花咲く海で...13





そうして、日々をのんびりと過ごしながらあっと言う間に1週間が経った。

毎日が楽しくて珍しくて、翔愛が休まる時はない。いや、休暇なのだから毎日が休みなのだけれども、日々精力的に動き回って少しだけ逞しくなった気もする。

けれど、日中は太陽の光が強くて長い間外には出られない。
昼の間は主に宮殿内で過ごして、朝夕に出かける。そんな生活も慣れればとても快適で、花の香りが満ちあふれるこの地は楽しい事ばかりだ。

今も星南に貰った果物を抱えて日陰を散歩している。
宮殿の庭には木陰が多く、日中でも歩いて大丈夫。長い髪を潮風にさらしながら裸足で歩けば気持ちよい。
果物を一口、二口囓りながらちょろちょろと散歩していれば、子由と葉多が中庭で薪を作っている。それを見学して、そのままぐるりと宮殿を回れば裏口で星南と佐一に出会う。少しお喋りをして新しい果物を貰って、また歩く。

そうして、辿り着いたのは出発地点の王の部屋。窓は開けっ放しで、小さい庭の、木陰に置かれた長椅子に翔雅が寝そべっていた。
仰向けで腹の辺りに本を抱えている。そっと近づいて上から眺めれば、どうやら本を読んでいる間に眠ってしまったのだろう。気持ちよさそうな寝息が聞こえて翔愛の顔に微笑みが浮かんだ。
食べかけの果物を長椅子の脇にあるテーブルに乗せて、眠る翔雅の上にそっと貼り付いた。
至近距離で翔雅の寝顔を眺めて、ゆっくりと唇を近づける。どうしてだか、無防備な翔雅を見ると口付けしたくなる。寝顔の翔雅はとても綺麗で、引き寄せられる。

「なんだ・・・また寝込みを襲われる所だったな」

なのに今日は翔雅が目覚めてしまった。翔愛の気配に気付いたのか、うっすらと森色の瞳を開いた翔雅が微笑んで、翔愛を引き寄せてくれた。

「翔雅さまが気持ちよさそうだったから、です」

見つめられて、ふわりと翔愛の頬が染まる。けれど視線は外さずに翔雅と見つめ合って、すぐに閉じられた。
柔らかい感触が唇に触れ、そのまま翔雅の舌が翔愛の唇を舐める。誘われて口内を探られて、舌を挟まれて絡められれば、翔雅の手が翔愛の背中に回った。
最近は口付けだけで終わらない。翔雅の大きな手が翔愛の身体に触れ、それは背中だったり太ももだったり、いろいろな所に触れられて、身体が熱くなる。
音を立てて離れた唇から吐く息までもが熱を持っている気がして、口付けも違う場所にされる。
唇だけじゃなく、首にも、胸元にも翔雅の唇が降りてくる。
不思議な事に、くすぐったかっただけの口付けは次第に熱を帯び、身体が震える様になった。
今もそうだ。耳元に、首筋に、鎖骨の辺りに、次々に翔雅の唇が落とされて、大きな手は翔愛の身体を優しく這う。

「・・・あつい、です」

はぁ、と吐く息も、身体もあつい。
呟けば翔愛の身体を支えたまま翔雅が起き上がった。翔雅の膝の上に乗る形になって、閉じていた瞳を開けば翔雅が笑う。

「俺もだ。翔愛、触れても良いか?」

今も沢山触れているのに何を言うんだろう。首を傾げたけれど、翔雅に触れられるのは好きだ。
頬を染めたまま頷けば、するりと翔雅の手が服の下に入った。
直接触ると言う事だったのか。少し驚いたけれど翔愛には何も分からない。
翔雅の肩に手を置いて、口付けしてほしくて唇を寄せる。すると翔雅から口付けてくれて、翔愛の肌を直接触る手が動く。
服の上から触られるのと、直接触られるのとでは感触が全然違う。暑さで少し汗ばんだ身体に吸い付く手。その動きに翻弄される。口付けは深くなり、舌を絡めて何度も口付けられる。

「ぁ、ぅ・・んっ」

翔雅の手が翔愛の胸にある小さな飾りを摘んだ。
痛みよりも妙な感触が翔愛を襲う。身体が勝手に跳ねて、変な声が出た。

「怖くはないか?」

唇を離した翔雅が問う。怖くはない。ただ、

「へんな、感じがします」

そう。何かへん。
身体が熱くてじわじわする。特に身体の中心がへんだ。落ち着かなくて、むずむずする。

「そうか。確かに、変な気持ちかもしれないな」

笑いながら翔雅の手がまた落ちる。翔愛の服は首からすとんと落ちる一枚の服だ。丈が長く足首まである服だから翔雅の手が入ればたくし上げられる。
白い足のほとんどが日の下に晒されて、翔雅の膝の上でゆらゆら揺れる。
不思議だ。翔雅の手にいつも触れられているのに、全く違う感じがする。
触れられる度、身体がじわりと熱くなって、溜まる熱は何故か中心に集まって。

「・・・ぁ、ふ、ん・・・」

どうしてこんな声が出るんだろう。
そう思う間も無く翔雅の手が翔愛の中心に触れられた。けれど、そこは他人が触れる場所なのだろうか。場所が場所だけに汚いとは思う。でも、触れられて、気持ちよい。

「あ、あ・・・」

身体が震える。大きな手はすっぽりと翔愛を包み込んでしまって、やわやわと触られている。
それは片手だけで十分で、空いた片手は翔愛の顎を掬った。視線を上げれば翔雅の瞳が真っ直ぐに翔愛を見つめてきた。森の瞳はその色を濃くして、深い深い色になっている。

