星降る庭で...09



「さて・・・どうしてやろうか」

寝台の上に乗り上がった翔雅から小さな声がこぼれる。
一人で寝るには広すぎる寝台。その上に寝そべる翔愛の姿を眺めながら眉間に皺を寄せる。
小さく華奢な身体。腰まで伸びた長い金色の髪。しゃらしゃらと音を立てる金銀のアクセサリーに華美な衣装。輿入れだと気合を入れたのだろう事は直ぐに分かるが、それが翔雅の苛立ちを余計に煽る。
なんだかんだ言っても既に翔愛は正式に羽胤に迎え入れられた王の后になる人間だ。
どう抗っても書類上の契約がなされた今ではこの忌々しい者と婚姻を結ばねばならないのだろう。だったらこちらの好きにするまでだ。
手を伸ばして意識を失っている翔愛の服を剥ぐ。豪奢な割に脱がしやすく作られているのはそう言う意味なのだろう。そんな所にも嫌気が増すが仕方がない。
この生贄はそう言う意味でこの城に来たのだから。

「・・・細いな。がりがりじゃねぇか」

剥いだ服を乱雑に寝台の上に放れば思ったよりも細い身体が現れる。
白い肌、触れれば吸い付く様にしっとりとはしているが、細すぎる。余計な肉、所か有るべき肉すらなさそうな身体だ。
コレで成人を迎えたのか?思わず首を傾げてしまうが年齢など気にしてもいない。
指先で細い身体をなぞりながら纏っていた衣装の全てを脱がせてしまう。
何の苦労もなく剥ぎ取った衣装はやはりそう言う意味での衣装だったのだろう。
翔愛の目は閉じられたまま。意識を失ったまま全裸にされた細い身体が寝台に浮き上がる。これでは、ホンモノの生け贄の様だ。しかし全ての服を取り去っても首や手足にはまだアクセサリーが残っている。わざわざ外すのも面倒だと翔雅は青白い頬を軽く叩いた。

「起きろ」

苛立ちを乗せた声が寝室に響く。
忌々しい生贄。それを相手にこれから何をしようとしているのか。
今までただの一人もこの部屋にそう言う意味で入れた事は無かったのに、まだ言葉も交わしていない相手に、憎い相手に何をするのか。
冷静な心が馬鹿な事は止めろと言っているのが分かるが、それを聞いても尚抑えきれない苛立ちがある。此処まで似た相手を差し出すと言う事は何を意味するのか。この子供にしか見えない者が何を想い何を考えているのか。全てに蓋をして冷えた表情の翔雅は再度青白い頬を叩く。

「おい、起きろ」

触れた頬は冷えているが柔らかい人の温度がある。しかしそれを翔雅が感じる事は無い。
二度目に頬を叩かれた感触がようやく伝わったのだろう。ぴくりと瞼が震えて翔愛が目を覚ました。現れるのは見間違う事のない深い森の色。その色に自らの色を重ねた翔雅の心は何処までも冷えていく。
たった一つの色が再現されてしまった。たった一つの宝物がこんな何も知らない子供に犯された。もう二度と見る事の無い色をこうも簡単に見せられて翔雅の心はますます冷えて、この生贄をどうやって絞めようか。ただそれだけしか考える事が出来なかった。





back...next