんの方が小さいなんて言ってるから軽く蹴っておく。
そうしたら小学生みたいな双子は手を取り合ってクマの後ろに隠れてしまった。

「・・・人の事はいえねえんだけど、まあ、頑張れや」
「兄ちゃんの方が派手だと思うから」
「否定できねえのがあれだなあ」

たらふく飯を食えば成長期の子供としては昼寝でもしたい所だが、まだまだ瑛麻に休む時間はない。
兄弟同士でおかずを分け合ったりあーん、なんてしてたらまた注目されてしまったがいつもの行為に何を注意すると言うのか。
仲良く兄弟で昼食を取って、終わった頃に和麻は友達に連れられて寮に戻った。これから寮で挨拶があるそうで。

「何他人事みたいに弟君に手を振ってるの。君もでしょ!」
「そういやそうか。まだ行ってないんだよな、寮。俺の部屋あんのかな」
「あるに決まってるでしょ。ほら、行くよ」

ナオに突っつかれつつ食堂から出る事になった。
カオルと遊佐は寮じゃないからと、山盛り持ってきたデザートにかぶりついている。よく食べる奴らだ。
よく食べると言えばサチもそうで、どこにあんな大量の食事が入るのか不思議でいっぱいだ。

「だって成長期だもん。兄さんみたいにおっきくなるんだもん」
「俺も1年の頃はサチくらいの身長だったからな」

連れだって寮に向かいながらこっちの兄弟もラブラブだ。
会長の腕にサチがぶら下がって離れない。見た目は大変可愛らしいのだが会長兄弟が歩くたびにざざっと人混みが別れて何だかなあな気持だ。



寮は食堂の隣ですぐ。入り口が繋がっている所と、寮の玄関はまた別との事だ。
瑛麻の為にわざわざ繋がっている入り口ではなく正面に向かってくれて寮に入ればここでも人の山だ。

「玄関がホールもかねてるからね。そこが寮監室で受付の人がいるんだよ。あ、原口さん、これ、院乃都です。部屋はどこですか?」
「こんにちは、ナオ君。ええと、院乃都君ね。まだ入寮してなかったから心配していたんだよ。部屋は三階の312号室だね。今から寮長さんの挨拶があるから、終わってからもう一度ここにおいで。鍵と、担任の先生からIDカードを預かってるからね」

寮監室は受付も兼ねている様だ。
ホテルの受付かと間違うカウンターには気のよさそうなじいさまがぴしっとしたスーツ姿で立っている。
ナオに連れられてカウンターによりかかればにっこりと皺だらけの顔で微笑まれた。

「すみません、いろいろあってこれなくて。後で来れば良いんですね」
「急がなくても大丈夫だよ。分からない事があったら私か、その辺にいる人に聞けば大丈夫。ようこそ、皇乃院学園へ。君の学園生活が良き者である様に願うよ」

どうしよう。やっと学園に来てから一番先生らしい人に会った!
と言っても原口さんは先生ではないが、でも一番教育者らしいじゃないか。

感動する瑛麻だが、ナオに腕を引っ張られてロビーの中に連れていかれる。



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