夜の街の魔法使い・星を掴む人 62



単純に思うのは、外見が整っていて綺麗な人だ。いろいろと良くしてくれるし一緒にいて嫌ではないし、結構落ち着く。ラジェルと言う人がそもそも他人に対して嫌な気持ちを抱かせる様な性質ではないのだろう。そもそも持っている特性が聖なるものだから、ラジェルそのものも綺麗で真っ直ぐな人なんだろうとも思っている。
「・・・何で俺なんだか。いや、嫌じゃないし嬉しいんだけど、なあ」
魔法で用意した風呂でざぱざぱと頭と身体を洗いながら今頃部屋で待ち構えているだろうラジェルを考えてみる。さっきまでは遊ぶ事だったりこの辺りの詳しい情報を調べるには街の図書館になんていろいろ考えていたのに今ではすっかりラジェルの事ばかりだ。南の草原で出会って街で一悶着して、ずっと一緒にいて宮殿に行ったり同じベッドで眠ったり。防寒具でもこもこだったから接触なんてなかったけど、嫌ではない。天秤にユティの気持ちを乗せればあっさりと好きの方に傾くけど、そこに情が絡むかどうかと言われれば、まあ、少しは絡んでいるからこうやって念入りに身体を洗ってる訳で。
「俺も腹を括るか」
ユティが良いのだと言ってくれた。それだけで嬉しいし、受け止めて抱きしめたいくらいにはきっとユティもラジェルを想ってると思う。やたら良い匂いの洗剤には少々気恥ずかしいものがあるけど、雪原を歩きまくって汚れてもいるし念には念を入れて洗って、風呂を出た。暖かい室内は裸でもそれ程寒さは感じない。もちろん室内着に着替えたけれど、部屋に戻ればソファで小さな本らしきものを読んでいたラジェルが嬉しそうに微笑む。
「お風呂、長かったね」
「うっさい」
やたら時間をかけたユティが嬉しい、んだろう。にこにこしながら読んでいた本を閉じて立ち上がったラジェルがベッドの置いてある寝室に向かう。ユティも着いて行って、にこにことラジェルが指差すベッドに腰掛ける。
「そんな構えた顔しなくても、俺だって風呂入りたいし」
「そ、それもそう、だよな」
「ユティ、すっごい緊張してる?」
そりゃあ少しは、いや、かなり緊張もする。恨みがましくイイ笑顔のラジェルを睨めばなぜか座っているユティの足元に膝をついた。
「足出して。沢山歩いたからマッサージしてあげる。あのね、いちゃつきたいって言ったけど、そんなに直ぐにがっつかないから」
あの言い方じゃあ直ぐに、みたいだったと思うのだけれど、意外と我慢強いのだろうか。手を伸ばしてラジェルの髪に触れようとすれば汚れてるからと断られて、大きな手でふくらはぎを揉まれる。気持ち良い。体力はある方だし、いつだって星を求めて歩き回っているから疲れはそれ程感じていないけどマッサージは純粋に気持ち良い。はあ、と気持ち良く息を吐けばラジェルが笑う。
「そのまま転がって良いよ。ユティを骨抜きにしたらお風呂はいるから」
「そのまま、寝るぞ」
「いいよ。疲れてるだろうし、俺だってそこそこ眠いんだから」
魔物の脅威から離れた街の中で、寒さもなくて暖かくて気持ち良い。今直ぐに熟睡できる条件が揃っているし、ラジェルに言われるままベッドに転がるだけで瞼が重い。そうしたらラジェルがマッサージしていた両足を持ち上げてベッドに乗せてくれた。本当に寝てしまうじゃないか。折角腹を括って念入りに洗ったのに。あっと言う間にうつらうつらと意識は眠りの中に落ちていって、マッサージはまだ続いていてとても良い気持ちだ。何とか起きていようと眠たい目を無理やり開けようとしていたらラジェルが動いて耳元に囁かれた。
「だから寝て良いよって言ってるのに。大丈夫、俺が風呂から出たら起こしてあげるから」
「・・・やっぱり、その気なんじゃ、ないか」
「だって、据え膳だろ。だから、それまで眠っていて、ユティ」
目は開かなくて甘い声が吐息を含んで耳元を触ってくすぐったい。うう、と身じろげば変な顔になっていると笑われて、するりと意識が眠りに落ちた。

