365日の空とアイツの目次と冒頭部分です。だいたいこんな感じで淡々と続いてます。



365日の空とアイツ・目次


普通の日は・2
体育祭と文化祭・21
休日の空と脚立・51
寒くなってきて・57
冬の空・65
終わりの夜と年末のヒトコマ・74
アイツのこころ・88
雪の降る日・98
桜と新学期と、新入生と・103
空の色・144
流れ星の下で・150
365日の空とアイツ・156





『普通の日は』

ブブブ。枕元で携帯電話のバイブレーションが震える。手を伸ばして止めて、眠たい目で液晶を睨む。
もう四時半か。十月を過ぎた今は朝日が遅くて困る。夜中に起きたみたいだからだ。
「・・・うー・・・ねむ」
小さく呟いた凪冴(なぎさ)は布団から這い出て、動きたくないと訴える身体を何とか前に進めて、ちょっと丈夫で小さい段ボール箱を持ち上げる。軽いけど眠いから重い。
部屋の明かりもつけずに重い箱を抱えて、ベランダじゃない方の窓の下に置く。窓が冷たくて切ない。
滅多に鍵をかけることのない窓は今日もそのままで、冷たい硝子にむっとしながらカラカラと引く。
窓の外はお隣さんの窓だ。同じ高さで同じ大きさで、めっちゃ近い場所にある窓。
近すぎて、平均身長の凪冴が軽くまたげる距離である。日本の建築はどうなってんだと寝ぼけた頭で呆れつつ、箱に乗って窓に座って、カラカラとお隣さんの窓を開ける。もちろん鍵は開けっ放しだ。
朝の、いや、まだ夜が明けてないから夜の空気がだいぶ寒くて嫌でも目が覚めてしまう。なのにお隣さんは静かで、まだ眠ってる。
窓を開けたら寒いらしい、ベッドの上にある大きな布団の塊がもぞって動いた。今日は早く終わりそうだ。
無言のままお隣さんの部屋に入って、でも窓は開けっ放しでベッドに近づく。
布団団子がもぞもぞ動いてるから遠慮なく端を持って、渾身の力でもって・・・重くて無理だった。
「毎日重たいんだよバカ。壱夜(いちや)、起きろ~」
「・・・うー?」
どうやら半分くらいは起きているらしい。布団を剥げたら一番良いけど、凪冴の力じゃむりだから、たぶん頭らしい所を掴んで、ぐらぐら揺らす。
「ほら起きろって。遅れるぞ」
遠慮なく揺らして数十秒。でっかい布団団子から大きな手が生えて、捕まえられた。
それから眠たそうな顔が出てくる。男らしい、きりりとした眉は垂れ下がって情けない感じになっている。
「ねみー・・・凪冴、痛てぇ」
「痛くなんかないだろ。ほら起きる。俺も早く寝たい」
「俺だって寝てぇよ・・・あー・・・」
「唸ってもダメだっての。ほらほら、起きろってば」
布団から生えた頭を両手で掴んで布団みたいに揺さぶればやっと壱夜が起き上がって、くあぁと大きな欠伸をした。
手も大きいけど口も大きい壱夜は全部がでかい。何せ高校一年生なのに身長が一八四センチメートル。どこの巨人だと突っ込みたい。凪冴なんてやっと一七〇センチメートルだと言うのに。
「おーはーよー。目、覚めたか壱夜」
「おー、たぶん・・・で、俺の代わりに潜るのな」
「だって寒いし眠いし」
のそのそとでかい壱夜がベッドから這い出れば暖かそうな布団があるから入るのだ。
暖かい布団にくるまりながら着替える壱夜を見て、縮めと呪っておくのも忘れない。
「うお、寒みぃな。朝練だりー」
「俺もだるいし。毎日大変だな、バスケ部」
「しょうがねえな」
壱夜はバスケ部所属で、一年生なのにエース、らしい。身体の大きさもあるけど、運動神経が良くて良すぎるみたいだ。あと、恰好良いとも言われてる。
確かに悪くはないかな、と思うけど寝癖がついたまま、のそのそと準備をする壱夜はちょっと、まあ、あれだ。最近では専門誌の取材も来る様になったとかで、いろいろと目立つヤツだ。
その辺りの話は興味がないから知らないけど、噂はよく聞く。同じ学校で同じクラスだし。ついでに言うと席は前と後ろだったりする。名字が近いからだ。
「運動部はいつ見ても忙しそうだよな。俺、写真部で良かったー」
「写真部って言うけど、お前ン所ゲームしかしてねぇんじゃねーの?」
「正解。でも一応写真も撮ってる。顧問とか部長とか。俺だって撮ってるし」
「モンスター狩るんだって口癖になってるヤツが言ってもなあ」
朝練に行く生徒はジャージでの登校が認められている。壱夜は朝練の前にジョギングして行くから間違っても制服はダメだ。但し登校は制服でないと怒られるし、授業も体育意外は制服だ。めんどくせぇなあと壱夜はぼやくけど、普通だと思う。運動部だからジャージが皮になっているのかもしれないけど。
「よし、っと。んじゃ行ってくる」
「おー、いってら」
用意を終えた壱夜が部屋を出る前にくしゃりと凪冴の頭を撫でていく。いってきますの合図で、バタバタと部屋を出て行く背中を眺めながら凪冴は目を閉じる。
暖かい布団と壱夜の匂いと二度寝。至福の時間である。
携帯電話には七時にアラームがセットされているし寝起きの良い凪冴だから二度寝も平気。静かな外の世界に壱夜の足音だけが響いて、すう、と眠る。

