ハルと猫と魔法使い/悪あがき
01


寝室に光が差し込んでいる。光は強く、朝の柔らかさはない。
きっちり、昼の光だ。だって、カーテンの隙間からなのに嫌に眩しく感じる。

そうだ、世間様はもう昼だ。
なのにどうして寝室なんぞでこんな事になっているんだ!

「こんな時に考え事とは、余裕なのか、ハル?」

低く、しっとりとした甘さを含んだ声がくすりと笑う。やたらめったら甘く感じるのはきっと気のせい。絶対気のせい。

「・・・んっ、ゃ、ふ・・・ガイ、ルっ」

抗議の声も甘いのは、絶対に気のせい。思い込もうとしても、既にハルの意識はまともに何かを考える事は出来ない。

「催促か?」

ぐちゅ、とハルの体内で何かが動いた。まさか俺の身体からこんな音が出るだなんて一生知りたく無かった。
跳ねる身体をそのままにハルは涙で潤みっぱなしの、青紫色の瞳で精一杯ガイルを睨み付ける。が、にっこりと微笑み返された。

今日も良い男だ。ちくしょう。
睨み付ける青紫色の瞳を愛おしげに見下ろしたガイルは、灰色の瞳を細めて、また指先を動かした。

長い銀の髪は結わず、そのまま垂らしているからハルの胸元にあたって、くすぐったい。それもまたムカつく。いや、それよりもハルは色素の薄い肌を晒して全裸だと言うのにガイルはまだ服を着ているから余計に腹が立つ。
けれど、脱いだら脱いだでまた腹が立つのも本音だ。運動している素振りも見せないのに、引き締まって腹筋なんか割れていて、要するに顔も良けりゃ身体も良い、な感じだからだ。
その身体には現代社会には不似合いな傷跡が沢山あるが、そんなものはハルの目に入らない。ただ鍛え抜かれた身体が憎たらしい、と言うだけだ。

「はっ、ん・・・ふ、ぁ」

精一杯心の中で悪態を吐いても既に身体はガイルの思うがまま。悲しいかな、慣らされた身体はガイルが嬉しそうに笑む反応ばっかりしていまい、何よりも、心だって本気で嫌がっていないと言うのが、本当の、本音だ。

「ハル、そろそろ良いか?」
「い、や・・・・だっ」
「ふむ。まだ喋る事が出来るのか」

息が熱くて身体も熱い。はあはあと荒い息で、最後の気力を振り絞って反抗したのに、あっさりとガイルの指がハルの奧を抉ってくれて、もう何も言う事が出来なくなってしまった。

「ハル、ハル・・・愛している」

ガイルの掠れた声が耳元を擽る。ぎしぎしと軋むベッドと、カーテンから差し込む眩しい光。熱が身体を駆け巡ってあつい。あつくてたまらない。なのに、のし掛かってくる身体はでかくて重い。

ちくしょう。こんな身体しやがって。

絶対、絶対、身体を鍛えてやる!
簡単に押し倒されてなんかやるものか!



人は、それを悪あがきとも、言う。








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