疲れもあったし安全な室内なのもあってぐっすりと眠った。外を出歩く事が多いユティだから眠れる時には直ぐに熟睡出来るし寝起きも良い。でも、だからと言って何の前触れもなく覆い被されて起こされててしまえば驚いてしまうし思わず足も出る。もちろん軽く押さえられてにこりとした笑みのラジェルがとても近い場所にいた訳だけれども。
「・・・あのなあ、驚くだろ」
「その割には確実に急所を狙った蹴りがきたけど、お見事」
「軽く押さえた癖に」
抑えられた膝は特に抑えられていないから直ぐにベッドの上に戻るけど、上に覆い被さったラジェルはそのままだ。にっこりとした笑みの、綺麗な青い瞳の奥に訝しげなユティが映っている。寝起きでも直ぐに目が覚めるユティだからこの先の行為も予想ができている。ふ、と小さく息を吐いて両手をラジェルの頬に伸ばして手の平で触れる。暖かい頬はすべすべで気持ち良いなと思えばラジェルがちょっと身じろいでユティの片手を取った。少し身を起こしてじっと捕まえたユティの手を眺める。
「指輪が冷たいよ。ユティ、ずっとアクセサリーつけっぱなしだよな。気にならない?」
「あー、ないと落ち着かない。嫌なら外すけど」
風呂に入る時も寝る時もユティはアクセサリーを身につっぱなしだ。これはもう習性みたいなものだから不自然には思わなかったユティだけれど、ラジェルにとっては不自然らしい。両手の指と手首には結構な数の指輪とブレスレットがあるし、ネックレスと足首にもアンクレットがある。全部取るのは無理だけど、少しくらいならと申し出ればラジェルは首を横に振った。
「ユティらしくて良いよ。それに、ちょっとソソられる」
「・・・は?」
何を言ってるんだこいつは。馬鹿な事を言うやつだとラジェルを見上げればまた顔を寄せられて、耳元に囁かれた。
「だって全裸にアクセサリーだけになるだろ。今から、楽しみ」
「・・・っ」
そうだった。今からそう言う行為をラジェルとする訳で、そうしたら。別に風呂に入る時だって全裸にアクセサリーだけど、状況がまるで違う。ぶわりと顔が熱くなったユティにラジェルは笑みを浮かべたままゆっくりと顔を寄せて、口付けた。唇を触れ合わせて舌を出して舐められるからユティも舌を出して絡めあう。ラジェルとの口付けは何度目かになるけどこうしてゆっくりと味わうのははじめてだ。くちゅくちゅと小さな水音が響いて少し恥ずかしい気持ちもあるけど、やっぱり嫌いじゃない。好きだ。大きく口を開けばラジェルに口内の全てを舌で触れられて刺激される。
「・・・っぁ、ぁ・・・んっ」
気持ち良い。舐められて刺激されて口内だけで感じていればラジェルの笑う気配がしてゆっくりと顔が離れていく。ラジェルの手は既にユティの部屋着を脱がしにかかっていてシャツのボタンは全て外されている。
「ユティ、綺麗だ・・・ねえ、脱がせても?」
「も、脱がせて、る・・・だろ・・・ぁんっ」
口付けだけでじわりと汗が浮かんだ肌にラジェルの手が触れてくる。ボタンの外されたシャツを脱がされて、ズボンもするりと取られた。まだ下着は履いているけど、これも直ぐに脱がさる。ユティも手を伸ばしてラジェルの服を脱がそうとするけど、そもそも部屋着じゃなくてバスローブだった。緩く結んだだけの帯を取れば直ぐに全裸になって、はじめて見る訳ではないけどこう言う時に自ら動いて脱がせた裸体に見惚れてしまう。鍛えられた肌はユティと同じ様にしっとりと汗が浮かんでいてとても綺麗だ。指先で腹の辺りを触れればくすぐったそうに笑みを浮かべる。ああ、そう言えばユティはアクセサリーを身につけたままだけど、ラジェルは違う。いつも髪を飾っている青い宝石もないし、隠し武器も何もない。
「あれはただの飾りだし、こんな時に武器なんかいらないだろ。それに、体術も強いから大丈夫」
それもそうか。ラジェルの腹に触れていた手を取られて指先を舐められる。見せつける様な舐め方に身体の奥がざわりとして、小さく腰が揺れてしまった。綺麗な顔の威力が強い。もうお互いに全裸だし肌も触れ合っている。仰向けに寝転がるユティの上にラジェルが身体を跨ぐ形でいて、舐めていた指を口から離すと覆い被さってきた。今度はユティから両手を伸ばして抱きしめてラジェルの身体に触れていく。ラジェルも触れてくるし唇と舌でユティの身体を味わっていく。