ブブブ。二度目に携帯電話が震えれば凪冴が準備する時間だ。
夜も明けて、空は快晴。秋晴れってやつだ。
壱夜のベッドから起き上がって、部屋の端にある小さな階段を上がる。おもちゃみたいな階段はそのまま屋根裏部屋に繋がっていて、ちょっとした物置に行ける。
屋根には窓があって、跳ね上げれば綺麗な空がある。
「今日の一枚、っと」
屋根裏部屋に置きっぱなしのデジカメでぱしゃり。父のお下がりのカメラだけど結構気に入っている。持ち運びに不便な大きさだから基本的に置きっぱなしだけど、毎日使っている。
毎朝一枚。
何となくはじめた空の写真は壱夜を起こすのと同じになっている。撮らないと落ち着かなくなっていて、データは週に一度パソコンに落としている。

この窓から撮る朝の空が好きだ。写真は去年から溜まっていて、結構な枚数になっている。だから高校に入学して写真部を選んだのだ。まあ壱夜の言う通り毎日ゲーム三昧だけど、写真だってちゃんと撮っている。
今日も良い空が撮れた。
満足して、カメラはそのまま部屋裏部屋に置いて、自分の部屋に戻って出かける準備だ。


学校は家から徒三十分。住宅街を抜けて駅のある商店街を通り過ぎれば到着だ。
一応進学校に分類される高校は、規模としては大きめで私立の男子校になる。
入学して半年と少し、家から近い場所に第一志望の高校があって喜んだのは二人一緒だ。
凪冴は普通の一般生徒で、壱夜も同じ条件で入学した。
壱夜はスポーツ推薦もあったけど、中学ではテニスとサッカーを掛け持ちしていて、なのにどちらも選ばずにバスケ部に入った。変なヤツだ。
球技全般が好きらしく、高校でも掛け持ちをしようとしたけど中学時代より大会が多くて、やりがいがあるらしく今ではバスケ一筋だ。そう、壱夜はバスケの経験者じゃないのに既にエースになっている。長身と運動神経にプラスして独特の感性と言うか凪冴には理解できない何かがあるらしい。おまけに頭も悪くないのだから、器用だなあと関心するばかりだ。

校舎には全国大会出場の垂れ幕が何本か垂れていて、進学校ではあるけどスポーツに力を入れているのが分かる。まあ高校なんてスポーツに力を入れないでどうする、と言う意見もあるけど。
歩いていれば友人やら顔見知りやらがそこそこ歩いていて、適当に挨拶しながら学校に入る。

壱夜とは同じクラスで前と後ろの席になるけど、基本的に接触はない。
聞かれなければ家が隣同士とも話していないから、学校での二人はごくごく普通のクラスメイトだ。
特に行動を別にする理由はないし、普通に喋るし、偶には一緒に行動する。中学校と違って男子校だからあの耳が痛くなる悲鳴もない。そうか、あの悲鳴を思い出すから無意識で別々になっているのかもしれない。
ともかく、幼なじみで友人だと言いふらすことでもないので、至って普通に過ごしていたらこうなっただけだ。
と言っても出席番号のおかげでグループ実習の時はいつも一緒だ。

