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星降る庭で・番外編/城下町にて...07
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| 思わぬ収穫があった大市を思う存分堪能できた。 魚屋で足を止めた後、後日城に魚を配達してもらう事になって、また街を歩いた。 途中で弥栄は帰っていったけれど、また近いうちに会いましょうねと言ってくれたので翔愛もそのつもりで頷いた。 翔雅もまた街に一緒に来てくれると約束してくれて、嬉しかった。 今日は嬉しい事ばかりだ。 翔雅と手を繋ぎながら夕暮れに差し掛かった街を後にして、その途中で海に寄った。 小さな島国である羽胤はすぐ浜辺に出る事が出来る。 さくさくとサンダルを脱いで歩くのはいつか訪れた砂浜と同じ感触で、あの朝日を思い出す。 「夕暮れの海も綺麗だ。ほら、色が美しいだろう。これから夜になる色もとても綺麗なんだ」 さくさくと歩きながら足の先だけを海につけて立ち止まる。 少し眩しいけれど、とても綺麗だ。 「はい。きれいです」 じっと夕暮れを眺めながら海の風を受けて翔愛は微笑む。 海は綺麗だけれども、見上げる翔雅も綺麗だと思う。金色の髪が輝いて整った顔立ちを照らす夕日が翔雅をとても美しく見せている様に思うのだ。 夕日を眺めて翔雅を眺めて。何だかとても幸せで、握った翔雅の手を握り直せば同じ強さで握り返してくれた。 「今日はたくさん歩いたな。疲れたか?」 「いいえ。大丈夫です」 本当は少し足が痛いけれど、あんまりにも幸せが沢山だから気にならない。 はにかんで翔雅を見上げれば鼻の先に優しい口付けを落とされた。 くすぐったくて笑えば翔雅も笑って、翔愛を促して砂浜に腰を下ろした。自然と翔雅に寄り添う形で座ろうとしたら無言で伸びてきた翔雅の手がひょいと翔愛を翔雅の膝の上に乗せてしまう。 「翔雅さま?」 近くで見詰め合う距離で首を傾げれば翔雅が微笑みながら顔を近づけてくる。 無理強いするものは何も無い。けれどそっと瞳を閉じた翔雅に翔愛も瞳を閉じて唇に翔雅の温もり受けとめた。 優しい、優しい口付け。それを何度か繰り返して少しだけ深い口付けもして、顔を離せば抱きしめられた。 そのまま、しばらく無言で翔雅の腕の中に居た。翔雅の腕の中は温かくて優しい感じ。すん、と鼻を鳴らせば翔雅の匂いがしてとても安心できる。ぴたりと頬を翔雅の胸につけて、まるで眠るときの様だと思いながら静かに海の音と翔雅の鼓動の音を聞いていれば翔雅の手がそっと翔愛の頬に添えられた。 「なかなか共に居る時間が少なくてすまないな。もっと外に連れ出したりしたいんだが」 確かに翔雅は忙しい。けれど、朝も昼も晩も、少ない時間だけれども必ず翔愛の側に居てくれるし、共に眠ってくれる。 ずっと、ずっと側にいてくれている。 「翔雅さまはずっと、そばにいてくれます」 それだけで嬉しいのだと頬にある翔雅の手に手を重ねれば翔雅が苦笑した。 「俺はもっと翔愛と共に外に出たいし、遊びにも行きたいと思っている」 「もっと・・・ですか?」 「ああ。もっと、だ」 そうしてにやりと笑む翔雅に心の中で首を傾げるけれど、確かにもっと翔雅と一緒に居られれば嬉しい。 「僕も、いっしょにいたいです」 頬を翔雅の手に乗せて微笑めば翔雅も嬉しそうに頷いてくれた。 もっと、翔雅と街に出られるのだろうか。こうやって、海に来れるのだろうか。 そう考えれば確かに嬉しいことだ。別に城の外に出たいと言う訳ではなくて、ただ単純に、翔雅ともっと一緒に居たいと言う事なのだけれども、考えれば考えるほどに、嬉しい事だ。 「そうだろう。これからはもっと外に出るぞ」 それはもっと遊びに行きたいと言う言葉だったのだが、あいにく翔愛には通じきってはなく、ただ翔雅と共に居られる時間が増えて嬉しいと思うだけ。けれど翔愛は嬉しそうに微笑んでこくりと頷く。その仕草が翔雅から見れば酷く愛おしい。 「また、近いうちに街に出よう。海にも行こう。そうだ、船を出すのも良いな。小船だが一日船で過ごすのも良いかもしれん」 「ふね、ですか?」 「ああ。大きな船じゃない。小さな船でその辺を泳ぐんだ。魚も捕れるし貝も捕れる。そのまま海で泳いでも良いし、のんびり昼ねしても良い」 「何だか、楽しそうです」 「ああ。楽しいぞ」 こうやって、翔雅は翔愛を共に居る事を沢山考えてくれている。 何も出来ない翔愛はこんな時少し申し訳ないと思ってしまうけれど、翔愛に出来る事は何も無くて、ただただ申し訳ない。 今も少し瞳を伏せてしゅんと気を落とす翔愛に気付いたのだろう。翔雅が翔愛の頬に添えた手をそっと持ち上げて小さな額に音を立てて口付けしてくれる。 「これから知れば良い。何もかも、ゆっくりと覚えていけば良いんだ。だから、今はただ俺と共に歩いてくれるか?」 「翔雅さま・・・」 嬉しい。そう言う風に言ってくれる翔雅の気持ちがとても嬉しい。 何も知らない翔愛を責めるのでは無く、一緒に居る事を、共に歩む事を考えてくれる翔雅の気遣いがとても嬉しい。 どうしてこんなに優しいんだろう。そう思う心も確かにあるけれど、それよりも翔雅の言葉がただ嬉しくて見上げた瞳にうっすらと涙が浮かんでしまう。 「さ、そろそろ帰らないと煩いのが居るからな」 涙の浮かんだ翔愛を優しい瞳で見つめて、翔雅は翔愛を抱えたまま立ち上がる。 軽い荷物の様に、また翔雅の腕に乗る形になってしまった。慌てて翔雅の首に手を回せばしっかりと抱えられる。 もう夕暮れが過ぎて夜になりそうな時間。海も暗く黒くなってきて、近くに居ると飲み込まれてしまいそうだ。 ざあざあと音を立てる海を背中に翔愛を抱えたままさくさくと歩き出した翔雅にぎゅっと掴まった。 「ありがとうございます。とても、嬉しいです」 これが今の翔愛には精一杯のお礼だ。 抱き付いて、翔雅の匂いを嗅ぎながら頬を染める。もう暗くて見れないけれど翔雅が嬉しそうに笑ったのはちゃんと見えて、それも嬉しい。 「俺もだ。またしばらく忙しいかもしれんが、暇を作る。そうしたら外に出よう。一緒にな」 「はいっ」 お礼を言ったのにまたすぐ嬉しい事を言ってくれる。 ぎゅうと抱き付きながら力いっぱい返事すれば翔雅の笑い声がもう暗くなった辺りに高らかと響き渡った。 |
お待たせしちゃってごめんなさい(汗)お付き合い下さってありがとうございましたv 翔雅と翔愛のまったりデートでした〜。次は何にしようかなぁ・・・うきうき。 back... end |