ハルと猫と魔法使い/日本情緒...01






流れる空気が何処か湿気と熱を含んだ物に変わる季節。
お気に入りの白のパジャマ姿、馴染んだ仕事場の椅子(背もたれ膝掛け付きの社長椅子だ)の上でううんと大きくのびをしたハルは古い椅子の背に思い切り体重を掛けて大あくびをかました。

急ぎの仕事が入って約一週間。今さっき最終チェックが終わり本社にメールを投げた所だ。
ここ最近仕事以外の全てにずぼらをしていたハルはそれでも髭の生えない顎をさすって一人満足気に笑みを漏らす。

「ふっふっふ、これで5連休、もぎ取ったぜ」

そう、急ぎの仕事と引き替えに連休をもぎ取る約束をしたのだ。

ハルは在宅で仕事をするプログラマー。
別に連休をもぎ取らなくともやり様によってはいくらでも連休をもぎ取れる立場だが、数日ともなると流石に難しい。いくら出社しないとは言え仕事はメールで送られて来てしまうのだから。

だからこそ、ハルは急ぎの仕事と引き替えに連休をもぎ取ったのだ。どうしても、と言う訳では無いけれど連休、と言う看板をひっさげて仕事を無くしたかったから。

「みー」

一人ほくそ笑むハルの下では飼い猫のクロが首を傾げて何時までも笑みの消えない主人を不思議そうに見上げていた。







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