今日の体育も一緒のグループで、バスケの試合をすることになった。よりにもよって、だ。
当然ながら周りの視線が痛い。おまけに同じグループで文化部なのは凪冴一人。壱夜をトップに野球、陸上、バレーボールにサッカー。揃いも揃って、でかい。
出席番号順で五人グループ。公平なのに不公平だ。全員削れればいい。
当然ながら一人平凡な凪冴は悪い意味で目立つ。運動神経は良い方だけど、どうやったって巨人共に埋もれて、本当に縮めばいいんだ。
「先生、絶対不公平です得点オマケして下さい。じゃないとグレます」
「言いたい事は分かるんだが、試合はお前らの勝ちだぞ」
「試合に勝っても負けてるんです俺一人だけ!」
「まあ、なあ・・・うん、悪かったよ」
この不公平さに教師も同情してくれるけど、言葉通り試合は圧倒的な点差で勝っている。本職の、それもエースがいるんだから当然だけど、凪冴は一人で負けた気分だ。
クラスメイトにも笑われて、壱夜も笑っている。むかつくけど蹴るのは家に帰ってからだ。
一人唸っていれば集合の合図があって全員でぞろぞろと教師の前に整列する。その少し前、みんなの目がないのを確認した壱夜にぽふっと頭を撫でられた。


そんな感じで授業は進んで放課後。部活動の時間だ。
写真部の部室は校舎内にある文化部のエリアになる。
三棟ある校舎の、一番古い所の一角が文化部エリアだ。
少々古臭いものの活動に支障はないし、運動部と違ってこっちは気軽な活動をしている所が多い。写真部も気軽な部活動の一つだ。
「よっし、勝った!剥ぎ取るぞ~。ふぐりだ!」
「いつ聞いてもイヤなアイテムだよな。万能だけど」
「ふぐりだしな」
もっとも写真、カメラを手に持つよりも携帯ゲーム機を持つ方が多い部活である。
今日も好き勝手に座って、携帯ゲーム機片手にモンスターと戯れている。
写真部でまともに活動するのは部長と顧問くらい。この二人は筋金入りで、フィルムで撮るカメラのマニアだ。
「お前らなあ、部室でふぐり叫ぶなよ。つか何、そのどうしようもないアイテム」
「あ、部長。現像終わったんですか?」
集まった凪冴を含む三人で手に入れたアイテムの名前で笑い合っていたら、呆れ顔の部長が来た。筋金入りの部長は三年生で、手には現像の終わった写真を一枚持っている。
この部室、やる気はないものの現像室があるのだ。今時デジカメが主流だけど、フィルムのカメラもまだ現役で、部長と顧問である教頭先生が心の底から愛している。
今も現像をしていたみたいで、部長から何となくすっぱい匂いが漂ってきている。
「今回もなかなかだぞ。ほれ」
「お~・・・綺麗ですねこれ。いいなこの色」
「凪冴は好きだよな、こーゆーの」
ぴらりと部長が見せてくれた写真は淡い色の空だ。
朝焼けなのか夕焼けなのか分からないけど、不思議な色がとても綺麗で惚れ惚れする。
「空、好きですもん。部長は何でも好きですよね。あ、フィルムが好きなのか」
「そうそう、デジタルがどうも好きじゃなくってな。じゃなくて、俺は人物が好きなの。だから、ちっと運動部の方行ってくるわ。誰か行くか?」
古めかしいカメラを持った部長が三人を見るけど全員で首を横に振る。ゲームがしたいのもあるけど、今いるメンバーは空と夜空全般、そして花が好きで人物は苦手だ。
部長も分かっているから凪冴に綺麗な空の写真を渡して部室から出ていった。
渡してくれたからこの写真は凪冴が貰って良いらしい。
気前の良い部長は部員が好きそうな写真であれば気軽にくれる。
「いいなあ。これ、どこだろ」
うっとりと写真を眺める凪冴に他の二人も椅子ごと寄ってくる。
一人は同級生で花が好きな奴。もう一人は二年生で夜空の、星とか月とかが好きな先輩だから趣味が合わない。だから好き勝手なことを言って、少し経つと興味は写真じゃなくてゲームに戻る。
貰った写真を机の上に置いた凪冴もモンスターの闊歩する世界に戻って戦いの開始だ。

部活が終われば後は家に帰るだけ。
ゲームしていただけの凪冴だけど、部長に貰った写真は有り難く持ち帰って部屋に飾っている。

風呂から上がって眺めていれば、ほんわりと顔が緩む。
あまり真面目に活動してないけど、写真は好きだ。
部活をはじめる様になってからは部長の影響でフィルムもいいかも、なんて思っている。ただ、高いからあまり手は出せないけど。

