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星降る庭で・番外編/城下町にて...01
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| 羽胤国の気候は常夏寄りの常春。要するに活動しやすい気候が一年を通して続く。 一年の大半が快晴で、雨期が年に二度。作物が育ちやすく何より果物が育ちやすい。 そして、一年中花が咲く見方によっては楽園とも言える国だ。 そんな羽胤国だから服装も薄手の物が多い。 王の衣装もざっくりとした衣装であり、一般の人々に至っては腰布だけで一年を過ごしたり、少々暑さが続けば一ヶ月程水着のままで、なんて事もある。 だからなのだろう。翔愛の衣装はどれもこれもが酷く薄い布で、とても繊細な細工が施されているけれど風通しが良くて着心地がよいものばかりだ。 肌の上に直接純白の、見かけの割には案外しっかりとしている寝間着の様な服を頭から被ってその上にくるくると器用に薄い布を巻いていく。 毎日見ているのにどうしても翔愛には覚えられない不思議な巻き方で、あっと言う間に上半身はきっちりと、下半身はふんわりと裾を揺らす羽胤の服に出来上がる。 大抵が裾の周りに何か飾りが付いていて、時にそれはしゃらしゃらと音を奏でる。少し歩くだけでもとても良い音がして、そんな時は何も無いのに何だか良い気持ちになれる。 今日の服は薄い桃色の衣に金色の刺繍と細工。音の出る布が好きだと皆分かっているらしく、最近では大抵の布が何かしら、音の出る細工のあるものになっている。 「きれい、です」 今日は手首に掛かる布にも飾りがついていて、手を動かせばしゃらりと綺麗な音がする。 訳もなく身体を動かす翔愛に着付け終わった天丸は微笑ましい気持ちで最後の仕上げに少しだけ短くなっている翔愛の髪に銀色の飾りを付けてくれた。 これは婚儀の時に倫斗から贈られたものだ。 細工が美しい上に重くもなく、丁度良いからと髪が有る程度伸びるまでは、と毎日付けられている。飾られる翔愛はもちろん、実は倫斗も案外翔愛を好いている様で、年の離れた可愛い妹の様だと何時だったからぼそりと漏らして実の妹である珊瑚に蹴り飛ばされていた。見事に決まった蹴りに翔雅と天丸が大爆笑したのはまだ新しい記憶だ。 「はい、終了です。今日も綺麗ですよ、翔愛様」 微笑みの裏で倫斗と珊瑚のやりとりを笑う天丸が仕上げを終えれば翔愛がはにかんでぺこりと頭を下げる。 腰まで伸びた真っ直ぐな漆黒の髪に目を見張る美しい顔。 細く白い身体は最近少しずつ成長を見せ健康的で美しい。 「ありがとうございます」 そのままソファに移動して、朝食が並べられるのを見ながら翔雅を待つ。 開けられた窓からは潮の匂いのする風が流れてきて気持ちよい。 翔雅は寝室で着替えた後、続きの書斎で急ぎの書類を幾つか処理してから来て、朝だからと王の衣は纏わずに白い衣装のままでどかりと翔愛の隣に腰掛ける。相変わらず勢いよく座るので隣に居る翔愛が傾いて翔雅にくっついてしまう。そんな二人をほほえましく横目で見ながら天丸は手早く朝食を並べ終えると暖かい茶を入れた器を二人の前に置いた。 「今日は暑くなりそうだな。翔愛、外に出る時には必ず椛を呼んでからにしろ」 「はい。椛さまですね。翔雅さまは今日は忙しいのですか?」 「午前中は出かける。天丸も一緒だ。午後からは少し空くから・・・そうだな、出かけるか?」 「はい!」 「今日は城下町で大市がありますから賑やかですよ」 「そうか。じゃあ準備を頼む。お前も来るか?」 「遠慮します。折角ですから楽しいデートをどうぞ」 朝食を口に運びながら翔愛は翔雅と天丸を見上げて微かに首を傾げた。 分からない言葉が幾つか。 「おおいち・・・でえと・・・?」 小皿に盛られた食料をそのままに考え込めば翔雅が苦笑して翔愛の小皿に果物を足してくれる。 「大市と言うのは城下町の大通りで行われる市場の事ですよ。いろいろな物が売っていますから買うも良し、見るのも良し。楽しいですよ」 こう言う時、何時も説明してくれるのは天丸だが、もう一つの言葉が分からないとじいっと天丸を見ればとてもにこやかな顔で天丸の指先が翔愛の小皿から余分な肉を取ってくれる。 天丸は何時も説明だけじゃなく、翔愛の事をいろいろ気遣ってくれる。特に食事については以前食べ過ぎで倒れてから翔愛が多いなぁと思うと勝手に翔愛のご飯を減らしてくれる。 でも、やっぱり天丸の食べる量は翔雅よりもだいぶ多い。今日も大皿に沢山のご飯が乗っていて見ているだけでお腹がいっぱいになりそうだ。 「デートとは、翔雅様と一緒に出かける事です。ちゃんと手を繋いで、離れちゃ駄目ですよ?」 「翔雅さまと、いっしょ・・・」 ほわん、と翔愛の頬が薄く色づいた。 思わず翔雅を見上げれば苦笑した翔雅が何も言わずに翔愛の頭を撫でてくれた。 「天丸・・・今日の仕事は全部お前にやる。翔愛、朝食の後直ぐに出かけるぞ」 けれど少し不機嫌な声。 どうしたんだろうと翔雅を見ればどうやら天丸を睨んでいる様で、でも天丸は笑顔のままだ。 「翔雅さま?天丸さま?」 何だか二人の間に流れる空気が変。 困って膝の上にあった小皿をテーブルの上に置いておろおろする翔愛に二人は一瞬視線の火花を散らして、直ぐに元通りになってしまった。 それでも食べる早さが全く変わらないのが、すごいと思う。さくさくと優雅に沢山食べるのが翔雅で、さくさくと素早く綺麗に食べるのが天丸で。ちまちまと少ししか食べられない翔愛とは雲泥の差だ。 頑張れば翔愛も二人の様に沢山食べて大きくなれるのだろうか。そんな事を思いつつ無言になってしまった二人を見ながらちまちまと一生懸命食べていたら、翔雅がくすりと笑んで小さな、翔雅の分のデザートを翔愛の前に置いてくれた。 |
番外編でらぶらぶデート編ですー。のんびり続きます。 next |