ハルと猫と魔法使い/悪あがき
07


「ちーくーしょー・・・・腰が痛てぇ。背中も痛てぇ。どーしてくれんだ・・・」

力なく項垂れるハルはベッドに沈んで満身創痍だ。
何せ風呂は広い様で狭い。なのに無理な体勢を続けた所為ですっかり身体中がたがただ。
そんなハルの周りには猫達がうろうろしながら、俯せで沈むハルの背中に乗ったり、足で遊んだりしている。

「こら、お前達。ハルは疲れているのだ。どいてやれ」
「誰のせいだと思ってんだよちくしょー」
「主に私の所為だな」

しらっと言い切るガイルはベッドの端に座ってハルの腰をマッサージ中だ。流石に申し訳ないと思っているのか、神妙にちゃんとマッサージしている。

「して、夕食はどうするのだ?」
「食うに決まってんだろ。腹減った。でも歩けねぇ」
「ふむ。それは困ったな」
「だから、誰の所為だっての」
「私の所為だな」

どうにも反省の色がない。むすっとしながらも腰に感じるガイルの手は気持ちよい。足とか背中に感じる猫の感触も気持ちよいが、こんな時、猫を投げたくてうずうずしてしまうのはハルの悪い癖だ。でも今日は俯せで、ガイルはハルの上。投げたくても投げられない。

「くそー、シロ、クロ、チャ。誰でも良いからガイルを噛め!」

しょうがないから力なく手足をばたばたさせれば猫3匹からにゃ、とつれない返事しかない。いい加減猫達も学習した様だ。こんな時、ハルの側に寄れば投げられると。

「ハル、猫は投げるものではないぞ。まあ今日は無理だろうがな」

「嬉しそうに言うな!むかつく!」

むーと膨れるハルにガイルが笑いながらベッドから立ち上がる。そうして、ころん、と軽くハルを転がすと背中と膝裏に手を差し入れる。

「ガイル?」
「動けないのならば運ぶまでだ。ソファならば腰も痛まないだろう」
「あ?」

何を言っているのか。眉間に皺を寄せたと同時にハルの身体がふわりと浮き上がる。言うまでもない、お姫様抱っこだ。
しかも、ハルには分からなかったのに猫達には分かったのか、ハルの腹の上にシロとチャがちゃっかりと乗っている。

「お前なー・・・いや、ガイルよりもこっちか。シロ、チャ、何考えてんだよお前ら」

運ばれながら本当はお姫様抱っこの方に苦情を言いたいのに、腹の上に座っている猫の方が気になってしまう。普通乗らないだろうとは思うのに、乗ってしまうのがハルの飼い猫らしい。

「そんなに重くないから大丈夫だぞ。クロもどうだ?」

なのにガイルは笑いながらハルと猫2匹を運ぶ。足取りはしっかりとしていて、悔しいけれど安心感がある。

「くそー・・・絶対鍛えてやる」

腕も怠くて動かせないハルがぼそぼそと呟けばガイルには聞こえなかったのか、笑いながら首を傾げられて、そのままリビングまで運ばれてしまうハルだった。






何だかんだ言いつつもラブラブなヤツらです。こんな感じで買い物とか外食とかしてればそりゃーラブラブにも見えますって。




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