ハルと猫と魔法使い/悪友の三色団子
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瓦屋根。赤茶のレンガ壁。磨りの窓硝子。アーチを描く飾り窓。
黒茶の床板。橙色の照明。大袈裟な飾り灯。
古畳の上に敷かれた絨毯。床板の上に直接乗せる豪奢な寝台。
縁側。檜風呂。木雨戸。倉。重みのある鉄製の玄関扉。
四季の木々が植わる庭。手入れをしない池。その上の小さな橋。
庭の片隅、縁側の前に置かれた大理石のテーブルセット。

ハルの家はとても大層な造りで大時代を感じさせる。
もっとも元々住んでいたのはハルの祖父母夫婦でハル自身の元々の住まいはもっと都会の、マンションだった。
両親の離婚と共にこの洋館に移り住んで早十数年。
良くしてくれた祖父母も随分前に亡くなって1人で住まうには広すぎる空間だが今では可愛い猫3匹と可愛くない同居人が居てなかなかに賑やかになっている。

ハルの仕事は在宅勤務のプログラマーだ。
程々に大きな社に在籍はしているものの滅多に社には出ずひたすら自分ペースの時間配分を好むハルによってものすごく強引に上司と掛け合って在宅勤務にしていたりする。
な物で当然仕事は厳しい。
強引に在宅勤務にした報いだと悪友は笑うがそれでもハルは在宅を望んだ。
前は自分のペースで仕事が出来るから、だったけれど、今はちょっと違う。
一人で仕事を始めて暫くして猫を拾い、その後人も拾った。
別に一人を寂しいとは全く思わないハルだが、それでも愛しい猫に囲まれた生活が快適そのもので、その後に拾った同居人はなかなかに便利で非常に生活が潤った。
なので、今のハルはせっせと大黒柱として働いているのだ。

とは言っても所詮はハル。
大黒柱なんて自覚は一切無い。
ただ好きな仕事だからやっているだけだったりもするのだ。

「うあー。今日もイイ天気だな」

ハルの普段着はパジャマだ。
家から出る時は流石に着替えるが普段仕事をしている時はパジャマが一番しっくりくる。

春の日差しを一心に受けながらお気に入りの白のパジャマに色素の薄い髪を照らして思い切り背伸びする。
目の前のモニタではプログラムをチェックしているので、エラーが出なければ今日の仕事は終わりだ。







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