「翔愛、声を出した方が楽だ」
「んっ、あっ・・・しゅうが、さま」

自然と手が伸びて翔雅の首に抱き付いた。助けを求めるのではなく、ただ翔雅に抱き付きたくて伸びた手に力が入る。
翔雅も空いた手で翔愛を抱きしめてくれた。そのまま口付けて、熱の溜まった身体がもう熱を溜められなくなった頃、翔雅の手によって翔愛の意識は真っ白になった。

何も考えられない。
吐く息は荒くて少し苦しい。はぁはぁと息をしていれば翔雅に抱き上げられて浴室に連れらていく。

「いきなりですまなかった。大丈夫か?」
「だいじょうぶ、だと思います・・・」

翔愛には良く分かっていない。あの行為が何なのか。でもとても近くに翔雅がいたのは分かる。
今も翔雅がとても近いと思う。腕に力が入らなくて翔雅に抱き付けないけれど、距離は近い。

「そうか。良かった」

ほっと翔雅が息を吐く。安心した様子に首を傾げて、問う前に脱衣所の椅子に降ろされた。
そのまま服を脱がされる。簡単な服だから脱ぐのも早い。翔愛が先に裸になってぼうっとしていれば翔雅も服を脱いだ。

「お風呂ですか?」
「ああ。少し汚れたからな」

抱えられて浴室へ入れば日の光が浴室を照らして眩しい。そう言えば昼の間にお風呂なんて初めてかも知れない。
普通は赤く染まる夕暮れ頃に入るものだから、こんな風に白い光に溢れる浴室は珍しくて、何だか見慣れた浴槽までもが白く輝いている様に思う。

「汚れたのは僕ですよね。何だか変な感じです」

そう。汚れたのは翔愛だ。
あの真っ白になった意識の後、身体の熱が引いて気付いた汚れだ。粗相をした汚れでないのは分かるけれど、分からない。
不思議なまま湯でざっと汚れを流してもらった。そうして、二人で浴槽に沈んでから翔雅に教えてもらった。あの不思議な感覚と気持ちと。いろいろと教えてもらって、けれど、分かった様で分からない事ばかりだ。

「不思議です・・・」
「まあ、ゆっくり覚えれば良い。でもな、これは他に奴に聞く事では無いから、分からない事があったら俺に聞けよ」
「はい。分かりました」

分かる事だけに頷いてふと気付く。そう言えば翔雅の瞳はまだ深い深い森の色のまま。いつもは翔愛を抱き上げて浴槽に入るけど、今は少し距離がある。
どうしてだろう。ちゃぷ、と音を立てて翔雅に近づけば何故か翔雅の視線が反らされた。

「翔雅さま?」

抱き寄せてくれない。翔愛の大きな瞳がじいっと翔雅を見つめる。
なんでだろう?瞳が語る疑問に翔雅は小さく溜息を吐いて、翔愛を抱き寄せてくれた。

「・・・まあ、俺も同じだ」

言いずらそうに視線を反らしたまま呟く翔雅に翔愛も気付いた。さっきの翔愛と同じ、翔雅の中心もいつも見る形ではない。器官としては一緒だから、きっと翔愛と同じ状態になっているのだろうと思う。

「見るな気にするな」
「でも・・・」

翔愛は翔雅に触れられて熱が収まった。けれど翔雅はまだ熱の中にいるのだろうか。
だったら、今度は翔愛が翔雅の熱を冷ましたい。

「触っても、良いですか?」

視線を反らしたままの翔雅をじっと見つめれば何故か呻き声で返された。

「俺は押されているのだろうか・・・」

小さな小さな声だったけれど、浴室は音が反響しやすいのだ。はっきりと聞き取れた言葉に、けれど翔愛は首を傾げる。

「仕方がない。翔愛、こっちへ」

何か吹っ切れた様な翔雅の手が翔愛と抱き上げて、また膝の上に載せられた。
苦笑した翔雅に軽く口付けられる。

「触って良いぞ」

それは諦めを含んだ声だったけれど、反対されなかったからそっと手を伸ばして触れる。
熱い。翔愛も熱かったけれど翔雅も熱いのだろうか。翔愛とは違い大きなそれは両手じゃないと包めない。そろそろと触る翔愛に翔雅の身体が震えた。

「くすぐったいな」

笑って、翔愛の手の上から翔雅の手が被さった。そのまま動かされる。ゆっくりと、次第にはやく。翔雅の手が翔愛の手も一緒に動かして、どうしてだか、また翔愛の身体にも熱がじわりと沸く。

「翔愛・・・」

掠れた声にどきりとする。胸が鳴って気付けば口付けしていた。
何度か口付けて、翔雅の唇が翔愛の首筋に落ちる。何時の間にか翔雅の手は片手になって、もう片方の手は翔愛に触れていた。また熱が溜まる。引いたばかりなのに、すぐだ。

「は、んっ・・・あ、あぅ・・・んっ」

続けて二度。身体が熱でとけてしまいそう。
両手は翔雅の手に押さえられて不安定で、少しだけ怖い。ぎゅと閉じた瞳に涙が浮かんだ。けれど、涙が零れるより早く、翔雅の手ががっしりと翔愛を抱き寄せてくれて安心する。
そのまま翔雅の手は翔愛を巻き込みながら熱を煽り身体を焦がし、また真っ白になった。




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