ハルと猫と魔法使い
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毎回毎回悔しいったらありゃしない。
ハルは不機嫌顔でクロを抱えてベットに突っ伏している。

折角風呂に入ってさっぱり爽やかに眠ろうと思ったのに、とんでもない目に遭わされてしまったのだ、これが不機嫌にならずどうなれと言うのだろう。

しかしこんな感じの不機嫌は今更なのだ。

油断しても、しなくても、ガイルを拾ったその次の日から隙を見ては手を出されまくっているハルだ。いい加減慣れろとガイルに笑われながら、かなーり、良い様にされまくっている。それでもハルはどうしてもガイルを追い出す気になれずに毎日を非情にサバイバルで過ごしているのだ。

風呂で洗われて、さっぱりしてベットに入って、当たり前の様にガイルにひっつかれて猫にもひっつかれて。

「何でンな事すんだよ」

一応苦情を言ってはみるものの。

「私がしたいと思ったからだ。早く後ろを慣らして私を受け入れてくれ」

当然の様に恐ろしい返事を返されてしまい、ハルは抱えていたクロをガイルに向かって放り投げる。

「危ないじゃないか。生き物を粗末に扱うな」
「煩い!」

むかついたので、足下に転がっていたシロも投げるが当然の様に受け止められてしまって悔し紛れにチャも投げれば今度は猫から反撃された。

「ハル、八つ当たりは良くないぞ」
「八つ当たりって分かってるんなら馬鹿な事すんじゃねぇよ!」
「馬鹿な事では無い」

暖簾に腕押し。そんな言葉を思い浮かべてしまったハルはもう手が尽きたとばかりにへたりとベットに突っ伏して毛布を引き上げる。
もちろんガイルも横になってハルを引き寄せてくる。猫も毛布の足下に寄ってくる。
結局、何をしても変わらないのだと、あきらめ半分に目を閉じたハルはせめて夕食のファーストフードで仕返ししてやろうと、固く固く心に誓った。

しかし、目が覚めればあらかたの出来事を忘れてしまうハルは、結局夜の風呂でもベットでも同じ事をされてはガイルに良い様に扱われてしまうのだ。







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