凪冴のカメラは壱夜の家に置きっぱなしにしているお下がりのデジカメと、アルバイトして買った小さなデジカメの二つだ。機能の少ないシンプルな物が欲しくて、値段もお買い得でお気に入りだ。持ち運びも簡単だからいつも持ち歩いている。デジタルだから気軽に撮れるのも良い点だと思う。
「ポラロイドもいいけどなー、あれこそ高いし」
写真部には今日いなかったメンバーでポラロイドカメラに愛を注ぐ先輩もいる。
人数の少ない写真部だけど、メンバーはなかなかに濃いと思う。
デジカメに保存した写真をパソコンに落としながら、そろそろ宿題でも、と思った所で窓がからからと開いた。壱夜だ。
「凪冴、柔軟の時間だぜ」
「もうそんな時間か。てか壱夜、髪びしょ濡れ」
「そのうち乾く」
「いや乾く前に床が濡れる。こっちこい」
背の高い壱夜は悔しいことに足も長くて、凪冴が使う乗り越える用の箱はいらない。
ひょいと自分の部屋から入って来て、濡れた髪のままで座るからドライヤーを持って後ろに立つ。
部屋着の壱夜はほかほかしていて風呂から直接来たみたいだ。放ってあったタオルでおざなりに壱夜の頭をかき混ぜてからドライヤーで乾かしてやる。
凪冴よりは短いけど、スポーツマンにしては長い髪は少し癖があって乾かさないと翌朝が酷い。分かっているのに濡れっぱなしで平気なのは、朝練の後のシャワーで戻すつもりだからだ。
「はい、しゅーりょー」
「さんきゅ。背中押してくれ」
「あいよ」
髪が乾けば柔軟体操だ。何でも眠る前にしっかり解さないと大変らしい。
背中を押したり腕を持ったり、十数分の柔軟体操が終われば手伝った凪冴もほかほかと暖かくなる。一緒に柔軟体操をした気持ちだ。夏場は暑くなってイヤだけど、冬場は助かる。
壱夜も部活で疲れた身体がやっと休まったと、大きく伸びて持参したスポーツドリンクを飲んで、凪冴にも渡すから一口だけ貰う。運動をしない凪冴にはちょっと甘すぎるから、直ぐに返して自分のお茶を飲む。
壱夜は部屋の隅にあるテーブルを中央に運ぶ。柔軟の後は宿題と予習の時間だ。
二人とも成績は上の中。運動もできて勉強もできる。それが壱夜の評価だけど、どっちも毎日の積み重ねだ。
「数学も英語も苦手だなあ・・・」
「気持ちは分かるぜ。凪冴、ここ分かるか?」
「最初っからかよ。えーっと、こうして、ここに、これ」
「サンキュ。でもな、そこ違うぜ」
「まじで、まじだ。違うの分かるけど、えーっと」
「こっちがこれ。昨日やったぜ」
「おお、さんきゅ~、壱夜」
テーブルを挟んで格闘すること約一時間。宿題と明日の予習を軽く終えればようやく全てが終わって、くつろぎの時間だ。
テレビを付けた壱夜がDVDデッキを操作して、最近気に入っている海外ドラマのレンタルDVDを入れている。
凪冴は携帯ゲーム機と小さなクッションを持って壱夜の前に座る。そうすると壱夜にすっぽりと収まる形になって、凪冴の肩に顎が乗る。ゲーム画面を横目で見ながらドラマも見る。字幕だから話は聞き流して画面だけを見ているけど、結構楽しい。
「これって後どのくらい続くんだ?」
「あーっと、後、三枚だな。そろそろ佳境だけど、シリーズで続いてるぜ」
「長いよなー。あ、この人綺麗」
「性格悪いぜ」
「見た目だけの判断だし、ふぐり、もう一個取りに行くし」
「まだやってんのかそれ。なんでモンスターのふぐりがそんなにグロいんだよ」
「モンスターだからじゃねーの?」
クッションを抱えてゲームを進めながら気が向けばドラマを見て。壱夜も同じくドラマを見ながら偶にゲーム画面を見ては苦笑している。
壱夜の両手は凪冴の腹にまわっていて、この体勢が一番落ち着くらしい。凪冴も落ち着く。
ドラマとゲームと、今日のできごとなんかをぽつりぽつりと話しつつ、先に終わったのはドラマの方だった。続けて見ると英語で頭が痛くなると言う壱夜がテレビ画面をニュースに切り替える。凪冴はゲームを続けているけど、首筋をべろりと壱夜に舐められた。
