太陽のカケラ...13



理事長室を出て、手を繋いだままいそいそと外に出て、ようやく我慢していた声を出せた。思いっきりの、笑い声だ。

「あー楽しかった!」
「兄ちゃん笑い過ぎだよ。おかしいけど。あの変わり様ったら。馬鹿だよねえ」

歩きながら兄弟揃って腹黒い笑みが浮かんでしまう。
作戦を練った訳でもないけど、瑛麻と和麻はあうんの呼吸でいろいろな事ができてしまうのだ。

「まあいいんじゃねえの、ちゃんと理事長っぽいし教育者だし。あれならまず安心だろ。にしても、この分だと向かう親戚は敵ばっかだと思った方がいいみたいだな」
「そうだね。元々父さん馬鹿だし。経営手段はあるみたいだけど、あんまり良く思ってる人はいないんじゃないかなあ」
「だろうなあ。何だっけ、馬鹿が馬鹿やらかして親父召還なんだろ?そりゃ面白くないし、降って湧いた俺らだって面白くないはずだ」
「嫌だなあ。めんどくさいや。後で父さんと母さん苛めておこっと」
「思いっきりやってやれ」

歩く道は学校内だと言うのに見事な桜並木だ。
満開の桜の中、手を繋いで、知らない人から見れば大層ラブラブな姿でもある。

寮の場所は和麻が知っているだろうし、このまま散歩がてら桜並木を楽しむ事にした。
桜に罪はないし、綺麗なものは綺麗。機嫌良く歩く瑛麻に、和麻も兄を見ながら、けれど眉間に皺を寄せた。

「兄ちゃん。入試テスト、手を抜いたでしょ。何で中の上なの?クラスは?」

理事長の言葉を忘れていなかったからだ。
むう、と兄を見下ろす和麻にバレたとばかりに肩を竦める。

「何事も真ん中がいいんだよ。って事で俺はBクラスな。和馬はSSか?」
「そうだよ。普通に受けたのにびっくりしちゃった。僕も真ん中にすれば良かったかなあ」
「別にいいんじゃね?クラスがどこでも選ぶのは和麻だ」
「良い事言ってる風だけど、兄ちゃんだって普通に受けたらSSだったのに」
「いいんだよ。俺は最初から選んでるんだから」
「もう、ずるいよ」

そう。実はこっそりと入試テストで手を抜いていた瑛麻だ。
最初から飛ばし過ぎたら後が面倒だし。を建前にやる気のなかったテストだから当然の結果だ。

昔から勉強は嫌いではなく、むしろ好き。知識を増やす事が好きなのだ。
だから、瑛麻の脳みそはテスト勉強ではなくいろいろな事に関して枠を超えた良さを持っている。
和麻もそれは同じで、兄弟揃って頭脳明晰と言う訳だがそれを表に出したくないのが瑛麻で、そのまま素で出すのが和麻だ。
ちなみに、運動神経も良い。こっちは瑛麻の方が全面に出していて、和麻はやや控えめにしている。兄弟なりの役割があるのだ。

「んで、寮はどっちになるんだ?一緒に休憩しようぜ」

にかっと笑って和麻を見上げれば嬉しそうに微笑まれて、見えない尻尾がまた見えた。
デカイ図体でも可愛い弟だ。



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