触れられて舐められて、齧られて跡を残されて。じわりと浮かぶ汗がシーツに吸い込まれる頃には吐息に音が混じって小さく甘く鳴いて、寝室の温度を上げていく。偶にラジェルの甘い声が熱を帯びてユティに向けられて行為は進んでいく。
仰向けのまま大きく足を開いたユティは上半身を横に向けて与えられる刺激に身体を震わせる。ラジェルがユティの足の間に身体を滑り込ませてじっくりと後ろを解しているからだ。既に指を入れられて何度も突かれながらユティの感じる所を探っていて、戯れに大きく開いた足を持ち上げて吸い付かれたりもしている。太股の内側にはラジェルのつけた跡が幾つも刻まれているし、それは首筋やら胸元やらにもある。意外と齧るのが好きだったのかと思う余裕はもう消えていえ、今はただ与えられる刺激に身体を震わせるだけだ。
「ぁっ、んっ・・・あ、ゃ、」
「だいぶ、慣れてきた・・・ユティ、痛くはない、ね」
「んんっ、だい、じょ、ぶ・・・」
じっくりと慣らされた身体の内側は痛みも違和感も消えていて、むしろ気持ち良さまで拾っている。ラジェルの指が奥の方を突けば身体は勝手に跳ねるし声も出てしまう。こう言う行為がはじめてではないけれど、経験はかなり少ない。身体の内側を弄られる違和感と気持ち良さにもう上手く考えがまとまらない。ただラジェルもこう言った行為の経験は少ないらしく後ろを解す指も最初はぎこちなくて、ユティの反応を見ながらようやく慣れてきた感じだ。だからじっくりと触れられて解されて、入れられている指の本数が増えても気持ち良さだけを拾って鳴いてしまう。ぐ、と奥を突かれて鳴いて、持ち上げられた足に吸い付かれて震えて、ラジェルはどこまでも丁寧にじりじりとユティを弄っている。
「も、ラジェル、いい、からぁ・・・っ」
「まだ、キツいと思うから、もうちょっと」
「ひっ、ぁ、あ・・・」
ユティを気遣ってくれているのだとは思うけど、本当にそろそろ一思いにとどめを刺してほしい。身体よりもユティの気持ちがぐずぐずになって泣いてしまいそうだ。なのにラジェルは飽きずに後ろを弄ってはユティの反応を見て偶に嬉しそうにするし、たわむれにもう達しそうな前を握ってくる。ユティもラジェルの、男前はどこまでもなのかと感心させられた性器を弄ってやりたいのにシーツを握って刺激に耐える事しかできない。仰向けで上半身だけを横に向けて耐えている不自然な体勢はラジェルの希望だ。どうしてもユティを見ていたいのだと懇願されて、ずっと全てを見られている。
「ふ、ふふ、やっぱり・・・ソソる、綺麗だよ、ユティ」
全裸にアクセサリーをつけた姿がラジェルを喜ばせているらしい。身じろぐ度にネックレスとブレスレットが小さな音を立てて、ラジェルが持ち上げている方の足にはアンクレットがあって足首にも何度か噛み付かれて跡が残っている。甘く囁きながら身体の内を弄られて、また指の本数が増えた、みたいだ。詳しくなんかは分からないけどラジェルが楽しそうに告げてくるから、もう三本も咥えて気持ち良くなっているらしい。自分の身体ではあるけれどもう感覚がおかしくて何も分からない。そのまま根気良く弄られて、鳴いて、息も絶え絶えになった頃にようやく指を抜かれた。直ぐに焼ける様に熱い性器を充てがわれて、声を上げる間もなく入れられる。
「あっ、あ、あ・・・」
「ちゃんと、慣らしたから、直ぐに入った・・・でも、キツい、気持ちい・・・」
何の抵抗もなくラジェルの性器を咥えこんで、違和感は感じても痛みはない。腹の中が苦しくて、けれど腰を掴む手の熱さを感じる。ぽたりと落ちてきたラジェルの汗と笑みを消して眉間に皺を寄せる表情に心までもが鳴く。もうここまでぐずぐずにされて、身体はおかしいし熱いし苦しいし、そんな顔を近くで見せられたら。手を伸ばして抱きしめたい。言葉にはできないけれど、行動が答えた。まだ苦しいけどラジェルに震える両手を伸ばせば少し驚いた顔をして、ぎゅっと、痛いくらいに力を込められて握ってくれた。


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