花咲く海で...18





留華で過ごす事がもう日常になる頃。
日々は変わらず穏やかで、とてもゆっくりと過ぎていく。

基本的に宮殿から出る事なく過ごしている翔愛だが、小さな宮殿でも十分広く感じているし、何より忙しい翔雅が側にいる事が嬉しい。
偶には子由や星南と一緒に街に降りる事もあるし、翔雅と散歩や買い物に出かける事もある。

城とは全く違う、何もない穏やかな日々に慣れきった頃、ようやく翔愛は少しだけだけれども、泳げる様になっていた。

練習場所は宮殿の下にある綺麗な海だ。

白と青、そして花に囲まれた海は誰も入る事がないからと、格好の練習場所になった。何度も訪れている海は何時でも穏やかで、澄み切った青い海が翔愛を迎え入れてくれる。

「だいぶ上達したな」

翔雅が海に腰まで浸かりながら微笑んでくれる。嬉しくて微笑み返しながら浮いた身体に力を入れて立ち上がった。翔雅の身長なら海水も腰までだけれども、翔愛だと胸まで海水がきてしまう。両手はしっかりと翔雅に握られていて、泳ぐ練習中だ。

基本的に羽胤国の人々は泳ぐのに服を脱がない。
そもそもが乾きやすい素材で、日差しが強い間は水浸しでも直ぐに乾いてしまうからだ。もちろん翔雅と翔愛もそうで、ただ翔愛の長い髪だけは一つに括っている。

「身体が浮かぶのが不思議です。でも、楽しいです」
「そうか。もうちょっと頑張れば一人で潜れる様になるな」
「潜る・・・海の中を見る事が出来ますか?」
「ああ。多少の慣れは必要だが、出来る様になるぞ」
「楽しみです!」

そのまま抱き寄せられてぴたりと翔雅に貼り付いた。
一人で立てるけれど、海で冷えた身体に翔雅の体温が心地良い。

「冷えてしまったな」
「翔雅さまにくっついているから、暖かいです」
「そりゃそうだ」

翔愛が翔雅を見上げれば翔雅も翔愛を見下ろして、自然と視線が合う。
深い森の瞳はもう見慣れた色になっている。前は少しだけ苦しい色だったけれど、今は違う。深い色は全てを包み込む色。優しく瞳を細める翔雅に翔愛も微笑む。
翔雅の瞳に映る翔愛の顔。ぱちりと瞬けば深い森の中で瞬きする翔愛がいる。まるで鏡の様だ。

「そう真っ直ぐ見つめられると、少し困るな」

あまりにも真っ直ぐ見つめてくる翔愛に翔雅が苦笑した。そうして、大きな手で翔愛の頬を包み込む。自然な動きで口付けされる。最初は唇だけ。それから舌を絡めて水の中で口付けし合う。海の音とは違う水音が洞窟に響いて、身体の奧にほんの少し熱が籠もる。

「翔雅、さま」

はあ、と息を吐けば翔雅の顔が離れる。でも、翔愛はもう少し口付けしていたい。息が苦しくなるけれど、偶には翔愛からだって口付けを乞う。言葉はないけれど、大きな瞳が全てを語る。
じっと見つめられた翔雅が瞳を笑みの形に細めて、もう一度口付けしてくれた。何度か舌を絡めて、長い口付けの途中、翔雅の手が翔愛の服をめくる。まだ海に入ったままだから、衣はふわふわと水で泳いでいる。その内に翔雅の手が入ってくる。どうしてだろう。翔雅の手で触られると身体が熱くなる。もう何度か体験したけれど、不思議だ。

「・・・ふ、ぁ」

口付けの合間に声が漏れる。小さな声だけれども、意外と大きく聞こえていつも驚いてしまう。そんな翔愛に翔雅は少しだけ笑って、さらに手を動かす。

こうして、肌で触れ合う事も増えた。それは夜だったり、こうして海に入る時だったり、庭で寛いでいる時だったり。何となく翔雅に触れたいと思えば不思議と翔雅も同じ事を思う様で、お互いに手を伸ばして触れ合う時が触れた。

身体が熱くなって、何も考えられなくなる不思議な時間。翔愛はただただ翔雅の手で真っ白になってしまうけれど、嫌じゃない。触れられれば触れられるだけ、何故か翔雅がとても近くにいる様な気がするのだ。

だんだんと息が荒くなる中で、翔愛の内に翔雅の指を入れられた。これも、最近される事だ。どうしてこんな事をするのかは分からない。でも、嫌じゃないから止めない。いや、嫌なんて思いもしない。何度か回数を重ねて、これが気持ちの良い事だと翔愛の身体が、心よりも先に覚えてしまっているのだ。だから前と後ろを同時に弄られて翔愛の身体が熱くなる。翔雅の服を掴んで、慣らされた身体が勝手に動く。
「んっ・・・あ、ぅ、ん」

意味のない声が漏れれば翔雅に軽く口づけられる。限界が近い。どうしてだろう。前だけじゃなく、後ろに翔雅の指を入れられて、おかしな気持ちになるなんて。回数を重ねても全く分からない。請えば教えてくれるのだろうか。

「何か考えているな?」

低く甘い翔雅の声が、こんな時は甘さが増す。耳元で囁かれて身体が跳ねた。

「しゅう、が、さま・・・ぁ」

海の中は不安定だ。翔雅に掴まっても心許ない。身体は熱くてもう限界で。けれど浮きそうで怖い。

「そうか、水の中じゃ怖いな」

ふらふらする翔愛に気付いてくれたのか。翔雅が翔愛から一度手を離して、抱き上げてくれた。
ずぶ濡れのまま近くの岩場に運ばれて、翔雅の上に跨ぐ形で座った。翔雅は元から上衣をはだけているけれど、翔愛はきっちりと服を着たままだ。

濡れた服は脱ぎにくい。それでも首の後ろで括っているだけの簡単な衣だから濡れていてもするりと脱げた。そのまま下衣もはだけられて翔雅の手が触れた。身体は熱いままで自然と息まで熱くなっている。はぁ、と息を吐いて翔雅の首に手を伸ばして抱き付いた。






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