星降る庭で...06



もう昔の話になる。けれど、羽胤国では誰もが知っている悲しい話がある。

現国王、翔雅には結婚を約束した婚約者が居た。
花梨(かりん)と言う名の金色の髪に美しい翡翠色の瞳を持つ、美しい女性だった。
幼い頃から帝王学を学び、尊敬される偉大なる王としての教育の中、息が詰まると必ず花梨を求めた翔雅に、誰もが花梨は后になり、翔雅と共に末永く幸せに、羽胤の国を治めていくのだろうと思っていた。

しかし花梨は翔雅の妻にはならなかった。なれなかった。

翔雅が王になると同時に花梨は病気にかかり、不治の病と診断された病はどんな高名な医者の手も及ばず、翔雅が王になってからたったの一年で、亡くなった。
しかし、後から不治の病は毒による物と判明した翔雅の怒りはすざましく、どの部下も友人も、誰も受け付けなかった。

羽胤国王は血筋では無く、現国王と議会によって定められる。優秀な子供を教育し、その成長を見守りながら誰よりも優れた公正なる王を代々続けさせるには最適の手段だと思われる。
しかし、何時の時代にも影に救う悪党はいる訳で。花梨の件も王の利権に絡んだ陰湿な事件だった。

この件により国内外の、羽胤国に関わる全ての静粛を実行したのは王に成ったばかりの翔雅とその友人達だ。元から羽胤国には王の利権を争う輩が少ない事もあり、それ以上に翔雅の怒りがすざましく、そう時間もかからずに陰湿な企みを持った者の全てを廃し、全てが終わった頃、翔雅の内には誰にも癒せない傷と、孤独が残る。
そうして、誰に何を言われようとも翔雅は結婚と言う言葉に興味を示さなくなった。

結婚したのは花梨だけ。
後にも先にもたった一人の女性だけ。
だから、誰とも結婚はしない。

信用出来ない側室もいらない。もちろん、子供もいらない。
次の王をどうするのだ、例え血筋に拘らなくても王の血筋は残すべきだと、とどんなに大臣や国を治める会議で紛糾しようとも翔雅は決して誰とも夜を共にしようとはしなかった。

何故ならば、翔雅がただ一人愛した女性、花梨の腹の中には生まれる事無く静かに息を引き取った子供が居たからだ。

翔雅は今33歳になる。一生涯、独身を通すつもりだった。
それが愚かな大臣達によって勝手に相手を選ばれ、しかもその相手が愛綺国の名前も聞いたことのない王子だと言う。

これほど可笑しい話があるだろうか。





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