夜の街の魔法使い・星を掴む人 70



それからは、やっぱり元通りの日常だ。星の石の髪飾りを気に入ってくれたラジェルは休みをもぎ取ったと言いながらも数日おきに騎士団から要請が来て忙しくしているし、ユティは図書館と宮殿、エクエクに通う日々だ。第一師団は大きな討伐が終わったからしばらくは街の周辺の簡単な討伐しかしないとの事で、半月くらい後に師団長から侘びの手紙と招待状が届いて震えた。もちろん恐怖にだ。
新しく購入した家はラジェルと相談しながら住める様に改装を続けていて、豪華な宿での暮らしもそのままだ。前と違うのは、行動範囲を広げるべく街のあちこちを積極的に歩くくらいで、ラジェルの、ちゃんとした休みが数日取れれば観光に出かける予定だ。最初は街の中をぐるりと巡って、南の草原と北の雪原、それから雪の街にも行きたい。
「夢は膨らむばっかりだけど、今度こそちゃんとした休みなんだろうな。またツィントが泣きながら来たら俺だって申し訳ないぞ、ツィントに」
「今度は大丈夫!ほら、師団長直々のサイン入りの証明書!ツィントだって、あ、ツィントの署名も貰ってくるか」
「止めてやれ、可哀想だろ。じゃあ本当に5日間の休みなんだな」
「うん、だから北の、雪の街に行こうよ。温泉あるんだぜ、温泉。雪原を通ってもいいし、街の観光でもいいし」
「そうだな。じゃあ準備しないとな。そうだなあ、今回は観光がいいかな」
「うん!道具揃えて、あ、買い物行こうぜ。飯も食いたいし酒も飲みたい。工房区に良い店があるから、今の時間だったらプープーヤ様達も誘おうよ」
いつも通り、宿で本を読んでいたユティの所にラジェルが駆け込んできて、でもちゃんとした休みをもらえたらしい。ただ日付を見るにちゃんとした休みは数日後で、今日はサボりだと思われる。また後から部下のツィントが疲れた顔で来るんだろうなあとは思うけど、ラジェルの言い分としてはまだまだ長期休暇の途中らしい。ツィントも気を遣ってくれていて、食事を終える頃にラジェルを捕獲しに来る。何度も繰り返されているやりとりだ。今夜のツィントへの差し入れは何にしようかなと考えつつ嬉しそうなラジェルに抱きしめられるから、ユティから口付ける。軽い口付けを交わして抱きしめあって、食事を取るべく宿から出かけてエクエクへと向かう。今宵も気持ちの良い夜風がユティとラジェルの髪を揺らして、金色の一房には青い飾りが二つ重なって、きらりと光る。

おわり。


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