「・・・明日、学校、まだ、三日もある」
「妙な話し方すんな。しょうがねーだろ、元気なんだし」
「体力バカめ。なんで部活で発散してこねーんだよ」
「部活は部活。これは、これ。一回だけ、な」
「ったくもー。テレビ、もうちょい大きくして」
こうなると壱夜は滅多なことでは引かないし、凪冴も、まあ、いいかなと思うのだからお互い様だ。
ゲーム機の電源を切って、小さな溜息を落として床に置く。壱夜はテレビの音量を少し上げて凪冴を本格的に抱きしめる。
ずっとくっついていたから温度は同じ。大きな手が凪冴の部屋着をめくって肌に触れる。ざわりとした感覚に身を委ねながら、振り返って壱夜を見上げる。
恰好良いなと思うよりも熱を含む目に吸い寄せられて、唇を寄せた。舌を絡めるのは壱夜が先で、食われるんじゃないかと思う強さで吸われて噛まれる。凪冴も両手を動かして壱夜の、既に反応しかかっている性器を取り出す。いつ触っても大きさにイラっとくる。こっちも縮めばいいんだ。
「お前、いっつも俺の息子睨むのな」
「だって敵だし」
「剥ぎ取らねーでくれよ」
壱夜も凪冴の性器を取り出して、触れてくる。大きな手にすっぽり収まるサイズでこっちもイラッとくる。世の中不公平過ぎる。
うー、と、小さく唸る凪冴に壱夜が笑って首筋を舐めてくる。べろりと舐める仕草が肉食獣みたいで、やっぱり食べられそうだ。
凪冴も太い首を軽く舐めて両手はせっせと苛つく性器を弄る。口付けて、性器に触れて、肌を舐めて。
でも、付き合っているとか恋人とかじゃない。
不思議だとは思っている。
こんな関係を何と言えばいいのか分からないけど、壱夜の匂いに落ち着いて、触れる性器に心も身体もわざめく。熱くなる呼吸に先に根を上げたのは凪冴だ。体力の違いが恨めしいけど、はぁはぁと息を吐いて動かしていた手を止めれば抱き寄せられる。ぴったりとくっついて、壱夜の大きい手で二人分の性器をひとまとめに握られてしまう。感触が、敏感な場所に妙な刺激がきてたまらない。
「ひぅ、や、それ、へんっ」
「そ、か?俺、好き。凪冴も、握れよ」
「ふっ、あ・・・も、ちょ、待てよ」
「だぁめ、おら、イくぞ」
一緒に擦られて声が出てしまう。慌てて押さえるのに、どうしていっつも壱夜は平気なんだと憎たらしい。少し声が掠れるくらいで、ナニもでかくて本当に、もう!
「凪冴、声、もっと」
「だ、め、だって、の」
なのに壱夜は凪冴の声を聞きたがる。変なヤツ。これ以上声を大きくしたら下の部屋にいる親に聞こえるじゃないか。
首を横に振れば壱夜が不満そうに睨んでくるけど、知らない。擦られる性器の気持ち良さだけを感じればいいんだ今は。でも、凪冴の手はとっくに止まって、壱夜の肩を掴むだけだから、ちょっとだけ、絶対に言わないけどお礼の意味で唇を寄せて舌を出す。
口付ければ声も抑えられるし一石二鳥だ。もうイいきそうだし、壱夜の手の動きも激しくなってる。
痛いくらいの刺激に口付けたまま、二人揃って小さな悲鳴を上げればほぼ同時に達して、ぐったりと荒い息を出す。
「はっ・・・あー、凪冴、週末挿れさせろよ、足りねぇ」
「ほんっと、元気が有り余ってるよな」
「それが売りだからな」
手を伸ばして近くに置いてある箱からティッシュを数枚抜いて、壱夜のと一緒に拭く。汚れたティッシュは新しいのでくるんでから捨てて、怠い身体で服を直してから今度はウエットティッシュで手を拭いて、壱夜も同じ動作でもそもそと動く。
ヤることをやったし、と言うかヌいたから後は寝るだけ。時間もいい時間だからと壱夜が軽く凪冴に口付けして窓から帰る。
長い足は軽々と窓枠を越えて、やっぱり憎たらしい。




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