星のおくりもの. 14



「一応は確認しておくが害がないならば良いだろう。珊瑚は何を願ったんだ?」

 

朝食はあらかた食べ終えて食後のデザートになった。

ゼリー等の冷たいデザートは船の上では作れないからと、海で冷やした果物と砂糖漬けの花びらだ。

甘い物があまり好きではない翔雅は自分の皿を翔愛の方に置く。

 

「私は新しいアクセサリーが欲しいなってお願いしたんです。叶いませんでしたが。やっぱり物欲は駄目なんですね」

 

珊瑚も花びらを食べながら残念そうに肩を落として笑う。

 

「それは星に願うのではなく恋人に願うものだから叶わないんだろう」

「やっぱりですよねー。良いんです、後で兄さんにお強請りしますから」

「倫斗は何を願ったんだろうな」

 

誰もがたわいもない願いをする訳ではない。それは重々承知しているが、こうなると気になるもので翔愛もぐるりと甲板を見渡して思う。

願いの叶った人、叶わない人、誰もが幸せになれば良いなと。そう思ったのだが。

 

「ざっと聞き込みをしてみた所ですが、片思いの相手にピンクのリボンがついてしまったり、不倫中の夫婦がそれぞれの浮気相手に目印がついてしまったり、混乱している人達はこの辺の願いですね。後は翔雅様達みたいに赤い糸の恋人同士だったり・・・鎖のカップルもいましたけど。あ、兄さんの願い事は腕の良い文官が30人欲しい、だそうですよ」

 

「言葉もないな。それと倫斗に言っておけ。その願いは俺に言うべきものだろうと」

 

さらりと笑う珊瑚に翔雅も翔愛も微妙な表情になってしまった。

願いと言ってもいろいろあるものだ。

珊瑚によれば叶って気まずい者達は船室に隠れていたり影で揉めてみたり船から出たりしているそうで、そもそも翔雅や翔愛の様に目に見える形で叶った者の方が少ないとの事だ。

 

「全く。思わぬ騒動になってしまったが今更騒いでもリュティカを招き入れ流星群と重なった時点で仕方のない事だろうしな。まあ俺たちはのんびり過ごす事にするさ。珊瑚、ありがとう」

「いえいえどういたしまして。あ、翔雅様でも良いんですよ新しいアクセサリー」

「そこまで願うならさっさと自分で買いに行ってこい」

「プレゼントされるから良いんじゃありませんか!仕方がないので兄さんにでもお強請りしてきます。では」

 

デザートを食べ終えた珊瑚が笑いながら席を立って宴の輪に加わりに行った。

残るのは翔雅と翔愛だけで自然と視線を合わせて2人でふわりと笑む。

 

「願い事、叶いました。星の願いは叶うのですね」

「そうだな。こんな形で叶うとは思っていなかった。案外嬉しいものだな」

 

赤い糸の結ばれた手を少し持ち上げてじっくりと眺めるのも2人同時。

形のない願いの目に見える形。翔雅が少し糸を引っ張れば翔愛の手が動いて、やはり繋がっているのだと思えばくすぐったくも嬉しい気持になる。

 

「・・・あのー、お楽しみの所、大変申し訳ないんですが」

 

賑やかな甲板でそんな風に2人で遊びつつ食後の茶を飲んでいたらふらりと子由が来た。

どことなく青い顔で覇気もなく、賑やかな甲板には似合わない雰囲気だ。

そんな子由を見上げて翔雅が眉間に皺を寄せる。

 

「何だ子由。不倫の願いでも叶ったのか?」

 

この騒ぎで顔色の悪いのは叶ってはいけない願いを持つ者だ。

まさか子由がそうなのかと思えば珍しく睨まれた。

 

「何て事を言うんです。私の願いは妻子の幸福とそろそろ次の子が欲しいなあって。ではなくて、その、叶ってはいけない願いが叶ってしまった様なんですよ」

「は?」

 

叶ってはいけない願い。その言葉に翔雅も、翔愛も子由を見上げる。

青い顔の子由は深々と溜め息を落として二人の前に椅子を持ってきて座るとがっくりと肩を落とした。

 

「言いにくいのですがね、貴族街で前々から良い噂のない方々が原因不明の体調不良で倒れられたとの事です。全員が流星群を見ている時間帯で、大騒ぎになっているそうですよ」



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